第25話 ウルーガ1
25話 ウルーガ1
「この森……ドラゴンの聖域だった。けど悪い奴らに侵された。父も母も亡くなった……」
緑髪の男はそこまで言うとジャスティスを真顔で見る。
「お前、俺を助けてくれた。だから俺、お前についてく」
「……つ、『ついてく』って」
ジャスティスは困惑してしまう。
「あ、あの……僕多分、この地から離れなくちゃいけなく、なると思うんですけど……。それでもあなたの事、放っておけなくて……すみません、後先考えずにこんな風になっちゃったんですけど……」
しどろもどろになって上目遣いで男を見れば――
「俺、大丈夫」
首を横に振りながら端的に言われて、
「お前となら、俺、平気」
「……」
そこまで言われてジャスティスは再び困惑する。
このままでいいのだろうか?
でも、こうやって冒険とかしてみたい。
だけど、こんな感じで旅立ってしまっていいのだろうか?
父と母は大丈夫だろうか? それが一番気がかりだった。
自分は、どうすればいいのだろうか?
戻ろうか。でもカインさんとの約束がある。
しばらく俯いていた顔をあげ、
「ーーあの僕、港で合流しなきゃいけない人がいて……」
今後の事はまだ分からないけど。でも今はこの地からしばらく離れなきゃならない。それだけは明確で。
その考えを緑髪の男に伝えると、
「分かった。お前についていく」
男は短く答えて、
「お前、色々考えすぎ。この行いも多分これから先に必要な事。今はやりたい事素直にやってみたらいい」
男がそこまで言って言葉を切るとジャスティスは何かを感じたのか目を見開いて呆気に取られたような顔になっている。
「どうした?」
緑髪の男が聞けば――
「え……。あの僕、そんな風に言われた事なかったので」
照れたように俯いて答えるジャスティス。
「でもーーなんか、うん。ちょっと気が楽になったかな?」
すぐに顔を上げて自分の気持ちを確かめるように少し首を傾げて見せた。
「お前、面白いやつ」
「え、それも初めて言われました」
きょとんとしてジャスティスが言えば――緑髪の男は声を殺して俯いてクスクスと笑っている。
「……?」
男のそんな様子を見てジャスティスは更に首を傾げる。
(僕そんなに面白い事言ってないけど……)
心で小さく呟き何気に空を見上げると、陽はもう既に落ちて薄暗くなっている。
「あの……」
「陽が沈むな。森の中で一晩過ごすが、お前平気か?」
ジャスティスが何かを言う前に、緑髪の男は笑いのツボから漸く解放されたのか冷静になってジャスティスが言おうとした事を先立って告げた。
「あ。ぼ、僕は平気です」
「そうか」
少しホッとしたような笑みを見せる緑髪の男を見てジャスティスはふと気づいたように、
「あの、そういえばお名前……」
「俺、ウルーガ。ウルーガ・シーディア」
と、ウルーガは右手をジャスティスの前に差し出す。
「あ、はい。僕、ジャスティス・グランヌです」
言いながらジャスティスもまた左手を出してウルーガと握手を交わした。
「ここから少し行った先に『木こり』の休憩場がある」
ウルーガは森の奥を指差し歩き始めジャスティスも慌てて後をついていく。
ウルーガはこの森に住んでいたのか道が分かるようで迷う事なく進んでいく。
「ウルーガさんは、森の事詳しいんですか?」
「この森、『迷宮の森』と呼ばれてる……」
「『迷宮の森』?」
ウルーガの言葉に目を瞬いておうむ返しするジャスティス。
「じゃあ、あの幻の森 (ファントムフォレスト)ってのは?」
「……ジャスティス。お前どうやってここまで来た?」
首を傾げるジャスティスにウルーガは少し怪訝な顔をする。
ジャスティスはここでもまたシエンタ村で自身に起きた出来事を話したのだった。
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