魔族2
魔族「く、まさか貴様か?」
俺「さぁね。」
魔族の言いたい事は理解しているが、とりあえず知らないフリをしておく。敢えて伝える必要はないと思うし、それで警戒されると面倒臭いからな。
魔族「フン、戦えば分かるか。そこの連中で遊ぶのも飽きたしな。」
気が早いな。もっとじっくり遊べば良いのに。じゃあさっさと終わらせるか。その瞬間魔族の姿が消えた。正確には凄い速さでこっちに向かって来ただけだが、坊ちゃん達は見えてないみたいだ。気が付けば俺と魔族が一瞬で鍔迫り合いの状態になり驚きの声が上がる。
鍔迫り合いから離れた瞬間、魔族が横に薙ぎ払う。俺はその攻撃を躱し、次はこっちが薙ぎ払う。しかし魔族は俺の真上を跳んで躱す。体操選手の様な技を出しながら着地する。空中でそんなに回転する必要あるか?とは思うが今は考えてる場合じゃないな。
着地とほぼ同時に突きが繰り出される。俺は左に受け流し、その位置から刀を回転させて魔族の剣を上から押さえつける。俺の右肩と奴の左腕がぶつかる様に止まる。
魔族「貴様!人にしてはやるな!やはり貴様だな!ブラッドエッジを倒した奴は!」
俺「今はそんな事、どうでも良いんじゃないか?」
奴がフッと笑う。俺は押さえている奴の剣を弾くとその流れで首を狙うが今度は奴が伏せる。その位置から斬り上げて来るが、俺は何とかスウェーで躱し、体勢を立て直すと突きを繰り出す。だが左に弾かれる。お互い距離を詰め、鍔迫り合いになる。ガリガリ音を立てながら睨み合う。
魔族「く、これ程とは!」
坊ちゃん1「おお!何が何だか分からないがやってしまえ!」
坊ちゃん2「素晴らしいぞ!我が配下として雇ってやるぞ!」
坊ちゃん3「私は専属の護衛にしてやろう!」
適当な事をごちゃごちゃ言っている。どうでも良いから無視しているけど、いい加減静かにしてくれないかなぁ。何か疲れて来た。そろそろ仕掛けよう。
魔族「大した者だ。だがこれで終わりだ!」
俺を押し退け最上段から剣を振り下ろす。そこからはほぼ一瞬だった。その剣を斜めから打ち落とし、その流れで奴の首を斬る。
魔族「が!」
俺はこの前の戦闘で学んだ。首を刎ねた後、全速力でその場から逃げる。返り血が飛んで来るからだ。今回は見事被らずに済んだ。
俺は。
坊ちゃん達「うぎゃ!」
坊ちゃん達が見事返り血で真っ赤に染まる。前の方にいた奴程酷い状態だが、まぁ良いだろう。
教官「ぐっ、皆んな!無事か!どうしたその姿!」
教官が目を覚ましたらしい。いつの間にか戻って来ていた。
俺「魔族の返り血だよ。」
教官「何!あの魔族の?まさかお前達!倒したのか?あの魔族を!」
坊ちゃん1「フッ、フフフ。あ、あの程度なら余裕だ。」
坊ちゃん2「と、当然だ。皆んなと一緒にというのが悔やまれるがな。」
教官「フッ、そうか。もう私の教える事は何も無いな。」
いや、常識とかの面でまだ教える事が山程あるだろうが!とか考えてると団長が来た。
ゲイツ「おい、良いのか?お前の手柄全部持っていかれるぞ。」
俺「ああ、別に良いよ。これであいつらも満足して帰るだろ?」
ゲイツ「逆に箔が付いたってこれからどんどん来る様になるんじゃないか?」
ティム「ああ、あるかも。」
俺「えぇ!じゃあ2人か3人斬らせれば良かったのか?」
ゲイツ「それだと俺達が責任取らされて実際に首が飛んじまうよ。」
俺「はぁ〜、ならどうすれば良かったんだ?」
ティム「それは誰にも分からないだろう。うん。」
この一件の最終的な結果は俺達からすれば失敗、王国側としては成功だった。若い士官達は王都に帰った後、やる気に満ち溢れ今までより明らかに面構えが違う様子だったそうだ。それにより実戦の研修場にこの都市が選ばれる様になった。この国は大丈夫か?不思議でしょうがない。嘆いても始まらないから気を取り直し仕事に向かう。
それから何回か魔族が率いる軍との戦闘があった。その間にも若い士官や見習い騎士の研修という名の見学は続いた。本当に何しに来てんだ!と言いたいが意味が無いから言わない。言ったら捕まるし、いや捕まるだけならまだマシかも知れない。俺の気も知らない魔族は毎回平気で喧嘩を売って来る。
魔族「我は第一師団の3魔将の1人であるアルバート様の右腕であるガース様の命を受けて貴様を倒しに来たラガーだ。」
俺「つまりは下っ端の下っ端ね。」
ラガー「貴様!下っ端とは何だ!我はガース様の次に強いと言われているんだぞ!」
それを下っ端と言わずに何と言う?言い出したら終わらないだろうと思うからこれ以上は言わないけど。まぁ、いきなり強そうなのに出て来られても困るし、こいつくらいなら程々という感じで良いだろう。ラガーは槍を使って攻撃して来た。躱しながら接近しボディブローを入れる。
ラガー「ぐぶ!」
唾液を吐きながら後退する。魔物達も"駄目だ。こりゃ。"と言う感じで2体のコボルトがラガーをそれぞれ左右で支えて連れて行く。
ゲイツ「あいつは何だったんだ?」
俺「さぁ?また今度攻めて来るんじゃないか?」
ゲイツ「ちゃんと仕留めろよ。」
俺「それなら次はあんたに譲るよ。」
ゲイツ「えぇ〜、やだ〜。」
今までで聞いた事の無い声を出す団長。気持ち悪いからやめて欲しい。そんな毎日を繰り返していたがそろそろジンとエレナの運命が動き出す時が迫って来ていた。
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