第20話 嘘の証言

 次に白鳥は聞き込みの再確認に向かった。


最初に同じ建設会社の同僚の信二のいる現場事務所に向かった。


事務所に着いて応接間に案内された。


前には気が付かなかったが、ある宗教団体の本尊が事務所の奥の神棚に

飾ってあった。


信二が来て腰を降ろしたので白鳥は話し始めた。


「残務処理の書類を作成中で、再度確認に来ました。正人君の事は知らないで

良いですね?」


「はい、知りませんでした」


「分りました。それとこの事務所の奥の神棚に本尊がありましたが? 誰か入信されているのですか?」


「ああ、この会社の人は皆入信しています。と言うか会社に入ると

入信させられます」


「信二さんも入られているのですか? 勿論社長も?」


「私も入信しています。社長は支部長で熱心です」


次に白鳥は未鈴のレストランを訪ねたが彼女は休日で居なかった。


美鈴に連絡して家を尋ねる事になった。


美鈴はまだ両親と暮していた。


家は屋根の大きい平屋の田舎に良くある建物だった。


丁度、玄関の横の縁側に美鈴が座っていたので、白鳥は其処で話を聞く事にした。


縁側の奥の和室の神棚に例の宗教団体の本尊があった。


美鈴の話では信二より入信させられたらしい。


正人の事は以前と同じで知らないと話した。


 白鳥は署に戻って書類を作成していた。


その時、上司の菊池が来て主任監督を殺した加害者が検察で供述を変えた。


教団の幹部より命令されたと自供した。でも検察は自供が可笑しいので精神鑑定したら、精神病と判定された。だから起訴はされないようだと話した。


白鳥は例の宗教の力が陰で動いているような気がした。


立ち上がろうとした時に弾みでノートが落ちた。


ノートを拾うと正人の日記帳だった。


日記の内容は依前に武内と教授が精神病の事で確認してあった筈だった。


日記帳はミクがアパートに尋ねて来た事を主に書いてあり、書かれていた日付より全てが妄想と確認できた。


その時はミクへの妄想以外のことは重要だと思わず確認していなかったようだ。


椅子に座り直しノートを開いた。


信二よりミクの浮気を聞いた時、美鈴が同席して義父との事を聞いた時の日付と店の名前が書いてあった。


日付と妄想かどうかを確認するため白鳥は早速その店に向かった。


まだ準備中だったが、三人の写真を見せると店主は覚えていて、正人の

日記通りだった。


白鳥が何故覚えていたのかを聞くと、信二と美鈴から例の宗教団体への勧誘がしつこく、正人も普通の人では無いように思えて覚えていたと店主は話した。


これでミクと義父の殺人事件は足元から崩れていくと白鳥は感じた。


白鳥は信二と美鈴を訪ね詰問すると。


やはり、教団幹部からの指示で、ミクの浮気と義父との関係を正人に話すように、そしてそれは口外しないように、警察には正人の事も知らないと証言するようにと言われていた。


二人共にその理由を聞いたが教えて貰っていなかったらしいが正人に義父とミクに対して憎悪を抱かせる結果になったのは確かだった。


白鳥は調査した結果を書類にして上司の菊池に提出して、再捜査と精神科医の石田の出頭を依頼した。


数日後、菊池が来て再調査と石田の出頭は却下され、この事件は既に終了しているから関わらないようにと署長より言われたと白鳥に伝えた。

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