第539話 戯れ言
「……アレスさん、また熱くなっているようですね、もう少し冷静に……いえ、あなたの場合は『平静に』といったほうがよろしいでしょうか?」
……!!
……えっ……今のって、まさか……王女殿下なりにネタを振ってきたの? もしや、プリンセスジョークってやつ!?
おいおい、マジかよ……今まで原作ゲームのヒロインの1人だなぁってぐらいで、全く興味も感心もなかったけど、意外と地味に王女殿下もオモシロイ子だった!?
今この瞬間、ちょっとだけ王女殿下に対する俺の好感度が上がった気がする。
まあ、エリナ先生に対する好感度が無量大数だとしたら、10ポイントとかそんぐらいだけどね! ……って、比較にならない!!
……おっと、想定外の出来事にややテンションが変な感じになってしまったね。
ま、まあね、やはり原作ゲームのヒロインは侮れない……ということにしておいたらいいかな?
「フフッ……聞くところによると、王女殿下も平静シリーズをご愛用なされているとか……さすが、お目が高くていらっしゃる」
「ええ、あの装備の効果には、わたくしも驚かされましたわ」
「ええ、ええ! そうでしょうとも!!」
そんな感じで、ちょいと平静シリーズ談義に花が咲きかけたところ……
これまで、ほとんど俺にいわれるがまま沈黙していたエトアラ嬢の雰囲気、そして圧力が突如として強まりだした。
「……わたくしたちが、相思相愛……ですって?」
……ふむ、これはどうやら、ファティマがいうところの「変な強情」をまだまだ張るぞってことかな?
「ああ、ついさっき、確かに俺はそういった……だがまあ、それは事実だろう?」
「そんなこと……」
「そんなこと……なんだ? 今さら変にごまかすこともなかろう?」
「……そんなこと……あなたから得意そうに指摘されずとも、分かり切っていることですわ!!」
……えっ? あっ……そう、なの!?
それなら、くだらん意地を張ってないで、2人で仲良くしてなさいよ!
もっというなら、俺に婚姻話を持ってくるなんて、ややこしいことするんじゃないよ!!
「……想っていても、遂げられない想いがあるのです」
なんだろう、その言い回し……なかなかに俺好みなのだが……って、そんなこといってる場合じゃなかったな……
「わたくしがトキラミテで、セテ君がモッツケラス……どんなに想っていても、この事実だけは変えられない! そして、わたくし個人の想いだけでどうこうできるほど、両家がこれまで積み重ねてきた歴史は簡単な話でもない!!」
「ま、まあ、両家の関係が良好ではないことは、こちらも知らないわけではないが……」
家同士の対立により、想い合っている2人が引き裂かれるっていう展開……前世でも創作の世界でよく見聞きしたような気がするが、やっぱこの世界にもそれなりにあるということか……
そして、エトアラ嬢の本音爆発はなおも続く。
「……家族や周囲の者を裏切るわけにはいかない……それに、セテ君と結ばれること自体周囲の反対により難しい上、仮にそうなったとしても、セテ君の出世は絶望的……だから、この想いには蓋をしなければならない……それだけの我慢をするからには、この想いの成就にはかなわずとも、それなりに価値あるものを得なければならない……いえ、これからわたくしが得るものの大きさによって、諦めたものの価値が決まる! そう思えばこそ、わたくしはこれ以上ないほど最高のものを得なければならない!! ……それゆえのアレス殿、あなただったのよ!!」
……なんというか、そこまでの評価をしてくれていることについては素直に光栄なことだと思う。
だが、それだけにプレッシャーというか、妙な息苦しさすら感じてしまう。
「エト姉……」
そしてここで、セテルタがエトアラ嬢の名を切なく呟く……
というか君ら、本当はお互いに「セテ君」と「エト姉」って呼び合っていたんだね……
まあ、それも周囲を気にして、だんだん心の中でしかいわなくなっていったんだろうけどさ……
……しっかし、そこまで想い合ってるんだったら、もうそのまま突き進んじゃえばよくね?
俺なんかは、そう思っちゃうんだけど……ってことを述べさせてもらうとするかね!
「……エトアラ嬢、それにセテルタ……周囲のことなど気にせず、その想いを貫いてはどうか?」
「そんな戯れ言、まだおっしゃいますか!!」
「アレス……」
「……戯れ言だと? 本当に欲しいものを諦めて選ぶ未来のほうがよっぽどふざけている! 家など継がずとも、あなた方2人で新しく家を興せばよろしい!! ……それとも何か? あなた方は自分たちだけの力で未来を切り拓いていく自信がないのか!? そこまで非力なのか!? 否、断じてそんなわけはない! あなた方ならやっていけるはずだ!!」
「しかし……」
「……アレス、本当に君はそう思うかい?」
「ああ! 俺はそう確信している!!」
「………………ありがとう……そう……だね、君のいうとおりかもしれない……僕は自分の気持ちにもっと素直になったほうがいいのかもしれない………………エト姉、どうかな?」
「セテ君……」
「仮に大きな困難があったとしても、やっぱり僕は……エト姉と一緒に歩む未来のほうがいい……」
「……本当に……それでいいの?」
「うん……傍らにエト姉のいない中で栄光をつかんでも、きっとそれは輝いて見えないだろうから……」
いったぞ! いった! セテルタがいったァァァァァ!!
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