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俺は薪割りをかって出た。
裏庭に案内され黙々と薪を割っていると、ソバが腕組みをしながらやってきた。
「魔法で効率よくできなくもないが、誰かにやってもらうってのはいいね」
額や首の汗を拭きながらソバに向き直った。
「だろ」
「まあ汗臭いのはたまらんな」
「!」
「ほれ、
一瞬もやのようなものに包まれたかと思うと、スッキリした気分になった。赤茶けていた手の甲も心なしか日焼けした程度にきれいになっている。靴の泥も落ちていて、自分の周りには円状に埃が散らばっている。
「先生」
「ソバ」
「……ソバさん。俺にも、俺にも魔法を教えて欲しい」
「ん-、まあ見習いからならいいよ」
あっさり了解が貰えた。言ってみるもんだな。
「じゃあまずは家の修理からかな。あの量の薪割りもあっさり終わらせたし、今は力仕事の方が得意だろ?」
「任せてくれよ!先生」
「ソバだ」
「よっしソバさん、ちゃちゃっと修繕するぜ」
「修理の後はフロかな」
「おっし、フロな」
「そのあとは」
「……」
「魔法の基礎から叩き込むから覚悟しな」
こうして俺は、見習いながら魔女に弟子入りした。
数年後、ソバは消えるように(文字通り!)息を引き取った。
そして今、魔法使いになりたいというひょろっこい少女と向き合っている。
「魔法の基礎から叩き込むから覚悟しな」
― 完 ―
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