④-9
気が付くと白亜の空間にいた。視界が不明瞭で頭が重い。何かを捉えようとしても何もないということだけが分かる、不思議な世界だった。思考回路に靄がかかったように、頭が上手く働かない。ここはなんだ。幻か、現実か――
背後で聞き苦しい呻き声が聞こえた。そちらに目をやると、絨毯のように一面にびっしりと、蛟の焼死体が重なり合っていた。骸になりきれていない個体がギィギィと唸り身悶えている。彦一は笑った。必死に身を捩じらせ炎を払おうとする姿がひどく滑稽だ。阿呆が。俺の炎を消せると思うな。
急にすとんと、状況が飲み込めたような気がした。そうか、この世界が白いのは俺が全て焼き払ったせいだ。あの時と同じだ。静かで清潔で美しい。彦一は辺りをぐるりと見回して、降り積もる灰を満足そうに見つめた。ああ愉快だ。全部燃えて灰になれ。
彦一は仰向けになって寝転んだ。いつからここにいるのか、いつまでここにいればいいのか、何も分からないまま、彼は再び目を閉じた。
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