第5話 始まり

「俺を強くしてください。」






口から出たその脈絡のない言葉に後悔する。


それが俺の願望だったとしても、今きれる手札の中では一番の悪手だ。




「わかった。」




案の定即答される。それもそうだこの男は突然変異種の調査に来ている。あの魔物以上の魔物と常日頃戦っているだろう。あの魔物に殺されかけた俺なんて囮にもならない。邪魔でしかないのだ。聖人君子でも断るかもしれない。




でも俺は引くことができない。




「俺にできる事なら何でもします。人を殺せと言われれば殺します。腕を差し出せと言われたら差し出します。もうあの時のように理不尽に虐げられる思いはしたくないんです。どうか俺に一人でもこの世界で生き抜ける強さを教えてください。」




「わかったと言っている!」






「え?」




「必死になるのは構わんが人の話くらい聞け、さっきから良いと言っているのに、腕を差し出せるだのなんだの聞きたくもないことベラベラとしゃべりやがって。それに自惚れるなよお前ができることなんて大抵の奴ができるし、お前の命など対して価値がない。」




もしかして最初からOKだったのか…正直受けてもらえる道理がなかったから断られたと思った.




価値がない、確かにこの人の言うとおりだ。自分を守る力もなければ、何か特出した能力があるわけじゃない。探せばどこにでもいるような奴だ。




だからこそ俺は変わらなくてはいけない。例えどんなことをしようと。




「私の名前はアリウス!価値がないのは重々承知ですが、俺はさっきも言った通り強くなれるならどんなことでもします!いつか貴方に近づくため今日からよろしくお願いします!」




「俺の名はバレット=エクストール、バレットでいい。それと言っておくが、俺と来るってことは今までのような生活はできないと思え。今回の調査もそうだが、俺は普段から大陸を点々としていて、どこかに拠点を置いていたり、必要以上に町に入ることはない。それに、死ぬ方が楽と思うかもしれないがそれでも俺と来るか?」




無論俺の返答は決まっている。




「はい!!」












【バレット視点】




―俺を強くしてください!






この目を知っている




あの時と同じだ




当時の仲間に裏切られ、家族に捨てられ、絶望の淵にいた時のあいつと




俺は、故郷を離れずっと魔物と戦っていた。




自分より遥か巨大な魔物も殺した、ある町で厄災と恐れられた魔物とも戦った。




周りからはS級冒険者と言われるようになった。




そんな時だ、あいつと出会ったのは




あいつも強さを求めていた




俺は渋々同行を許可した 




気づいたら何年もたっていた。




あいつも以前とは比べ物にならないくらい強くなった。




俺とあいつは疫病に悩まされているという村に行った。






疫病の原因はある魔物が原因だった




その魔物と三日三晩戦った




その結果俺は左手を失い




あいつは死んだ






俺はそれから冒険者をやめた




数年たったある日大陸を点々としていた俺に、どこから嗅ぎ付けたかわからないがギルドからの依頼がきた




魔物の突然変異




ここ最近目撃が増えているとのことだ




あの時対峙した魔物のは過去に報告になかった魔物だった




もしかしたらあの時の原因もわかるかもしれない




そう思いこの依頼を受け、こいつと出会った




似ている




あの時のあいつと、守れなかったあいつと






だからかもしれない、こいつの願いを聞いたのは




救えなかったあいつへの罪滅ぼし、俺のただの自己満足




それでもこいつを強くしよう




俺を超えられるように


































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