女子高生と日本刀。おやじとタバコと殺人犯。

望月俊太郎

序章

 それは悲鳴さえ上がることなく起こった。まばゆい閃光で辺り一面が白く染まり、次の瞬間、轟音ごうおんとともに白く染まった世界がぜ、光の速度で波及していった熱量に秒速340mの音速が追い付く頃には、巻き込まれた生命はこの世から消えていた。


 中島なかじまは、世界が爆ぜて吹き飛び消失されていく中、唯一生き延びた生存者だが、彼は彼の意思とは関係なく、己の能力によって命を長らえてしまっただけであり、彼の精神の一部は今も、共に手を繋いでいたはずの妻と子供が黒い影となって消え失せたあの瞬間に置き去りにされたままになっている。


 後に適合者と呼ばれる異能力者が公に犯罪を犯した初めての事件。爆心地であった西東京の3分の1がただの更地となり、建物やコンクリート、ガラス、鉄、街中のあらゆるものが爆発で吹き飛び、熱量で融解、結合し、自然界にはどこにも存在しない奇妙な結晶が辺りに散乱した。


 この世界を驚愕きょうがくさせた未曾有みぞうの事件に対し、国は適合者による犯罪対策チームを設立する。

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