間違いから始まった学校一の美少女とお付き合いする話

tai-bo

プロローグ 事の始まり

 僕の名前は、星宮翔琉ほしみやかける。どこにもあるありきたりな名前だ。趣味は、マンガやアニメ鑑賞、ゲームをすることだ。いわゆるオタクというやつだ。そして彼女いない=《イコール》年齢十六歳の高校一年生だ。別に二次元のキャラクターを彼女というつもりはない。現実と二次元の区別ぐらいついている。単純に彼女が出来たことがないのだ。スポーツも勉強もまあできる方だと自分でも自負している。昔、スポーツか勉強が出来る人はモテると聞いたような気がするがあれは嘘なのだろうか。そんなわけで気づいたら休みの日はいつも家で漫画を読んだりしている。たまに外に出ても本の新刊チェックをするか、友達と遊ぶぐらいしかない。しかもこの友達はモテるのだ。

 例えば、バレンタインデーの時は一日中男はチョコレートを貰えるかどうかとそわそわしている。僕もその一人だ。そんなある時、女子に声をかけられた。しかもクラス一といっても過言ではない美少女だ。僕はその女子に好意を持ってたことからテンションが上がるのと同時にチョコレートが貰えるのかと内心ドキドキだった。


「・・・・・・あの、これ――――」


 女子が差し出したのは四角い箱を紙で包みリボンで梱包していた。間違いないチョコレートだと思い、心の中でガッツポーズした。

 何とか正常な態度をとりつつ、


「あ、ありが――――」

「――――〇〇君に渡してくれる」

「えっ!」


 そこから先はよく覚えていない。気づいたら家に帰ってベッドに乗っ転がってボウ~としてたからだ。手元にチョコレートがないことから無意識の内に渡したんだろう。思い出したら泣けてきた。好きな人に告白する前に振られた感じだ。初めての失恋を味わった小学三年生の二月のことだった。それから毎年のように僕を仲介して渡すのが日常茶飯事になった。そのたびに直接渡せよとか、ちょっとはこっちの身になれよとか、義理チョコもないのかと思ったが女子に声をかけられるのが嬉しくてついつい仲介してしまう。しかも今現在もその状況は変わらない。それもバレンタインデーだけでこれなのだ。他も上げたらきりがない。

 何か思い出したら泣けてきた。


 気分転換にベットに寝っ転がりながら読みかけの少女コミックを読んでいた。内容はある日、学校の下駄箱に差出人不明の手紙が入っており、中には放課後体育館裏の桜の木の下に来てほしいと書かれていた。明らかに女子が書いたであろう字で。その日、一日中そわそわしっぱなしで勉強にも身が入らずに放課後になるのを今か今かと待っていた。そして、放課後、緊張しながら体育館裏にいったらそこには人影が。しかもその人物を見て驚いた。クラス一といっても過言ではない美少女が緊張した面持ちで桜の木の下にいるのだ。それを見た主人公は何とか平常心を保ちつつ桜の木の下に向かう。足音に気付いた美少女は顔を上げるが、喜びもつかの間、怪訝そうな顔で「何であなたがここに来るの?」と言う。そして、話を聞いてるうちに何とこの美少女は手紙を入れる下駄箱を一列間違うというドジをしていた。それを聞いた主人公はショックで俯いてしまう。それを見た美少女は居たたまれない気持ちになったのか、

「間違ったのは私だから、とりあえずお試しで付き合ってみる?」と聞いてきたことから始まるラブストーリーである。漫画だから許されるご都合主義というやつだ。

 現実でこんな都合のいいことが起きることは無い。



 そう思っていた。あの時までは――――。

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