第119話 超大型モンスター
ソラがさん付けで呼ばれる10分前のこと。
モンスターとの戦闘は、もはや戦闘とは程遠く、蹂躙と化していた。
俺たちの魔道具を発動させれば1度に何十匹や何百匹ものモンスターが死ぬ。
そのため今までに無いくらいに楽な戦闘だった。
しかしそんなフィーバータイムも終わりを迎えた。
1人の兵士が突然声を上げる。
「お、おい、あれ見ろ! なんだよあのでかい化け物は!」
その兵士の指差した方に、城壁の軽く2倍くらいはありそうな多頭のドラゴンがいた。
これは完全にヒュドラだな。
しかし少しデカすぎないか?
俺の知っているヒュドラは大きくても十数mのはずなんだが、今いるのは完全に20m以上ある。
これは参ったな……。
奴は毒吐くし首切っても再生するから、超火力で一気に殺さないといけない。
ただこのヒュドラは血管が浮き出ており、明らかに異常な状態になっていることがわかる。
「……あれどうする?」
サラがそう聞いてくるが、すぐに答えることはできなかった。
今俺が出てサラが連れ去られたりしたら元も子もない。
しかしこのまま放っておいても多分俺以外戦えない。
エレノアは戦えはするだろうが、殺すことはできないだろう。
エレノアは一撃必殺が得意だからとことんヒュドラとは相性が悪い。
なので実質俺しか戦う相手がいないのだが……。
「行きたくねぇ……」
俺のそんな呟きを聞いていた1人の50代ほどの兵士が、
「なら私達が行きましょうか? 本当なら既になかった命。だが俺たちは貴重な魔道具まで使わせてもらって今生きています。なので少し死ぬのが早くなっただけですよ」
そう言って笑う老兵士を見ていると四の五の言わずに覚悟を決めるしか無くなってしまった。
いや流石に俺は人に俺のために死んでこいとは言えないんですけど。
「ああもう! 分かった、俺が行くよ! ただちょっと待ってね!」
俺はサラにありったけの防御魔道具と回復魔道具を使い最後に光魔法のバフをかける。
バフは兵士達全員にも掛けておいた。
兵士たちが歓声を上げて何かを言っているが、今はそんな時間ないので無視しておく。
これで俺並みの敵が来ても多分5分くらいなら持つだろう。
「それじゃあちょっと行ってくるからサラは辺りに警戒しておいて!」
「ん! 任せとけ」
サラは少し口角を上げてサムズアップする。
ああ可愛いなちくしょうが! とっとと戻ってきてやらぁ!
俺は久しぶりに《魔剣闇夜》と《聖剣白夜》を取り出し、《魔剣気》と《聖剣気》を発動。
更に【身体強化】と【魔闘気】も発動させる。
これで【神気】以外の全ての強化を施した。
神気はまだ使わない。
正直使いたいが、出来るだけ手の内は晒したくない。
まぁ言うても神気と神剣しかもう切り札は残っていないんだがな。
俺は思いっきり地面を踏み締めてから蹴る。
するとヒュドラ目掛けて超高速で向かっていく。
こう言う時は先手必勝!
「《呑み込め》【白夜喰い】ッッ!!」
俺は新技を早速使っていく。
この技は【白夜を切り裂く一閃】に、暴食の概念を込めた一撃で、俺の種族進化の時に一緒に進化していた。
この専用スキルは相手に当たると半径5mの物全てを呑み込む。
それは光さえも。
俺の放った斬撃が吸い込まれるようにしてヒュドラに直撃。
「グルァアアアアア!?!?」
ヒュドラは突然攻撃されたことに驚き叫ぶが、もう遅い。
【白夜喰い】がヒュドラの腹に再生不可能なほどの大きな穴を開ける。
直径10mの穴だ。
体の半分を失ったヒュドラは首がボトボト地面に落ちていく。
そこから再生しようとしていたが、やがてその再生も止まってしまった。
俺はそれを確認した後、全ての部位を集め、《火球》の魔道具で燃やし尽くした。
俺はそれを見届けると他のモンスター達を無視して【全力ダッシュ】と【加速】でサラの元へ戻る。
「はぁはぁ……だだいまサラ」
「おかえりソラ。よく頑張ったね」
サラは俺を見つけると同時に近寄ってきて、背伸びしながら頭を撫でてくれた。
俺がサラに撫でられていると、突然兵士たちが雄叫びをあげ出した。
「すげぇぇぇ!! あんな馬鹿でかいモンスターを一撃で仕留めたぞ!!」
「俺らの隊長は最強だぁぁぁ!!」
「これからは坊ちゃんじゃなくて、ソラさんだな!」
「姐さんは姐さんって呼ぶようになったしな!」
………………姐さん?
「どう言うことだサラ? あの短時間で何があったんだ?」
「? ……多分私が鳥を殺したのが原因」
サラが指差す方にはコカトリスが全身穴だらけになって死んでいた。
多分サラの【エアスピア】だろう。
しかし確かにコカトリスは兵士たちでは倒せない。
それをサラが圧倒して倒したのだから、姐さんと呼ばれるのは当たり前なのかもしれない?
ただめちゃくちゃなんというかむず痒いけどな。
「ん、私は姐さん。みんな着いてこーい」
「「「「「「「分かりました姐さん!!」」」」」」」
やっぱり俺は戦いに出なかった方が良かったかもしれない。
どうしてもそう思ってしまう俺だった。
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