第7話 幼馴染との念願のデート⁉

 今日も暇じゃない。

 忙しいというわけではないが、今日はやることがあり、少し早めに移動しておいた方がいいだろう。


 今日は金曜日。藤咲弓弦葉ふじさき/ゆづるはと放課後デートする予定になっていた。


「……早めには来たけど、ちょっと待たないといけないか」


 貴志湊きし/みなとは片手に持っているスマホ画面を見て、暇を潰していた。今いる場所は、街中の公園。

 そこは、待ち合わせするには打ってつけの場所であり、他に数人ほど佇んでいる人をチラホラと見かけた。


 すでに本日の授業は終わり、弓弦葉は一旦、家に帰った。


 弓弦葉は家でやらなければいけないことがあるらしい。彼女は時間がかかるということで、湊は一足先に到着していたのだ。


「というか……ようやく、弓弦葉と、デートができるのか」


 気分的には楽しい。

 爆乳でかつ、元々、付き合ってみたかった存在。


 幼馴染ではあるが、友達止まりで、デートするまでには発展しなかった。

 けど、それが今日、叶う。


 高鳴る感情を胸に抱えながら、その場所で待っていると、近づいてくる気配がある。街中には多くの人がいるものの、何となく雰囲気でわかった。

 湊はスマホを制服のポケットにしまい、辺りをサラッと見渡す。


 人が多い街中だが、弓弦葉の存在だけは、すぐに把握できた。

 彼女は爆乳であり、インパクトが強いのだ。


「ごめん、待ったよね?」


 弓弦葉は人中から姿を現す。

 彼女はそこまで息を切らしてはいなかった。

 ランニング部に所属しているということで、それなりに体力があるらしい。


「そこまで待ってはいないけど。なんか、家に帰らないといけない理由があったの?」

「う、うん。ちょっとね」


 小学生からの付き合いであり、幼馴染なのだが、まだ彼女の知らない一面もあったりする。

 彼女の表情的に、余計な追及はしないことにした。


「ねえ、どこに行く?」

「どこかな? 弓弦葉は、行きたいところってあるの?」

「それはまあ、あるけど……」

「けど?」

「んん、なんでもない」

「?」


 隣を歩いている彼女の口調が一瞬変わったような気がする。

 隠し事的な、何かがあるのだろうか?


「ねえ、私が行きたいところに行ってもいい?」

「いい、けど」


 さっき、何を話したかったのだろうかと、ちょっとだけ、モヤモヤしていた。


 それもあるのだが、隣にいる弓弦葉のおっぱいはデカい。

 近くを歩いていることもあり、その爆乳さを肌で実感できるほどだ。


 この前、ランニング場で走っていた彼女の姿を見ていたのだが、おっぱいの揺れ方が尋常ではなかった。

 そのことを一回でも思い出すと、如何わしい妄想ばかりが脳裏を駆け巡るのだ。






「私が行きたいって思ってた場所はね、ここなの」


 今、弓弦葉と一緒にいる場所は、書店だった。


「じゃあ、一先ず入ろうか」

「うん」


 彼女は楽し気に頷き、湊は一緒に入店するのだった。


 店屋に入った瞬間、程よい涼しさが、体を包み込むようだった。

 今の時間帯は、そこまで混んでいる様子はなく、比較的歩きやすい環境である。


「弓弦葉は何を買うの?」

「色々」

「色々って?」

「別にいいじゃない。ねえ……こっちに来て」


 弓弦葉から、そう言われ、突然、左手を掴まれたのだ。


「⁉」

「きゃッ……ご、ごめんなさい。つい、触って」

「別にいいよ」


 というか、触っている方が悲鳴を上げるなんて。

 周りの人に変な誤解を与えて居なければいいのだけど……。


 湊は辺りを見、確認する。

 彼女の声が小さかったこともあり、店内にいる人には、今の状況を見られていないようだ。


「俺は繋いでいてもいいよ」

「……いいの?」

「うん」


 湊はそう言い切った。

 恥ずかしい気持ちも多少なりあったが、彼女からの行為を断るのはよくないと思う。

 むしろ、受け入れたい。

 だから、弓弦葉の手を優しく握り返したのだった。


「ありがと」

「ん? 何が?」

「な、なんでもないから……私の独り言」

「そう?」


 湊は頷くように反応を返したのち、彼女と共に店内のとあるエリアへと向かう。




 とあるコーナーの本棚前。

 弓弦葉が欲しかった本は漫画らしい。

 少年系の単行本を手にしていた。


「あれ? 弓弦葉って、そういう漫画とか読んでいたっけ?」

「読んでいなかったけど。この頃、見るようにしたの」

「どうして?」

「なんか、その、そういう気分になっただけ」

「へええ、そうなのか」


 弓弦葉にしては珍しい。

 少女漫画とか、そういう感じだと思っていたからだ。

 彼女の中で、何かしらの変化があったのかもしれない。


「湊君は、どういう漫画を読むの?」

「えっと……」


 湊は本棚のところをあっさりと見渡す。

 が、この少年向けの漫画コーナーにはなかった。

 この頃読んでいる漫画というのは、多分、別のコーナーにあると思う。


 そもそも、その漫画の系統を、隣にいる弓弦葉には言うことなんてできなかった。

 気まずい空気感になるからだ。


「もしかして、この頃、漫画とか読まない?」

「そういうわけじゃないけどさ」


 湊は笑って誤魔化す。


 言えない。

 エロい系の漫画をこの頃読んでいるとは。


 元々、そういう漫画を読み始めたのは、弓弦葉の裸体を想像するためである。

 基本的に、爆乳な美少女が登場する、漫画ばかりだからこそ、ハッキリとした返答はできなかった。


「ねえ、どんな漫画ジャンルなのかな?」

「それはさ……逆に知りたい?」

「⁉」


 彼女は体をビクッとさせた。

 何かを察したかのような態度。


「……いいよ。やっぱり……」


 弓弦葉は頬を紅葉させ、視線をサッとそらしている。

 何年も一緒にいるのだ。

 本当に何かに気づいたのだろう。


「あとさ、漫画とかスマホのアプリとかで見ているし。この頃、書店とかで買わないんだよ」

「そうなんだ……アプリね。そういうのあるよね。今の時代って」


 弓弦葉は一旦、無言になったのち。


「私もそれで、色々見れるのかな?」

「見れると思うけど。アプリの方で見る?」

「うん……」

「どうしたの?」


 弓弦葉の様子が少し怪しかった。

 変というわけではなく、おどおどしている感じだ。


「私もそれで、湊君と同じ漫画を見たいっていうか」

「み、見るの?」

「うん……今後のために」

「今後⁉」


 湊は彼女の意味深なセリフに、どぎまぎしていた。


 弓弦葉は、今、手に持っている漫画はここで購入するらしい。会計が終わるなり、二人は書店から出るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る