開始-6
家電量販店のザギバスで納品の立会いを終えた真希はザギバスの担当者と少し談笑し帰社しようと店を出ると、自分を任意で引っ張ろうとした刑事と自分とぶつかった変な男と見慣れぬ女性が出入口に立っていた。
「お待ちしていました。真希さん」
誠は近寄りながらそう話しかける。
「今度は、何ですか?」真希はスマホで西岡弁護士に連絡しようとする。
「弁護士呼ぶ必要はありませんよ」
鼻を膨らませた新三が言った。
「どういう意味です?」
「捜査協力して欲しいんです」愛子は用件を伝える。
「捜査協力ですか?」
思いもよらぬ提案に真希は、何を企む、といった感じの顔をする。
「そうです。被害者が怒涛の勢いで営業成績を上げていたのですが。
ちょっと、その手法が気になりまして。
グンギロでの営業成績No.1の貴方の知識を貸してほしいんです」
「はぁ」
その誠の言葉に了承した真希は、近くのスタバで話をすることになった。
各々、飲みたい物を注文して席に着くと真希が本題を切り出してきた。
「それで、私は何をすれば良いのでしょうか?」
「はい。真希さんにはこれからお話する被害者の営業方法について意見を伺いたいです」
そこから誠は、秋月から聞いた大隈の営業手法を伝えた。
「度胸のある営業スタイルですね」
聞き終えた真希の第一声はそれであった。
「そうですね。真希さんはこの営業スタイルって聞いた事ありますか?」
「いえ、流石は宇宙人といったところでしょうか」コーヒーに口をつけながら真希は感想を述べる。
「え? 被害者って宇宙人何ですか!!」
新三がウキウキな顔で驚いて見せる。
「あ、いや、そんな事いいましたか?」
「言ったよねぇ~ 愛子ちゃん」
「さぁ?」
「そんな事より被害者の営業スタイルって、誰かの恨みを買うということはないでしょうか?」
誠の質問に、真希は「う~ん」と唸りながら腕を組み長考し始める。
暫くの沈黙の後、真希はこう答えた。
「それは無いですね。だって、そうじゃないですか。営業の邪魔をしたわけではないのでね」
「邪魔ですか・・・・・・・」
新三は意味ありげな顔をしながら真希を見る。
「それで他に聞きたいことはないんですか?」
「そうですね・・・・・・・」
誠は事件に繋げれそうな質問がないか考えていると、今度は愛子が真希に質問を投げかけた。
「あのどうして協力しようと思ったんですか?」
「それは、市民の義務だからですよ」そう言う真希の顔は明らかに作り笑いの笑顔であった。
「立派なんですね」
「いえ、そんな」
「じゃ、じゃあ今度はおれが質問する」
新三は手を挙げて愛子に負けじと質問をした。
「え~っと、え~っと」
まるで小学生の子供が社会見学で質問する内容を考えずにイキって質問した時の様な感じになる新三。
愛子はそれを見て、一体こいつは何がしたのか、そう思っていると新三が口を開いた。
「あ、そうだ。そうだ。退勤後ってどういうスケジュールで動いているんですか?」
「それ、事件と関係あります?」
「いいえ、業界シェアトップの一流営業マンの日頃の努力が知りたくて。
お気に障ったらなら答えなくて結構です」
新三は少し不機嫌な顔になる。
「まぁ、良いでしょう。お答えします」そう前置きし、真希は語り出した。
「私は基本、残業はしません。その為、定時退社です。
退社後は、ほぼ毎日ジムに行きます。それが終わってからは外で食事を済まして帰る。
これの繰り返しです」
「なんか、ロボットみたいですね」新三は感じた事をそのまま伝えた。
「そう言われればそうですね」
真希の緊張していた顔が少しほぐれた。
「では、事件当夜も?」誠がこの隙にと事件当夜のアリバイを確かめる。
「ええ、同じですよ」
「それならそうと答えてくれれば良いのに」愛子は口を窄めて可愛い子ぶる。
「不細工な顔だな。おい」
新三が言うと同時に愛子の裏拳が新三の顔面にクリーンヒットする。
「ふぎゅっ!!!」その言葉を吐きながら卒倒する。
「はぁ~」恥ずかしさ等の感情が込み上げてきて誠は、心の底からのため息を吐く。
これ以上、話を聞けないと判断した誠は真希に切り上げることを伝えると同時に捜査協力を確約させその日は引き上げることにした。
その帰り道の車内で情報を整理する三人。
「で、どうです? 彼と直接話した手ごたえは?」
「う~ん、それより良いかな」
「何です?」
「愛子ちゃん。一応、俺先輩なんだけどそこら辺分かっていらっしゃるのかしら」
「分かってますよ。でも、これは社長の方針でもありますから」
「うっそだぁ~」
「ホントですよ。事件の話しましょう。あの男、被害者が宇宙人である事を知っていましたね」
「そうでしたね。あれで、僕は真希が犯人である事を確信しました」
「おい、コラ。人の話を無視するな」
新三は愛子との話が終わっていないと言わんばかりにツッコむ。
しかし、二人は話を続ける。
「でも、動機って何でしょう。別に売場を盗られたわけではないのに・・・・・・・」
「甘いな、愛子ちゃんは」
「小永さん、それどういう意味ですか?」
「あの調子でいけば、ダンぺ製の商品が売り場を大きく広げるだろうな」
「つまり、グンギロの商品は売り場から消えるという事ですか」
「極端だな。消えはしないと思うけど売り場は縮小されるだろうな」
「それだけで人を殺す。変じゃありませんか?」誠が疑問をぶつける。
「まぁ、トップの成績を保つためには脅威でしかないだろ。
納品数が減るんだから、是が非でも阻止するのは普通だろ。全部、憶測だけど」
「確かに小永さんの言う通りですね」愛子は新三の考えに賛同する。
「という事でさ、誠っちには他の企業の営業マンに営業妨害がなかったか。調べて」
「分かりました。早速、かかります」
「宜しくぅ~」
新三はそれだけ言うと眠りにつくのだった。
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