第8話 3人で仲良くお風呂
ダジール王との謁見前に体を清める為、最上階にあるお風呂場に来た私。悪趣味な更衣室には少し驚いたが、お風呂に入れる喜びはずっとMAXハッピー溢れっぱなしだ。(なに言ってるのか判らないよね)
そして私は悪趣味更衣室の最南端にある、これまた悪趣味な宝石まみれキンキラ両開き横スライドタイプ扉を両手で勢いよく開けた。
「しゃーーーーっ!、ズババンッ!」
そのキンキラ扉はまったく抵抗を感じることなく、私の喜びMAXパワーを全て横移動に注ぎ込み軽快な音を鳴らして滑って行く。
そして両サイドの壁まで滑って豪快な音を鳴らし、血飛沫のように身に纏う宝石を撒き散らして死んだように静かになった。
(お、おうおう、なんて事だい。この扉のレール、よく見ると金ぴかキラキラしてるよ。だからよく滑ったんだね。あと、なんで両端の壁までレールがあるの?おかしいよね?)
私はトボトボと左右の壁に行き、静かになった扉を片手でそろりと押しながら中央の入り口に戻る。足元に散らばる宝石を蹴りながら。
そして私は中央の扉2枚分の間口の入り口から浴室に入った。(間口は両壁まででなく普通なんだね。おちょくってるの?)
「はぁ、いい湯だねぇ」
私はタオルを折り畳み頭の上に乗せ、湯船に浸かって極楽浄土へと登っていた。(ん?浴室はどうなの?って、うん、普通だった)
その浴槽の広さは横長の8畳くらいかな。深さは寝そべるようにと浅い所と肩まで浸かる深いところがある。私は浅い方で肩まで浸かってゆったりしていた。(なんか文句ある?)
「やっぱり日本人はお風呂だね。私は帰国子女だけど心は日本人だから。もう今日はこれで終わりでいいよ。私はもう満足だー」
そんなダラけた私の前に金ぴか扉を開けて1人の女性がやって来た。歳は30代くらいだろうか。長いブロンドの髪を結って纏め、キリリとした細い眉に切れ長の目が印象的だ。
スタイルはスラりとしたタイプだが、出るところはそれなりにある素晴らしき体型だ。柔らかそうな肌だけど、小さなキズがあちこちに見受けられる。
その女性は私の視線を気にする事もなく、洗い場にある椅子に座って体を洗い始めた。そして洗い終わると湯船に入ってくる。その場所は浅いところで私の真向かいだ。
「いい湯だねえ。そう思わないかい?」
その女性は浴槽の縁に両腕を投げ出し足を伸ばして少し組み、私の目を見てそう言った。
「そうてすね。とてもいい湯です。あの悪趣味な更衣室が無ければ最高のお風呂場だと思いました。ダジール女王陛下」
それを聞いた女性は「面白くない」と言った表情を少しだけ見せた。
「なんだ、もうバレたのか。少しは楽しませて欲しかったのだがな。どうして判った?」
「さあ、どうしてでしょうね?それとカリーナさん、そんな所で見てると熱気で汗まみれになりますよ。それとも覗き趣味なんですか?」
私はダジール女王陛下に視線を向けたまま、浴室の天井裏に居るカリーナさんに問い掛けた。それから暫くして浴室の入り口からカリーナさんが体にタオルを巻いて入ってくる。
そして体を洗い湯船に足を入れたカリーナさんはダジール女王陛下の隣に座った。見付かった事が悔しいのか、その顔は少し不機嫌そうに頬を膨らましていた。(可愛らしいな、おい)
「お前、凄いな。このカリーナは隠密部隊の隊長だぞ。今までバレた事など無かったのに何故判った?」
そう私に問い掛けるダジール女王陛下。その切れ長の目からは威圧感が増している。普通の女の子であれば湯船など構わずに平伏していただろう。普通の女の子であればだが。
「ただのカンです。ダジール女王陛下」
私が平然としてそう答えるとダジール女王陛下は威圧するのを止めた。
「チッ!可愛くないヤツだ。だから胸がちっちゃいんだ」
(お、お前、そこでそれ言っちゃう?それとそこの女王陛下の横でチチ揺らして微笑んでるお前だ、お前。乳でかカリーナ。そんなに死にたいのか?)
ダジール女王陛下とカリーナさんは2人して私の苦虫を噛み潰したような顔を見てご満悦だ。
「ふふ、少しだけ楽しめた。それじゃあ謁見を始めようか。ようこそ我が国へ、白の聖女様。心より歓迎致します。そして我が国を救う為とはいえ勝手に召喚した事、許して欲しい」
ダジール女王陛下は真剣な顔でそう言うと、湯船に浸かるのではと思えるくらいに深く頭を下げた。その隣に居るカリーナさんもだ。
「はぁ、先に謝れるともう文句は言えないですよ。私はそこまで気にしていません。どうか頭を上げてください」
この紳士な態度、そしてあの目。ダジール女王陛下の言葉は上辺だけのものでは無い。だとしたら、私を他の聖女から引き離したのは誰なのだろう?
「そう言ってもらえると助かる。お前、ああすまん。奏だったな。春香は若いのに頭が良く機転が利いていたが、奏は底が見えない凄さというか恐ろしさがあるな」
(春香?もしかして朝比奈さんの名前?もう他の聖女とは謁見を済ませているのか?)
「ダジール女王陛下、もしかして7人の聖女とはもう会っているのでしょうか?それと本日の謁見はもしかして私1人だけだった?」
そのダジール女王陛下は「すまん」と一言謝って、その事について詳しく話してくれた。どうやら私をボッチにしたのはダジール女王陛下だったようだ。
(お、お前か!花の中学生活を奪っただけでなく、キャッハウフフなお話友達を奪った張本人はーーーー!)
私は涙してダジール女王陛下の話を聞くのであった。
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