長い話の始まり



 それは今思えば、未熟さが生み出した嫉妬だったのだろう……





 私の血はリュドルフリアと同じく、少しばかり変わった性質を持っていた。





 同族の血は肉体に害を及ぼすが―――私の血は、精神に害を及ぼした。





 何かの拍子に私の血を取り込んだ同胞は、じわじわと己を失っていくのだ。

 最終的には知性をなくし、本能だけで生きる野生動物と等しくなる。



 言葉を交わすことも叶わず、縄張りに入った途端に暴れる厄介な存在。



 そうなってしまった同族に下される処分は、僻地にいるのなら隔離。

 同胞に危害を加えるようなら、殺す他に道はなかった。



 それを私自身も周囲も理解したのは、いつのことだったか。





 私はいつの間にか―――誰からも、遠巻きにされる存在となっていた。





 まあ、怖いだろうな。

 これまでに得てきた知識も何もかもが消えていくのを、自分では止められないのだから。



 だがな、私は決して孤独ではなかったのだ。

 私には、自身と同じだと思えるリュドルフリアがいたから。



 互いに遠ざけられがちな者どうし、彼とは必然的に、共に語らう仲になっていた。



 お互いに、難儀な血を持ってしまったものだな、と。

 自分が抱えたこの重荷も、二人でなら笑って受け流すことができた。



 一人でもいい。

 たった一人でも、自分と同じ立場で語らってくれる者がいる。

 それだけで、心は安らいだ。





 だが……―――それを、あいつが全て奪っていった。




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