第2話大聖女になる
「……だ、大聖女?」
聞いた事のない職業である。
だが、字面からすると聖女と同じような職業そうだ。
「という事は……回復系…いや、まだ決まったわけじゃない。特技の欄を見てみれば……」
しかし、そこには回復魔法や支援魔法が山のようにある。
「ク、クソッタレー!何でだよ!何で回復系なんだよ!大体おかしいだろ!どうして聖女がいるのに大聖女が出てくんだよ!そもそも俺は男なのに何で女子限定の職業になってんだよ!」
ツッコミどころが追い付かず、ソラはベットに潜り込んだ。
「はぁ……明日両親になんて言おう。まさか俺も聖女だったなんて言えないし、いや待てよ?剣士だったと言えば良くないか?ステータスボードさえ見せなければ、俺の嘘がバレることもない。きっと明日はマヒロの聖女の件で盛り上がるはずだから、さらっと言っておけば深く追求されないかも……」
こうして、ソラは自分の職業については隠し通すと決めたのだった。
………………………………
………………
……
「そ、それで、マヒロが聖女だったと言うのは本当なのか!?」
「嘘よね?じ、冗談よね?」
軽く……いや、だいぶ動揺しながらマヒロに詰めかかる父と母。
「嘘じゃないもん!私本当に聖女だったもん!」
そう言ってマヒロはステータスボードを見せた。
「ま……じか」
「信じられないわ、でもこうしてステータス欄に書かれている以上本当なのね?私夢を見てるんじゃない?」
「落ち着け母さん。それよりまずは役所に連絡を……」
案の定マヒロの職業の話で盛り上がっている。
これならバレずにやり切れるかもしれない。
「おお!ソラは何の職業だった?」
「剣士だったよ」
「そうか!ソラも剣士になれたのか!良かったな」
良し、計画通りサラッと言えた。
父は嬉しそうにしている。
実際2人とも希望の職業につけて良かったと思っているのだろうが、それよりもマヒロのことを構い過ぎて俺に劣等感を与えさせない為の笑顔だというのは俺にも分かる。
「それじゃあ今日はお祝いだ!マヒロの好きなものを頼もうか」
そうして、その日は役所に其々の職業を報告しに行った。
職員さんは驚いたような顔で書類を通し、後日改めて連絡が行くと伝えられた。
家に帰ると、家族みんなでパーティーをした。
マヒロのお祝いだ。
全員が嬉しそうに笑っているこの日常が続けば良いのに……
そして数日後……
役所からなんか偉そうな人が来てマヒロのステータスの確認にきた。そりゃそうだな。確認しない訳ないか……
「それでは、マヒロさんのステータスボードを拝見させていただきます。ご存知でしょうが、職業の虚偽は重罪ですので……」
虚偽の報告をした自分の心が痛くなった。
それにしても……この役人、
明らかに信用していない口ぶりだ。
マヒロのような小娘が……とでも言わん顔で睨み付けている。
しかし、マヒロはそんな役人を気にも止めず笑顔でステータスボードを出した。
「なっ!まさか本当に……」
「ね?本当でしょう?おじさん」
職業の欄を確認して役人さんは大慌てだった。
そこに父さんが質問する。
「あの〜、うちの娘はどうなるんでしょうか?」
「え!ああ失礼……恐らくマヒロさんは一度王都に連れて行かれます、らそこで色々な検査を受けた後、先代聖女のコーユー様に指導していただき、免許皆伝となったら教会にて仕事をされるかと」
フム、問題無さそうだ。
「戦わされたりはしないのですよね?」
父は心配そうだ。こんな重大な役をまだ幼い娘がやるのだから無理は無いが。
「……いつか、魔王討伐の旅に出る時……その時までは安全かとー」
「なっ!ふざけるな!聖女は戦えない職業じゃないのか!?何故危険な戦場に送るんだ!」
父が本気で怒っている。
「いえ、聖女は確かに戦えませんが、その分回復力と支援力は途轍もないです。勇者一行の戦いにおいて必ず必要となります。お父さん、お気持ちはわかりますが落ち着いて下さい。マヒロさん……いえ、マヒロ様の御力は人類に必要なのです」
「……クッ!分かった。だが娘にもしもの事があれば……」
「承知しております」
深々と下げられた頭を見て、それ以上は何も言い返せなくなってしまった。
「それでは、1週間後に王城より馬車が到着致しますので、ご準備お願いします。失礼しました」
そう言うと役人さんは帰って行った。
「貴方……」
母は不安そうな顔をしている。
「そう……だな。うだうだ言っても仕方ない。勇者様達がマヒロを守ってくれると信じようじゃないか。よし!マヒロ、来週は王城へ行くから正装を買いに行こうか!ソラには冒険者装備を一式買ってやろう」
父も強がってはいるが不安なのは見て分かる。
だが、僕達平民が国や教会に逆らう事など出来るはずも無かったのだ……
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