登場人物について


「たのも〜!!」


「おい! 今何時だと思ってるんだひいジジイ!! 朝の4時だぞ!」


「何言っておる! 若いもんは早起きせんかい!」


「そっちが起きるの早すぎるんだよ! 外真っ暗じゃねえかよ、もっと寝かせろや」


「売木の倅よ、何をそうかっかしておるのじゃ。たまの早起きぐらいよかろうに」


「朝の4時とか早起きの次元じゃねえだろ。4時に起こされちゃたまったもんじゃねえよ。あいも変わらず庭で叫びまくって、近所の噂になるだろーが!」


「朝早いと誰もいないから声がよく響いて気持ちが良いわい」


「ったく、とんでもねえジジイだ。んで、今日も何だ? 例の『ならなきゃ』に投稿した小説の件か?」


「そうじゃよ。アレからお前さんの意見に従い色々改訂したものの、未だ評価0…… まだまだ直さんといけない箇所はあるようじゃの」


「そりゃ前回は中身触れる前で終わったからな。多少直しただけじゃあんな作品評価も出来ねえだろ…… で、結局タイトルは直したのか?」


「もちろんじゃよ、『害虫駆除』改め徹夜で練りに練ったタイトルをつけておいたぞ!」


「老いてるクセに徹夜とか無茶してんじゃねえよ…… どれどれ…… 『害虫戦記 〜1匹残らずブチ殺す〜』か……まーた随分と殺意が高そうなタイトルになったな」


「どうじゃ? これでお前さんも腱鞘炎になるまでクリック連打間違いなしじゃろ!」


「そんなにクリックしたらマウスぶっ壊れるだろーが。まぁ、多少マシになったんじゃねえか? 前回の『害虫駆除』がヒドすぎただけでこのタイトルもまぁまぁ酷えがな」


「あと、全体的に文字数の調節をしたぞ! まぁ、その弊害か話数は3倍に膨れ上がったがの」


「今までどんだけ1話に文字数詰めてたんだって話だぞ。前回が1話11万文字っていうマイナスラインから比べればこれもマシになったとしかいえねえがな」


「次いでに色々整理して登場人物紹介とか世界観紹介とか、各種資料閲覧の話も盛り込んだのじゃ」


「おお、ひいジジイにしては良いことやったな。登場人物紹介とかわかりやすくてウケいいんじゃねえか? そういう凝った世界観好きな読者もいそうだしな、どれどれ……」


「この作成には随分と時間を要したぞ。けれどその分ワシの満足するものに仕上がったわい」


「ん? 登場人物紹介が①〜㊿……?? 登場人物紹介だけで50話費やしてるとか…… なんか多くねえか?」


「そりゃ3000万文字の壮大かつ雄大なストーリーじゃからの」


「は? 1話1人かと思ったらめちゃくちゃいるじゃねえかっ! なんだこの数!!」


「登場人物は物語じゃないから例に漏れず書き切れるまで書いておるのじゃ。一応登場人物は全員で1000人越すぞ」


「そんなに登場人物いらねえだろ…… とりあえず一番上は当たり前だが主人公か、名前は『売木 ファイティングぴょん吉』? は? なんだこのけったいな名前は??」


「それが本作『害虫戦記 〜1匹残らずブチ殺す〜』の主人公、『売木 ファイティングぴょん吉』じゃよ。どうじゃこのコリに凝った設定は、別紙住民票もしっかりと参照できるようになっとるぞ」


「設定じゃねえよ、名前だよ。なんだよこの『売木 ファイティングぴょん吉』とかワケわかんねえ名前は!? 特に『ファイティング』とかいう部分! 外人かハーフか?」


「ちゃんと設定読んでおるかの? 売木の倅よ。そこの別紙原戸籍を参照してみい、出生は『東京都』の生粋の日本国民となっておるじゃろうが」


「ミドルネームじゃねえんだったらなんだよこの『ファイティングぴょん吉』って名前は! プロレスラーでもこんな名前の奴いねえぞ」


「若いもんはこういうスタイリッシュな名前が好きじゃろう。それにならってかっちょいい名前をつけたのじゃ」


「ブチ抜きでダセぇぞ。こんな変な名前にすんなや、普通の名前にしろよ! 明らかに違和感あるじゃねえかっ!」


「普通の名前ってそんなの面白みもインパクトもなくなるじゃろうが。主人公の名前はインパクト第一! そこらの雑草みたいな名前はつけられんわい、読者に覚えてもらえないじゃろうが」


「ファンタジーの世界でもいねえよこんな名前。まして日本という国だぞ、物語を展開するのに絶対苦しくなるだろうがっ! こんな名前付けられた主人公の気持ち考えたことあるのかひいジジイ! 変なところでツッコミどころ増やすなや……」


「そうか…… かっこいいと思ったのに……」


「あと苗字! これは俺個人的な意見に他ならねえが『売木』っていう俺達の苗字を使うな! なんか…… 嫌だぞ」


「どうしてじゃ? ワシやお前さんと同じ苗字だからお前さんは絶対気に入ってくれるかと思っておったのに……」


「気に入らねーよ! こんな小説の主人公に付けやがって…… 俺ら一族の恥になるじゃねえか…… 他の親族にバレたら絶対俺と同じこと言われるから今のうちに変えておけよ」


「しゃーないのう」


「んで、次の登場人物は……『佐藤 武』…… おい、ちゃんと名前が付けられるじゃねえか。あのファイティングなんとかもこれぐらいで落ち着かせてくれれば問題ねえのに…… コイツが主人公の親友的な関係か?」


「違うぞ、それは主人公が育てているトマトの名前じゃよ」


「は!? トマト!? この小説植物に名前が付いてるんか!?」


「そりゃそうじゃよ。植物一つ一つにちゃぁんと名前を付けてあげないとかわいそうじゃろうが」


「お、おぉ…… 植物に名づけるなんて別に悪い話じゃねえが…… んじゃあこの『エリザベス』という人物は?」


「それは主人公の家の隣で飼われている猫の名前じゃよ」


「『木下 太郎』は?」


「確かそれは主人公が育ていているパンジーの名前じゃよ」


「んじゃその下、『佐田 緑』は?」


「主人公の家に時折立ち寄る雀の名前じゃよ」


「この『三田 晴香』は?」


「それは主人公の庭で泳ぐ金魚の名前じゃよ」


「はーあ!? この作品主人公以外人間いねえのか!?」


「現代の日本が舞台になっているからそんなワケないじゃろうが。しかし…… お前さんが今開いている『登場人物紹介①』の所には主人公以外人間は描いた覚えがなかったような……」


「道理で、道理でバカみてえに登場人物の数が多いと思ったら、そういうことだったんかよ! 分かりにくいじゃねえか、こんな植物や動物1匹1匹、カエルや蛇まで名付けやがって!!」


「自然を愛する主人公、それこそが読者が求める穏やかな青年のイメージなのじゃ」


「いらねえよ、こんな数、こんな名前! どんだけキャラいるんだよ! しかも日本人らしい名前をつけやがって、紛らわしすぎて話の途中でこんがらがるだろーが! 理解できる奴お前しかいねえよ」


「そうじゃったか…… うーん、むつかしいのう、せっかくキャラごとに一生懸命設定を練ったのに……」


「害虫駆除する男が自然を愛するって設定も小説としてどうかと思うぞ」


「うーむ、前途は多難のようじゃ。またも改訂作業に取り掛かるかの…… しっかし、主人公の名前を変えるとなると、これは相当大変な作業になりそうじゃ」


「もうその小説諦めた方がいいんじゃねえか……?」


「いや、ワシは諦めんぞ、評価ポイントを獲得するその日まで、わしは絶対に諦めん! またの、売木の倅よ。また出直してくるぞ!」


「おぉ……」



 ・

 ・

 ・



「また中身触れる前に終わっちまったな」




 売木のアドバイス


 ・スタイリッシュすぎる名前はよした方がいい。その世界観にあった名前をつけておかねえとその主人公に負い目を負わせる可能性があるかもしれねえ。そんな話にするならまだしも狙ってないならやめておいた方がいいぞ。


 ・キャラ紹介の欄に『別紙住民票参照』とかやめてくれ。一生懸命住民票を再現したところで多分誰も読まねえぞ。住民票以外で語れるキャラの魅力を作っておこう。

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