告白を

 ぽこさ〜ん、おまたせしましたぁ。さあさあ行きましょうかぁ。

 んっ、兄貴いるかって? うんまぁ、いるはいますけど、まだ寝ちゃってますよたぶん。あ、いえいえ夜勤明けとかではなく、キラーでチェイスがどうとか、デモやらゴルゴンやらわたしにはちょっとよくわからないこと不気味に呟いてましたけど。またゲームなんだろうなぁ。はい? 起きてたらちょっとだけ話してきていいかって、そりゃ別にわたしに遠慮することはないですよぅ。なんなら、わたしがたたき起――あぁ、大丈夫ですか。では、わたし助手席に先に乗っちゃってますね。

 鍵は、おっととほい、我ながらナイスキャ〜ッチ。

 はいは〜い、いってらっしゃ~い。





 お、結構早かったですねぇ。そんな全然待ってないですよ。起きてました? おお、あの状態からよく起きれたなぁ。ところで兄貴とはなにを?

 え〜、秘密ひみぃつぅ〜?

 やれやれ、なんだか男二人で怪しいですねぇ。わたしが腐女子だったら夢腐むふッ、な妄想がすこぶるところでしたよぅ。いひひぃ。

 ほいほい、それではいよいよ出発しますか、じゃあシートベルトをしっかり締めまして、しゅっぱ〜つッ。


 しっかし、新車でお出掛けだなんて今日は気合入ってますねぇ。ぇ、最近までペーパードライバーだったからほぼ新車に見えるだけだよって、ちょ〜ッ怖いこと言わないでくださいよもうッ。まぁしかし、ぽこさんは無茶な事はしない人だと言うのはもうわかりきっちゃってますから、安全運転で行くと信じてますよう。は〜い、わたしの信頼を裏切らないように頑張ってくだ――え、髪切ったのわかっちゃいました? えへへ~、ちょっと友達同士の流行りに乗っかってミディアムボブにしてみましたぁ。ほう、ミディアムヘア大好き? んん〜、別にぽこさんのためにしたわけじゃないですけどぅ、喜んでくれたなら、まぁ、ありがとうございま〜す。

 いや、ありがとうございますてなんでしょうねぇ。お礼言う事かよ、変なのぅ。へ、逆にありがとう。はぁぃ、どういたしましてぇ、いやぁ照れんなぁ、なんかアッツぅ、まぁだカーエアコンが効いてないみたいですねぇ。

 

 お、その服もいいねって、さすがぽこさんはわかってますねぇ。兄貴はゴミみたいな眼でダセェなんて言うんですからぁ失礼な話ですよぅ。あ、このTシャツはですねこの前に話してたアニメのプリント柄のやつをセールで見つけて、そうそう、こっちのシアーシャツはフリマアプリで買ったんですよぅ。見ため涼しくてちょうどいいかなぁて……はい、ちょっと透け透けで照れる。

 ちょぉっ、別に直に肌着にしてるわけじゃないんだから照れないでくださいよぅッ。

 なんか、こっちまで恥ずくなっちゃうじゃないですかぁ。

 あぁ、ヤメヤメ〜、音楽でも聴いて雰囲気リセットしましょうそうしましょう。ふふん、見せてもらいましょうかぁ、ぽこさんの選曲リストのセンスとやらを。





 ん、あれれ? ぽこさん、高速道路入るんですか?

 今日は目的地を決めないドライブだって、言ってはいましたけど、結構遠出をする感じ?

 いや、困るとかそんなのはないですけどぅ……ただちょっと、ビックリしたというか、近場じゃないんだって、ただそれだけです、うん。






 あのぅ、ぽこさぁん。高速道路に入ってからなんか、だんまりなんですけどそのぅ、あぁ、高速道路だから運転に集中しないと危ないですもんね、そういうこ――はい、今日はドライブに誘ったて、なんで突然そんなこと……え、この前の店長との会話聞いちゃってたんですかッ。あれはその、店長とそんな話するのはちょっと恥ずくてはぐらかしたというか、わ、わたしだってラノベ主人公じゃあるまいしそんな鈍感でもないですよちゃんと今までのお出掛けだってデートて認識は……ありますよ?

 

 ぇ、鈍感じゃないならこっちのアプローチが本気だってちゃんと気づいてるんだよねって、それはそんな、んもぅ、こんな逃げられない場所でそんなこと言われても、あぁ、誘導尋問だこれぇ、ずるい、ずぅるいぃ〜っ。

 そうだよずるいよって、開き直っちゃうんですかっ。もぅ、そんなこと言うならその好き好きな感情てやつに遠慮なく自惚れますけど、なんでわたしなんかがいいんですかっ。あんまり言いたくないけど、わたしの顔、兄貴と双子レベルでそっくりじゃないですか。付き合うてなって、この顔とキスとかできますか。

 

 ここにいるのは忍ちゃんだからできるよって、ちょ〜ちょ〜ちょうッ。そんなこっ恥ずかしいこと密室で言わないでくださいよ顔が熱くて死んじゃいますよこれっ。


 え、もしわたしがぽこさんのこと嫌だったらきっぱりと諦めるて、ちょっとなに急にそんなひどい事を言ってるんですかっ。

 そんな簡単に諦めるんならわたしのことなんか好きになんてならないでくださいよっ。

 は、なに横顔驚かせてるんですかッ。はあッ、わたしがいつぽこさんのこと嫌いだなんて言いましたかっ。好きですよわたしだって、好きじゃなかったらこんなホイホイとドライブに着いてきませんって。

 あ〜も〜っ、なんでぽこさんのほうが動揺してんですかっ。完全にフラれる事を覚悟で誘ってたぁ。あなたは〜、優しいのかチャラいのかヘタレなのかぁ、よくわかんないなぁもう。


 よぅし、わかりました。何処かわかんないけど次で高速降りちゃいましょう。わたしの気持ちをハッキリっと、あなたにぶつけてやりますからッ。そんなに欲しいなら全部くれてやるッ。覚悟してくださいようこのヤロウ。






 なんか、都合よく誰もいない海辺に着きましたねぇ。二人きりで話すならちょうどいいのかもですねぇ。よし、車はどっか適当に停めて砂浜の方に行きましょうか。路駐はよくないて、いや、そりゃそうですけど、しまんないなぁもう。じゃあ駐車スペースのあるところ探してから行きましょう。





 うわあっ、結構波が凄いですよぽこさんっ。靴脱いで入っちゃおっかなて、あぁ〜、ストラップサンダル履いてきちゃったの失敗だったかなぁ。脱ぐのメンドクサ〜。え、なにしにきたんだっけて、ちょ〜っ、忘れてませんて、ちょっと童心に帰っただけですぅ。

 おほん、それではここからは真面目モードで。


 あのですね、わたしがぽこさんの好意を避け続けてた理由は、その、兄貴の友達だからです。は、ブラコンが理由だったのて、違いますよわたしはブラコンじゃありません勘違いしないでください。兄貴の事なんて好きじゃありませんッ。て、あぁ、話が逸れていく。これだからダメなんですよぅ。はい、リスタートッ!



 わたし、ブラコンでも無いし好きでもないんですけど、兄貴とは血の繋がった兄妹で、家で一緒に暮らす家族じゃないですか。だから、ぽこさんとお付き合いとかしたら、兄貴と気まずくなるって、それだけの理由ですぽこさんのわかりやすい好意アプローチを避けてたのは……本当にそれだけの理由なのて、そうですよぅ?

 別にそんなドラマチックな理由なんてありませんよぅ。わたし、ドラマとかアニメのヒロインてわけでも無いですもん。

 なんですかうずくまっちゃって、もしやお腹痛いんですかっ……は? 兄貴に宣言したのが恥ずいて、ちょっとなに言っちゃたんですか――はっ! ちょ〜ちょ〜ちょうッ!? なにを宣言しちゃってんですか、ああぁ~ぁぁアッ、今日お家帰んないよもう。







 ごめんて、いやいいですってもう、変に覚悟完了させちゃったのて、そもそもわたしがしょうもなく逃げてたせいですからねぇ。

 よっし、ではぽこさんそろそろ本気でわたしの気持ちあげますから真剣に聞いていただきたいッ。


 ぽこさん、わたし、あなたのこと好きです。凄く、すごく好きです。最初は本当に兄貴の友達てだけ、からかいがいのある常連さんてだけ、優しい年上のお兄さんなだけ、わたしのこと女の子として見てくれて何度も好きって気持ちを、わたしにくれた、初めての男の人。

 ホント、ただ、それだけ。


 うん、いつ好きになったかなんてわかんないなぁ。一年間いっぱい過ごした楽しい時間がありすぎて、最初に好きて自覚した気持ち想いなんて忘れちゃった。だって、顔を合わせるたびに新しい好きが上書きしてくれるんだもん。この波みたいな感じかな。うんそうだ、わたしの気持ちは波なんですよ。引いて下がってまた上がる波。その先にある海が想い。地平に重なる海も空もあそこに見える太陽も無限に広がるぽこさんへの好き、大好きが新しく今も溢れちゃいそう。アハハ、なんか恥ずいこと言ってるけど、口に出したら案外止まらないんだ。恥ずいよりも大好きて世界中に叫んじゃいたいッ。ぽこさん、わたしのこと好きてどれくらい……うん、わたしはそれ以上好きだって言いたい。ぽこさんが恥ずかしくて死にそうて言っちゃうくらい、大好きって!



 ねぇぽこさん、車の中で言ったこと、できます。キスを、わたしに……できます?

 じゃ、目を瞑ってるから、してみせて、そう……ん――ッッ〜――ィッッ、たはあっ!?


 ァハハァ、歯が、ぶつかっちゃいましたねえっ、はははっ、なんかしまらないなぁこういうのもわたし達らしいんですかねぇ。けっこう痛いもんなんだなぁ――ぁ……ちょっとぅ、いきなり抱きしめるのは反則が過ぎすますよぅ〜、うり、抱きしめ返し、ギュッと……な。

 ぽこさんの身体て大きかったんですね。わたしの身体すっぽり包んじゃうんだもん。

 ん、もう一度ギュ〜ッッて、エヘヘへ、背中に手を回すの手いっぱい……顔、見上げると凄く近いですね。


 ぽこさん、今度はゆっくり、わたし達のペースでキス、しようよ。どこにも逃げないし、逃げられもしないから、ね?




 うん――……ン――。




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