桜賀さんとの出会い

中学二年の夏、俺とめいは学校で使う物を買いに行った帰り道。


晩御飯の惣菜をスーパーで、買っていた。


「命、家で食わなくてよかったの?」


「うん、大丈夫」


俺の家で、ご飯を食べながらつまらないDVDを見ようって話になってた。


前のレジをされているお兄さんは、たくさんの食料品を買っていた。


重そう。


一人でとか、大変そう。


俺は、その人が気になってた。


「車かな?」


「わかんない」


命も同じように気になっていたようだった。


俺達は、買い物を済ませた。


その人は、まだ積めていた。


「行こう、ソフトクリーム食べよ」


「うん」


スーパーの隣にあるソフトクリーム屋さんで、ソフトクリームを買った。


暑いから、どうしても食べたかった。


さっきのお兄さんが、やってきた。


俺と命は、見つめていた。


「あっ」


袋が裂けて、中身が落ちた。


「はぁー。」


ため息をついて、お兄さんが拾ってる。


「命、これ持ってて」


「えっ?」


俺は、お兄さんに走って近づいた。


「手伝いますよ。」


「あ、ああ。すみません」


「段ボールもらってきます」


スーパーに行って、段ボールをもらってきた。


「卵割れてしまった」


お兄さんは、残念そうに卵を見ていた。


「これ、持って帰るの手伝いますよ。近いですか?」


「ああ、すぐそこなんだよ」


お兄さんは、近くのマンションを指差した。


「だったら、持ちますよ」


「ごめんね」


そう言って、段ボールにしまってく。


「朝陽、これ。私も手伝うよ」


命に、溶けてるソフトクリームを渡された。


「あっ、ごめん」


俺は、急いでソフトクリームを食べてから荷物を持った。


命は、俺の荷物を持ってくれた。


「ごめんね」


マンションの5階の角部屋だった。


(宇都宮)と書かれてる。


「ありがとう、助かったよ」


「パーティーですか?」


「違う、違う。近くのビルで働いてるんだよ。ご飯も食べれるバーなんだ。そこで出すメニューを考える為なんだ」


そう言って笑った。


くしゃくしゃって笑う顔が可愛い人。


「いくつ?」


「14歳です」


「若いねー。中学生?」


「そうです」


「へー。俺より8歳も年下なんだ。若いね、若い、若い」


そう言って、笑いながら冷蔵庫に食材をしまっていく。


「二人とも、卵嫌いじゃない?」


「はい」


「じゃあ、ちょっと待ってね」


そう言って、その人は俺と命に玉子焼きを焼いてくれた。


「だし巻き玉子、食べてみて」


「いただきます」


ちょうどいい味で、俺と命はペロッと平らげてしまった。


「ごちそうさまでした。美味しかったです」


「二人がよかったら、また味見しに来てくれない?」


「はい、大丈夫ですよ」


俺と命は、顔を見合わせて頷いた。


「よかった。嬉しいよ。自己紹介まだだったね。宇都宮桜賀うつのみやおうがです」


「俺は、五十嵐朝陽いがらしあさひです」


「私は、瀬野命せのめいです」


そう言って、お辞儀をした。


「よろしくね」


これが、俺と桜賀さんの出会いだった。


それから、毎週日曜日の午前中。


俺と命は、この人のご飯を食べに行った。


好きだって認識したのは、命が行けなくて一人で行った日だった。


向かってる途中で、雨が降りだして…。


家についた、俺に桜賀さんはタオルを被せて頭を拭いてくれた。


「風邪ひかしたら、親御さんに怒られちゃうから」


そう言った後、桜賀さんは自分の服を貸してくれた。


爽やかな香りのする服だった。


心臓が波をうって俺は、初めての恋をした。


「思い出してたの、出会った日」


「いくつハンカチあるの?」


「三枚は、持ってるよ」


そう言って命は、立ち上がった。


「夕陽さんのかわりでもいいじゃない。今日は、一緒に居てあげなよ。宇都宮さんだって寂しいだろうから…。じゃあ、一旦仮眠してくるわ」


そう言って、命は手をふって去って行った。



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