第15話 クライブ再び

 私はアリスに手を繋がれたまま、引きづられていた。私を逃がさないように……、私はイフリート王との面会前にぐったりしていた。先ほど、イフリート王の執務室に訪れたのだけど、あいにくとイフリート王は留守だった。私はイベント――、イフリート王を探せに強制参加させられていた。


「どこにもいませんね」


「ねぇ、アリス、もう諦めようよ。わたし帰ってもいいよね? あっ、やめて、もう何度もひっぱるから、よれてるから、これ以上はほんとーに冗談抜きで破れるから、やめて――!」


 逃亡を図ろうとすると、アリスは、トレシャツに何かの恨みでもあるかのように強く引っ張ってくる。わたしのトレシャツの耐久値がもう限界に近いかもしれない。


「もう、ダメですよ、次は図書館にでも……、あの方なら、お父様の居場所を知っておられるかもしれませんね」


 長い通路を転々としていたら、緑色の髪をした男性が前を歩いていた。彼は緑色の軍服のようなものを着込んでいた。それは隣国シルフィードの戦闘装束のようなものだった。


「これはアリスティア様、もうお加減はよろしいのですか、って、(なぜ君がここに、まさか僕を追ってここまで来たのか。服までよれよれになって、ボロボロじゃないか、なぜ、そんなに君は弱ってるんだ?)」


「クライブ、私は大丈夫です。お聞きしたいのですが、お父様はどちらにいらっしゃるかご存じですか」


「今の時間なら謁見の間におられるかと、あの……、彼女は、もしかして……、ナニかしでかしたのですか? 」


 クライブはアリスの問いかけに答えてから、ぐったりしている私を見てさらに問いかけるかたちになった。


  着ているトレシャツがボロボロな上にアリスに手を握られ引きずられている私を見て、彼はこう考えたらしい。


 クライブをストーキングするために、イフリート城へ侵入し、私がクライブに変態行為を行う前にアリスに捕まってしまい、今から審判を行うためにイフリート王を探しているのではないかと、疑っているようだ。


 まさか、君は王城まで僕をストーカしにきたのか、いくら性癖があれでもしていい事と、してはいけない事ぐらい把握できるだろうに、そこまで見境がないのかと目が私に、そう訴えているようだった。


「おねぇさま、ごほん、彼女は私の恩人の方です。失礼のないようにお願いいたします」


「そうでしたか、彼女がナニもしていないのなら、本当に良かった。出会ってすぐに、牢獄に入る学友を見るのは、さすがに御免こうむりたいです。私も、(彼女の監視のために)同行いたしましょう」


 失礼なことを言われているような気がするのだけど、でも、クライブの戦闘装束はとってもかっこいいよね。緑のベレー帽も似合っていて、私はじっと、クライブを眺めていた。ふと、彼と目が合った。


 久しぶりのクライブ成分を吸収したせいか、このドキドキ、高まる気持ちはなんだろう。いつもより酷く私の顔がニヤけていた。


 片やクライブはそんな私を見て、やはりそうだったのかと、ドン引きしていた。王族の前でそんな発情したような目つきで僕を見るなんて、こいつは、ナニを考えている、とクライブに一歩引かれて警戒されてしまった。


「あの、クライブと彼女は、学園ではどういったご関係なのですか?」


「ええ、まぁ、なんというか」


「うん、それは、言いにくいような」


 さきほどまで目で語り合っていた私たち、目をそらし合う。私が今までに行ったクライブへの変態行為を思い出してしまう。顔が赤くなってくる。クライブもナニを思い出したのか顔を赤くしていた。


「もしかして、お二人は恋人同士なのですか?」


「「ち、違います」」


 二人でハモってしまった。


「とっても仲が宜しいのですね」


 アリスに勘違いされてしまった。

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