第141話 面白い兄妹

 早速何か見つけてしまった。


 その余りの呆気なさに俺とサラはポカンとしてしまう。

 

 しかし俺たちの事情など知らない兄妹はそんな俺たちの反応を訝しんでいる。


「どうしたんだ? 知り合いか何かか?」


「えっと……」


 こう言う時って何で言えばいいんだろうか。

 

 サラと同じ分体なら姉妹になるのか?


 まぁまだ本当に分体なのかすら分からないんだが。


 俺が返答に迷っていると、サラが代わりに口を開いた。


「……あの子は私の姉」


 俺はサラの顔を思わず見てしまう。


 サラは俺にしか分からないように、ニヤッと笑う。


 どうやら適当に考えたようだ。

 

 まぁ分かるんならもっと早く会ってるか。


 しかしその兄妹はサラの顔をじっと見た後、何処か納得したような表情になった。


「なるほどなぁ。だから顔が似てるのか」


「確かに。もう他人の空似って次元じゃないくらい似てるもんねー」


「……ん。あれと私は双子」


「へぇー! それは驚いた! でもそれならそこまで似てるのも納得だ!」

 

「……久しぶりに会う。楽しみ……」


「おう、俺たちも彼女を追ってここまで来たんだぜ! 彼女の踊りは天下一品よ!」


「女の私でも見惚れちゃうくらい綺麗だったわ」


「ん、私と一緒で綺麗」


「がははは! 確かにお嬢ちゃんもめちゃくちゃ可愛いな!」


「そうね。できればぎゅっとしたいわ。してもいいかしら?」


 妹さんが鼻息荒くサラに聞く。


 …………もしかしたらこの人、百合大好きな人かもしれない。


「ん、いい」


 あっさりと頷くサラ。


 その瞬間にサラに抱きつく妹さん。


 お兄さんは苦笑している。


 そして俺は困惑が頭を埋め尽くしていた。


 と言うか全く話についていけないんだが?


 俺が1人あたふたしていると、妹さんにぎゅっとされていたサラが言う。


「…………多分分体で合っている。会えばちゃんと分かる」


「そ、そうか」


 俺が困惑しているのはそこではないんだが、まぁいいか。


 サラは別に嫌がっていないし。


 俺がそんな事を思っていると、妹さんが聞いて来た。


「そう言えばイケメン君と美少女ちゃんの名前は? 見た感じ私達よりも年下のようだけど……。それに学園は? 因みに私の名前がユイで、このブサメンの愚兄がバンね」


「おい、ブサメンは余計だ愚妹が。確かに自分でも顔はあまり整ってないとは思うけどさ……そう言うお前は顔だけ整ってる性格悪女だよな」


「兄さんは黙ってて。私は2人に話しかけてるの!」


「……はいはい」


 …………何かめちゃくちゃ面白い人達だな。


 それにいい人そうだし。


「俺はソラと言います。そして彼女がサラと言って、俺たちはつい数日前に学園を中退しました」


 俺がそう言うと、2人とも驚いたようで目を見開いていた。


「え、中退って……」


「あ、俺達は別に学園を追放されたとかじゃないですよ? これでも学園一強かったんで」


「学園一!? 嘘じゃなければそれは凄いわね……。それでどうしてやめたの?」


「主に彼女のためですね」


 俺は妹さんに解放されたサラの頭を撫でながらそう言う。


「ん、私の姉妹探し。ずっと前に全員バラバラになった」


 サラがそう言うと、妹さんもお兄さん———マイさんとバンさん———も気まずそうに謝って来た。


「ご、ごめんなさい……」


「うちの妹がすまねぇ。こいつ好奇心が旺盛すぎてグイグイ言っちまうんだ」


 俺は謝ってくる2人にブンブンと手を振りながら言う。


「いやいや、全然気にしてませんから! ねっ、サラ!」


「ん、私は気にしない。いい情報をくれたいい人達」


 サラがそう言うとマイさんがサラに抱きつく。


「うわーん、めちゃくちゃいい子ー。私サラちゃんが欲しい!」


「あ、それはダメです。サラは俺の大切な人なので」


「ん、私はソラがいい」


 俺たちがそう言うと、2人はどこか生暖かい視線を向けて来た。


 おい、その目線学園でも偶にやられてたけどやめろよな。


 何か恥ずかしくなるんだよ。


 俺が口を開こうとすると、突然肩をガシッと掴まれたかと思うと、怒鳴り声が聞こえて来た。


「おい、お前! ガキがこんな所に何の用だ? どけろ! 俺は早く街に入りたいんだ!」


 そう言って俺を列から外そうとして来る斧を背負った如何にも冒険者っぽいガタイのいい大男。

 

 はぁ……これは俺たちが見た感じ戦闘能力が無さそうだからって来たな。


 俺はこれから面倒なことになりそうだと思いながら、サラを後ろに隠した。

 


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 是非みてみてください。

『チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜』

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