転生したらハズレ属性で無双する
ゆる弥
第1話 どこ?
「あぁー。このフォルム、揚力の働きが良いんだよなぁ。大学行って好きなこと勉強出来るなんてサイコー」
この男は飛行機が好きすぎてなぜ飛行機は飛ぶのか。論文を色々と読み漁り、空気力学を趣味で勉強していた。
それが功を奏し、晴れて航空系の大学に進学することになったのだ。
今日はその入学の為の移動日だ。
「楽しみだなぁ。どんな事教えてくれるんだろう。論文にないこともやるんだよなぁ!」
この時既に論文を読み漁っていた男は教授並みの知識を蓄えていたのであった。
なにせ、試験に意地悪な問題で出題された空気力学の問題、研究者でないと分からないようなレベルの問題に百点の模範解答より、詳細な回答をしたのであった。
ルンルンで荷物を抱えて飛行機に乗りこむ。
いざ、離陸。
初めての浮遊感に身体が変かんじがする。
少したった頃だろうか、積乱雲に囲まれたのだった。
逃げ道がなく突入するしか無かった飛行機は大きく揺れ、雷に撃たれてジェットエンジンに直撃し、煙をあげる。
機内は騒がしくなり上からボンッと酸素マスクがとび出てきた。
それを急いでつけたあたりで大きな爆発が怒った。ジェットエンジンが粉々になって羽が折れた。
徐々に降下していく飛行機。
「あぁ。俺の人生は終わりか……でも、最後が飛行機ってのは幸せだったかもな……」
大きな爆発音と共に目の前が真っ暗になった。
◇◆◇
「おぉ。男か。お前にしてはよくやったな」
「はい。ありがとうございます」
ん?
なんで声が聞こえるんだ?
俺は死んだんじゃないのか?
目を開けると、知らない家であった。
えっ!?
どこ?
「しっかりと教育するようにな。後は、風の属性を継いでくれるのを祈るだけだな」
この人誰だよ偉そうに。
っていうか大きいな。
巨人族の家につかまったのか?
なんか気持ち身体が小さいような……
目にした自分の手はムチムチした赤ん坊の手であった。
「おんぎぁぁぁ!」
なんで?
なんで子供になってるの?
あぁ。
眠くなってきた……。
◇◆◇
5歳までは英才教育で数の数え方から計算、この世界の歴史等を学んだ。
この世界は三つの世界からできていて、この国は四属性の貴族が統治する国、フォース。世界の反対側には皇帝が支配する国、エンペラー。それらを包み込むように広がっているのが、自由国家フリーダムなのだ。
5歳の誕生日。
属性定着の儀式を行った。
結果は空気属性。
「空気の様な気配になるだけの使えない属性なんぞいらん! 国外追放しろ!」
「えっ?.........」
「えぇい! 問答無用! 空気属性は追放と決まっておる! 連れて行け!」
なんだよ藪から棒に。
はいはい出ていきますよ。
大人しく連れていかれることにした。
「クーヤ!」
それが俺の名前。
叫んだのは母親だったが、俺は特に悲しくもなんともない。きっとあっちもノリでやっているだけだろう。
一応育ててはくれたが、ほぼお手伝いさんが世話をしてくれていた。
そんな感情芽生えてはいないだろう。
言われるなりそのまま馬車に乗せられて馬を走らせる。
しばらく走ると止まった。
「おりろ」
下りると馬車は戻って行った。
「はぁ。まぁ清々したけどさ。どーするかなぁ。俺、なんにも出来ないんだよな」
森をウロウロしていると、木の実を見つけた。
「これ食べれんのかなぁ」
パクッと食べてみる。
「んー! これは美味しいわ」
しかし、それでお腹が満たされる訳はなく。
「あー。お腹すいたなぁ。暗くなってきたし寝床を探すかな」
少し歩き回るとポッカリと穴の空いた洞窟を見つけた。
その穴に入り丸まって寝る。
次の日は雨が降っていた。
その日は動かないことにしたのだが、まる二日まともに食べていない。
だんだん意識が薄れてきて、目の前が真っ暗になった。
◇◆◇
あぁ。
温かいなぁ。
パチッと目を開く。
知らない天井だ。
えっ? どこ?
「おっ! 目ェ覚めたかぁ?」
「あっ。ここは……?」
「あぁ。雨やどりしに洞窟に入ったら倒れてたからよぉ。家に連れてきたってわけよぉ」
「すみません。ありがとうございます」
「子供が気にすんな。なんであそこに一人でいた?」
「実は……捨てられまして……」
「訳ありか……」
その人は少し考えるように俯いた。
バッと顔を上げると。
「俺の弟子になるか?」
「弟子……ですか?」
「あぁ。こう見えてプラチナ級冒険者なんだ。ダンテっつうんだ。昔はパーティー組んでたが、今は一人だ。金はあるから気にすんな」
その申し出を受け少し考える。
俺は何にもできないし、助けて貰えるなら願ってもない事だ。
「……お願いします! 出来ることは何でもします!」
「おーし! 俺はちっと厳しいが逃げんなよ?」
「はい!」
「じゃあ、まずは、これ食え」
出されたのはスープとパンであった。
一口スープを飲むと優しい味で温かい。
パンを一口食べるとパターの香りが凄くする。
「美味しい」
「そうか? よかった。おかわりもあるからな」
「はい!」
ガツガツと食べてしまい二回おかわりしたのであった。
お腹いっぱいになったらまた眠気が襲ってきた。
瞼が重い。
「今日は寝ろ。また明日話そう」
「はぃ……」
その日は泥のように眠った。
◇◆◇
目を覚まし、ベッドから下りると部屋の全容が把握できた。
物が散乱している。
うん。汚いね。
この部屋を綺麗にしよう。
床のものを拾い整理し始める。
捨てるものと使いそうなものに分ける。
一時間かかっただろうか。
スッキリした。
部屋を出ると、リビングであったが……。
「ここも汚いんだ……」
ソファーにダンテさんが寝ている。
「ダンテさーん? 部屋片付けますよぉ?」
「……んー? んー」
起きる気配はない。
ゴミと酒瓶がチラホラ。
捨てよう。
せっせと片付けることにしたのであった。
拾ってもらった恩がある。
少しでも返していかないと。
ある程度片付けが終わると、朝食を適当に作り始めた。
キッチンの使い方は何となく屋敷にいた時に見ていたから分かる。
大気中の魔素を変換して火をつける装置のようなのだ。
ボウッと火をつけると卵と干し肉を焼いてベーコンエッグのようなものを作る。
転生前は自分でも料理をしてご飯を作っていたことがある。
慣れたものだ。
後ろでゴソゴソ音がする。
「おぉ? 飯作ってんのか? すまねーな」
「食べれますか?」
「おぉ。貰うぜ」
テーブルにパンとベーコンエッグをのせる。
この世界の主食はパンだ。
「美味そうじゃねぇか」
「いただきます」
手を合わせて習慣になった言葉を発する。
「なんだ? そりゃ?」
「えぇと、私達の国ではご飯を食べる時は食材と作ってくれた人にいただきますと祈るんです」
「ほぉ。初めて聞いたぜ。まぁ、いい事だな! いただくぜ!」
パクッと食べて頷いた。
「うん。うめぇ。お前これから家事担当な。俺はなぁ片付けるっつうのも出来ねぇし、スープしか基本作れねぇんだ」
「いいですよ。それも弟子の務めでしょうし」
「はっ! 五歳児が言うじゃねぇか。っつうかお前、ホントに五歳か?」
「はい。しかし、色々と英才教育を受けてきたのでこうなったんでしょう」
まぁ、ホントのところは前世の記憶があるからなんだけど、そこまでは言わなくても良いだろう。
「お前そういやぁ名前は?」
「クーヤ・ウィ……クーヤです」
「そうか。まぁ、追求はしねぇ。んー。今日からは……魔力の使い方を教える。分かんねぇんだろ?」
「はい。戦い方は……?」
「あぁ。身体を作るのに一年かける。食事はタンパク質中心だ。成長することに重点をおけ。基礎体力を付けるのは6歳になってからにするぞ」
「わかりました。魔法が使えるんですね!」
「あぁ。だれにでもこの世界の人間には魔力器官がある。そこを使えるようにするんだ」
「はい! 頑張ります!」
これからがクーヤの無双劇となる。
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