第22話 Dランクフィールド
シオンは右手で
「は、速い!」
「本当にイケるかもしれないぞ!」
シオンのスピードを目の前にして、両翼のソルジャーたちの気持ちが
言葉ではなく、その動きを目にすることで実感が出たのだろう。
(まずはアスラの足を止めないと――)
シオンは左足を踏み込んでアスラの右寄りへ移動し、斜めに斬り込んでいく。
アスラも一人向かってくるシオンに反応するが、シオンがすでに先手を取っていた。
六本のうち片側二本を同時に斬られたアスラの体勢が崩れる。
シオンは左から右へ
シオンが蹴り飛ばしたアスラは対角線上に転がり、他のアスラの動きを妨害していく。
蹴った直後を捕食しにくる別の個体。まるで突進するかのような勢いで、蟻のような口がシオンの目の前に迫った。
(先に残りの前に行ってるのをやらないと――)
シオンは迫ってくるアスラを無視し、左に位置していたアスラを斜め後方から急襲。
先頭にいる個体の胸部を
その個体の頭に着地すると同時に
Dランクのアスラをシオンは完全に
そのタイミングでディーナの号令が両翼にかかった。
『作戦開始! 両翼はアスラを包囲し、最大火力でアスラをその場に留めなさい!』
ディーナの指示が待機していた両翼に出され、ソルジャーたちが左右から展開されていく。
この動きもディーナが立てた作戦。通常ならば初手は魔法でアスラの勢いを削ぐ。
だがそれをやることでアスラが散ってしまうのを防ぐため、この作戦ではシオンが初手から斬り込むという戦術が取られた。
ソルジャーたちは包囲をするために駆けながら、同時に魔法の展開をする。
それを見たシオンは両翼の包囲が完成するまで時間を稼ぐことに徹し、アスラの数を減らすことより抑えることを優先して動く。
倒すことで障害とし、足を斬ることでスピードを奪う。
包囲するソルジャーに目を向けるアスラを優先し、シオンもアスラを自身に向かってくるように立ち回っていた。
そしてソルジャーたちの包囲は完成する。全方位から始まる魔法攻撃。
それはアスラを留めることになり、その分だけシオンはアスラを倒すことに意識を割くことができるようになる。
近場にいる何体かの足を削いで時間を稼ぎ、外側のアスラの注意を引きながら殲滅に移った。
「ディーナ大佐! すごいですっ! 少しずつですが、Dランクのアスラの数が減っています!」
「ええ、問題はアスラをどれだけ留めることができるか」
全滅までさっき頭を過っていただろうオペレーターが、この状況を興奮気味で伝える。
だがディーナは厳しい表情を崩さない。
この作戦は間違いなく被害は抑えられるものであるが、どこかで崩れる可能性を孕んでいた。
通常一個体のアスラに、同ランクのソルジャーであれば四人から五人の班であたって安全を確保する。
だが今包囲しているソルジャーの半分以上はEランクのソルジャーであり、数的に見ても不安が残る。
その上アスラを押し留めさせるために、包囲を崩すこともできなかった。
(――この人数とソルジャーランクだと、火力が足りないか)
シオンが目の前のアスラを倒した向こうで、包囲しているソルジャーに突進している個体がいた。
シオンはできる限り中央から動かずに殲滅したいところだが、外へ向かうアスラを優先せざるをえない。
「くっ、どけぇーー」
最短で進むために、無理をしてでもアスラのなかを突っ切っていく。
倒せなくとも
アスラが密集している場所で最短距離で追いかけるため、死角になる角度からアスラの脚がシオンをかすめた。
だがシオンはそんなことには構わずアスラのなかを駆けていく。
「向かってくる個体を撃てぇ!」
等間隔で配置されているDランクのソルジャーが叫ぶ。
包囲網のソルジャーに迫るアスラに魔法が集中し、向かってきていた勢いが鈍る。
そのタイミングで二人のDランクソルジャーが前に出た。
一人は振るった
だが
腹部の方から胸部の方へと身体を回転させながら飛び込み斬り刻む。
そしてアスラを倒して着地した瞬間、シオンはすぐに身体を反転させてアスラが密集している場所へと駆ける。
「ディーナ! 向こうの余裕ができ次第風属性のソルジャーをまわせ! 包囲しているソルジャーを上から援護させろっ!」
『了解! オペレーター、Fランクフィールドの残りは?! ――――風属性のソルジャーを半分Dにまわして!』
シオンは包囲しているソルジャーからの魔法を数で補う指示を出す。当然Fランクバトルフィールからまわすため、今Dランクバトルフィールドにいるソルジャーよりも実力的に危険度は上がってしまう。
だが風属性のソルジャーに限定すれば、上空からの魔法攻撃を行えるため危険度は高くなかった。
シオンは左下にあるマップの反応を確認し、どの場所のアスラを叩くべきかを見る。
一瞬腰の後ろに固定している
(手数を増やしても今の魔力強度では悪手にしかならないか)
手前にいた二体が振り下ろしてくる前脚を
足場にされたアスラは押し出されるように他の個体を巻き添えにして倒れ、シオン自身はもう片方の個体の頭を斬り落としていた。
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