第21話
「おはようございます、霧姫さん」
「おはようございます、赤塚君」
今日は、霧姫さんからのお誘いで一緒に出掛けることになっているひだ。
今まで女の子から休日に遊ぼうなんて、絵美里にしか言われたことがなかったから、緊張する。
絵美里は、昔から一緒だったから今はもう慣れてしまったから緊張なんてしないけれど。
「今日、霧姫さんはどこか行きたいところありますか?なければ僕が色々考えてきたんですけれど」
「........行きたいところがあるわ。あなたと一緒に」
霧姫さんの声は何時になく真剣だったがどこか怯えを含んだような声になっているのはどうしてだろうか?
まさか、また誰かにストーカーされていて僕に買い物を付き合ってほしいっていう話だったのか?
........はぁ、僕はなんて愚かなんだ。少し考えればわかる話じゃないか。霧姫さんが少しでも僕に好意を持ってくれているだなんて考えたんだ。
僕に向けられているのは好意じゃなくて信頼なんだ。それを裏切ってはいけない。
「分かりました、では行きましょう」
「........はい」
霧姫さんについていき電車に乗る。
映画館とか、洋服店に行くのかなと思ったけれど違うようで都心から離れていく。
どこに向かっているのだろうとも思ったけれど、霧姫さんはいつになく真剣な顔をしているから聞くこともできない。
電車から降りて、バスへと乗って進むこと三十分。
途中で花を買って、ついた場所はお墓の前だった。
「あの、霧姫さん。ここは........」
「赤塚君。ここは........私の友達のお墓」
霧姫さんは、何かに耐えるように俯いていたが、覚悟を決めたのか僕の目を真剣に見る。
「赤塚君、私の過去を聞いてくれないかしら」
「.........」
****
私は、嫌われても良いという覚悟でこの場に来たけれどやはり躊躇ってしまうのは許してほしい。
急にこの場に連れてこられた赤塚君は困惑しているでしょうね。
この行動は私の自己満足でしかない。
ただ、私の思いを君に伝えてこの関係を終わらせたいだけ。このまま一生、あなたに未練を残したまま死ぬのは嫌だから伝えるだけ。それくらいの我が儘はこれから先恋なんてしない私の望みだから聞いてほしい。
あなたは多分.........絵美里さんのことが好きでしょうから。それに絵美里さんもあなたのことを好きだから両思いで素晴らしいカップルだと思うわ。
心の底から悔しいし、やるせない思いもあるけれど。
「赤塚君、私の過去を聞いてくれないかしら」
「.........」
これは、私の中学校の時の話。
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