第29話 魔法の根源
頭脳労働を丸投げかよ。まあ使徒である以上、もともとゲオルナッヘは俺が倒すべきなんだが。
「そんなこと言っても、二人とも第二魔法を使えないいまゲオルナッヘに打ち勝つには俺が第二魔法を発現するしかないぞ」
「だったらいますぐ第二魔法起源に至りなさい、あんたならできるはずよ。長くは保たないから巻きで頼むわ」
「そんなこと言ったって、そう簡単に第二魔法起源に至れば誰も苦労しないだろうが」
「おやおや、いつまでもこのわたしが待ってあげると思いましたか」
ゲオルナッヘが【ダーク・ボール】を放ったことで、アリスたちはすぐに動き回りながら戦闘状態になる。二人がかりというだけあって【暗き闇より出づる者】による死角からの攻撃にも少しの時間なら持ちこたえられそうだ。
なら俺がしなければいけないのは第二魔法起源に至ることになる。
たしか第二魔法起源に至る条件は、自らの魔法の根源を突き詰めること。魔法の根源とは自分の欲求のこと。自分が何かしたいという根源を突き詰めて形にしていくことで第二魔法起源に至ることができるって、アストレアが言っていたな。
俺の根源って言われても、やりたいことや欲求が多すぎて本当になにかわからないぞ。
苦悩した挙句、俺が導き出した結論は――
「なあエクセリオン、俺の魔法の根源ってなんだと思う?」
「マスター、それを俺に訊くのかよ……」
「なに言ってんだよ。自分で考えてわからないことなら、俺のことを一番よく知るお前に訊くしかないじゃないか。大賢者ならなにか知ってそうだしな」
だって多すぎてわかんないんだもん。仕方ないじゃないか。
とりあえずダメもとで訊いてみたのだが、その結果思いも寄らぬ答えが返ってくることになる。
「あのなあ、マスターの魔法の根源なんて――おっぱいを揉むことに決まってんだろ」
「えっ!?」
うわー、こんな状況でなにを言ってるんだこいつは?
エクセリオン先生そりゃないわ。目の前でアリスたちが必死で戦っているのにこういうとき悪ふざけするのはよくないよ。
てっきり俺は冗談かと思ったのだが、エクセリオンは本気(マジ)だった。
「『えっ!?』じゃねーよ。むしろいったいなにを驚いたんだ。マスターが煩悩魔法っていう天啓を得たのは死ぬ前に女の子のおっぱいを触りたかったからなんだろ。なら、マスターの魔法の根源は女の胸を触ることじゃねえか」
「……………………」
「……………………」
「…………マジ?」
「…………ああ」
気まずげにエクセリオンと見つめ合い、居心地の悪さに顔を歪めながら尋ねた俺に、エクセリオンが頷いた。
つまり、
「な、なんだと――――――――――――――――――――っ!? アレクシア様じゃなくてもよかったのかっ!?」
掛け値なしの名探偵でも絶対に見落としていたであろう衝撃の事実が発覚したことで、俺は絶叫していた。
この星の知的生命体でこの重大な事実に気づけた者はエクセリオンしかいないはずだ。
「そ、そんなことに気づくなんてっ!? エクセリオン、お前はやっぱり天才かっ!?」
「マスターが煩悩まみれで気づけなかっただけだろうがっ!? あと俺は大賢者で名剣だから天才以上だっ!?」
さすがアレクシア様が派遣してくれたサポーターだ。これなら手の打ちようは――あるっ!
俺は走り回りながら攻性魔法に大声で叫ぶ。
「アリス、第二魔法の発現の仕方がわかったっ!」
「そう、だったらいますぐに発現しなさい」
「いや、わかったんだが俺一人じゃ第二魔法起源に至れないんだ。お前の協力が必要だ。いきなりで悪いんだが頼めるか?」
「あたしにできることならなんでもしてやるわよ。なにをしてほしいか早く言いなさい」
「ア、アリスの――お、おっぱいを揉ませてくれっ!」
「えっ、あ、あんたいまなんて言ったの?」
「ア、アリスのおっぱいを揉ませてくれって言ったんだっ!?」
「こ、この状況でいったいなにを考えているのよっ!? いまは悪ふざけしているときじゃないのよっ!?」
「必要だから言ったに決まってるだろ。そうでなけなりゃ誰がこんなに恥ずかしいことで声を大にして頼むかっ!?」
「エクセリオン、シモノの言ってることはその……ほ、本当なのっ!?」
「ああ、マスターの言ってることは本当だぜ。できることならなんでもしてくれるんだろ、ならとっととマスターのところに向かってくれ」
「そ、そんな……。じょ、冗談でしょ……」
思考停止状態に陥ったか、アリスは戦闘中だというのに顔を真っ赤にして俯いた。頭からぷしゅーと蒸気が上がっている。
急に動きが停止したアリスが狙われ、それを庇うようにファナさんが駆けつけてくれた。
「さっきから人族はなに訳のわからないことを言っているのよっ!? ふざけていないで真面目に戦いなさいっ!」
そりゃそうだ。俺も事情を知らない第三者の立場だったらそう思う。
でも、だ。
幸か不幸か、これは本当の話なんだ。マジで俺がアリスのおっぱいを揉めるかどうかに世界の存亡が関わっているんだ。
周りにすれば笑い話かもしれないが当事者は別だ。だってそうだろ、かりにこの場を凌げだとしても絶対にその後気まずくなるだろ。だからこの後俺はアリスになんて声をかければいいかわからなかったんだ。
「おいおいそんな気に病むなよ。アリス嬢は昨日の晩『あんたが困っていたらあたしが助けてあげてもいいわよ』って言ってたじゃねえか」
沈黙した俺の代わりに、エクセリオンがアリスの説得してくれるようだ。
「うっ!? そ、それは、あ、あくまでクラス代表試合に限定のことで……」
「ならさっき『あたしにできることならなんでもしてやるわよ』って言ったじゃねえか」
「そ、そっちは……こ、言葉の綾っていうやつで……」
「でもなあアリス嬢ちゃんだって勝つためなら手段を選ばない主義だから、ファナ嬢ちゃんを裸にひん剥く作戦をマスターに提案したんだろ。ならクラス代表試合より大事な学院の危機に打ち勝つために今度は自分が貢献する。道理が通っているじゃねえか」
「う、うっさい。それとこれとは話が――」
「アリスさん」
「ひぃぃぃぃぃっ!?」
淑女の如き微笑を浮かべながらも、堪えきれない殺気が溢れでているファナさんを見て、珍しいことにいつも強気なアリスが脅えていた。
「この場は微力ながらわたくしが短時間支えてみせますわ。遠慮せずにあちらに行っていらして」
「う、うん」
完全に迫力負けしたアリスが大急ぎで後退してくる。
ファナさん一人でゲオルナッヘの相手は荷が重すぎる。ファナさんのためにもここは急いで第二魔法起源に至らないとな。
ここで確実にアリスのおっぱいを揉む……ッ!
不退転の覚悟とともに俺は、突然の事態にあたふたしているアリスに向き合う。
「ね、ねえ。あ、あんたの魔法の条件が特別だってことは知ってるけど、本当に、あたしのその……お、おっぱいじゃなきゃダメなのっ!?」
「おっぱいじゃなきゃダメなのは事実だ。べつにアリスのおっぱいじゃなくてもいいとは思うけど」
「待ちなさいよ、ならあそこで戦っているファナをわたしの代わりに――」
「おいおい、事情を知らないファナ嬢ちゃんがそう簡単に胸を貸してくれるわけないだろ。そんなことしているうちにこっちが全滅したらどうするつもりだよ」
「で、でも――」
「アリス、いい加減覚悟を決めてくれ。これはみんなの命が関わっていることなんだ。それくらいのことはお前だってわかるだろうが」
ちっくしょ―――――――っ!? こんな格好いい台詞、ここは俺に任せて先に行け! 的な状況で使いたかったっ!?
「わ、わかったわよっ!? ――ほら、シモノの好きなように揉みなさいっ!?」
覚悟を決めたアリスが俺に胸を突きだしてくる。
ぽよんっ! とした二つのふくらみが俺の前の前にあるんだ。誰もが迷うことなく俺は胸を揉むと考えるだろう。しかし、不幸なことに俺は童貞だったんだ。
「ちょっと待てエクセリオン、女の子のおっぱいってどうやって揉めばいいんだっ!?」
「俺が知るかよっ!? マスターのしたいようにすりゃいいだろっ!」
「したいようにしろって言われても、おっぱいなんて揉んだことがないんだよ~~~~~~~~~~~~~~っ!?」
「この童貞っ!? ヘタレがっ!?」
ヘタレたっていいじゃないか、だって童貞だもん。つーか世界の存亡が関わる大事なことだぞ、義務教育に盛り込んで保健体育の教科書に揉み方について記載しておいてくれよっ!?
アリスの胸をどうやって揉むか、ああでもないこうでもない、と俺が苦悩していると、
「まどろっこしいわね。こんなのはこうすりゃいいのよ」
アリスが俺の両手首を掴んで、そのまま自分の胸に押し当てた。
その直後、俺は宇宙創成の真理を悟ったような気になった。この世界の開闢以来、人々が絶えず営みを育んできた先に、俺という人間が存在する。そう、俺の煩悩というものは人類の創造主であり神であるアレクシア様が人々に与えたもうた壮大な命題(テーゼ)なのだ。
なんだかスケールの大きい悟りを開いてしまった俺の中から、莫大な魔力が沸き起こってくる。
これならイケる!
「彼方より来たれ、偉大なる英雄よ。その武勇を以って人間の強さをここに示せ……!」
身から沸き上がってきた発動鍵を唱えると、俺の中に生まれた莫大な魔力が一気に昇華していく。
その直後、俺の眼前には深紅の全身甲冑の騎士が降臨した。
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