第18話 ガツンな料理と釣れたもの
私はガツンとしたものを食べたい為、第二城壁と第三城壁の間にある人工の森でスモールボアを狩った。そしてその肉を泉で冷やす間、お昼寝をする事にした。それから1時間ほど経って目が覚めた私は食事の準備に取り掛かる。
まずは泉からスモールボアを引き上げて皮を剥ぎ部位ごとに切り分ける。そして商店街で買った水袋2つに泉の水を入れ、場所を変える為にスモールボアの肉を布袋に押し込み担ぎ上げ歩き始めた。(ここは森の中だから焚き火をして火事になると困るからね)
そして森を出て草原を歩いていると焚き火をした跡がある。私はその場所に荷物を下ろして調理を始める事にした。
食材を入れた布袋からバジル、オレガノ、ローレルのハーブ3種類とニンニク、生姜を取り出してハーブは粉末状に、ニンニクと生姜はすりおろしておく。これらは全てこの森で採集したものだ。これだけのものが割りと簡単に手に入ったのは誰かが意図的に手入れをしているからだろう。(因みに商店街で買ったすり鉢とおろし金で処理したからね)
それから後ろ足2本に塩と粉末ハーブをよく揉み擦り込んでしばらく放置だ。そして前足2本は2口サイズに切ってカバンにあったナイロンの袋に入れ、そこにおろしニンニクと生姜、そして白ワイン少しと醤油を入れてよく揉んでこれもしばらく放置。
塩と白ワインは商店街で買って、醤油はお弁当の時に使おうと150mlのミニペットをカバンに入れていたのでそれを使った。(因みにお弁当は初日の夕食前に食べたよ。お腹空いてたからね)
あと胴体部分が残っているが、内臓を取り出した部分の内臓脂肪を木製スプーンを使ってかき集め木製の深皿にのせておく。それからナイフで何回も突き刺してから塩を揉み込みハーブ粉末とおろしニンニクも揉み込んでこれもまた放置だ。
そして走って森に戻り、落ち枝と手頃な倒木を集めて再び草原に舞い戻る。(ちょっと急がしいんですけど‥‥‥)
それから持ってきた枝と倒木を使って焚き火を2ヶ所準備する。火はカバンに入れてた火付け石を使った。(常備品だからね)
これで下準備は完了だ。塩とハーブをすり込んだ後ろ足はエルフィーさんからもらった長さ60cmほどの鉄棒に刺して焚き火の側であぶり焼き。醤油とモロモロに漬け込んだぶつ切りの前足2本分は鍋に内臓脂肪を入れて火にかけて簡易ラードを作り、そこに小麦粉を付けた肉を放り込み揚げていく。
そして色々すり込んだ胴体はもう1つの焚き火で四方八方から鉄棒をぶっ刺して弱めの火で燻し焼きだ。
これで全ての調理が終わった。色々と足りないものがあったけど、なんとか美味しいと感じるレベルのものは出来たと思う。そして時間は昼を通り越して夕方だ。私は水袋に青の聖女が使う特殊能力『清涼』で中の泉の水を浄化して乾いた喉を潤した。
「ぷはー、めちゃくちゃ旨いなこの水。これでやっとガツンとしたものが食べれるよ」
私はよく焼けている塩とハーブをすり込んだ後ろ足を1本鉄棒から抜いて手に持ち、大きく口を開けて豪快にガブリと食べた。(私は慣れてるから手で持てるけど普通に熱いからね)
「めっちゃ、うんまー!なんじゃこれ!」
そのスモールボアの肉は適度な固さで噛めば噛むほど肉の旨味が溢れ出てくる。そしてまた脂身が途轍もなく旨い。ハーブもいい仕事をしているが、この肉自体のポテンシャルがもの凄いのだ。私は一心不乱に肉に噛みつき小さくない足1本を食べ尽くした。
「もうあれだな。城下町じゃなくてここに住もうかな。これはもう森の動物全種類食べ尽くし生活を始めるしかないのだ!」
私は右手に握る骨だけになった後ろ足を空高く掲げ叫ぶのであった。そしてその時、後ろで人の気配を感じた私は反対方向に飛び、右手の骨を捨てて腰の後ろから投げ捨て用の鉄棒を取り出し身構えた。
「あっ!誰かと思ったら奏お姉ちゃんが美味しそうなもの食べてる!」
私は構えを解き鉄棒を戻す。その気配は私がよく知る人物だ。そう、花売り幼女チッチェ。本日3度目の再会であった。もちろん射程外と大気圏外も居る。
どうやらガツンとした料理で幼女と射程外と大気圏外が釣れたようだ。
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