第101話 イリスはいきなりだとテンパる人間(改)

 あの後ゴブリンは簡単に倒せるとわかったずるい奴らは、次々と試練をクリアしていった。


 だが一つ言いたい。


「みんな狡いな」


「ん、狡い。私は実験台にされた」


 俺とサラのジト目が他のメンバーに降り注ぐ。


 よく考えればここは女のサラじゃなくて男が行くもんだろうがよ。


 だって男の方が腕っぷしは強いんだからさ。


「い、いや決してサラちゃんを実験台にしたんじゃなくて———」


「わ、私は言おうとしたら先にサラさんが言っただけであって——」


 シューマとイリスが弁明と言う名の言い訳をするが、


「ん。やっぱり私が実験台」


 サラが更にジト目で言うと、2人はシュンとなってしまった。


 まぁやっていたことは人にやらせて安全だと気づいたら自分がやるって感じだったからな。


 だからサラに何を言われてもしょうがない。 


「と、取り敢えず先に進まない?」


 場の空気が少し悪くなったのを察したセリシア先生が慌ててそう言う。


「ん、行こう」


 意外にも1番早く返事をしたのはサラだった。


 どうやらそこまで怒ってはいなかったようだ。


 皆んなも少しホッとしている。


 まぁサラは掴みどころがないからな。


 俺は分かるけど!


 ゴホンッ!


「……よし、なら第2の試練に行くか」


 俺は皆んなに合図を出して進む。


 しかし少し進んだ頃にエレノアが近づいてきて、


「ソラ様、どうやら皆さんあまり緊張感が無いようですが……」


 俺に耳打ちしてくる。


 エレノアの言っていることはわかる。


 いくら俺やエレノアがいるからと言って油断しすぎるのはいけない。


 そもそもここはダンジョンの中だ。


 いつ何時何があるか分からないのに油断なんてする馬鹿はすぐに死んでしまう。


 まぁ油断しているのはシューマ、アラン、イリスだが。


 サラはいつも通り適度な緊張感を持っている。


 それはセリシア先生にも言えることだ。


 緊張のしすぎはかえって隙を生むことになるだけだが、程よい緊張感を持っていれば、いいパフォーマンスができる。


 そして1番警戒していたのはなんとレオンだった。


 さすが強くなりたいと1番思っている奴である。


 常に辺りに神経を張り巡らしているため、今なら一流の暗殺者でも気づくことができるだろう。


 ふむ、どうやらレオンは俺が思った以上に有能なやつみたいだな。


 それに比べてあいつらは……。


「まぁ……痛い目見て貰えばいいじゃないか」


 なんか注意するのも面倒なので、放っておくことにした。


 俺たちが言ったところで変わるかも分からないからな。


「確かにそれが1番の特効薬ですね。わかりました、特に指摘はしないでおきます」


「りょーかい」


 エレノアも同意したことだし、さっさと次に行きますか。







☆☆☆







 俺はその後も特に指摘しないまま第2の試練までやってきた。


 今回もサラが1番にやると思っているのか、相変わらず緊張感がない。


 サラには次は1番ではないと予め伝えている。


 そして入る順番は俺が決めることになった。


 まぁ俺とエレノアで勝手に決めたことだが。


「よし、次はイリスからな」


「えっ!? サラさんからでは———」


「はい、ゴー」


 俺はイリスの背を押して入る。


《挑戦者を確認しました。第2の試練を開始します》


 部屋の中は火口のような場所だ。


 なのでめちゃくちゃ暑い。


 俺は全耐性があるから大して効かないが。


 イリスはそうではないので……


「あ、暑いです! ど、どうすれば……あ、魔道具を使えばいいのでした!」


 そう言って耐熱イヤリングを取り出すイリス。


 あーあ、これはやばいな。


 俺がそう思った瞬間。


「きゃああああ!!」


 イリスが叫びながらぎりぎりで溶岩魚を避ける。


 だがその反動でイヤリングが溶岩の中に落ちてしまった。


「あっ……ど、どうしよう……あ、暑い……し、死ぬ……」


 イリスが首を押さえて蹲り出した。


 暑さで息ができなくなっているようだ。


 これ以上ほっといてはいけないな。


「はぁ……」


 俺は一瞬でイリスの隣に行くと、まず結界を張って攻撃が通らないようにする。


 そして水を飲ませて耐熱イヤリングを付けてあげる。


「あ、ありがとうございます……」


 熱中症から何とか回復したイリスが言うが、俺は無言で拳骨を喰らわす。


「いたっ!?」


「準備をしていなさすぎだ」


「だ、だってサラさんが1番にやるって言ったから……」


「だからって何も準備していないとはどう言うことだ? ここはダンジョンの中なんだぞ? いい加減しろ」


「ご、ごめんなさい……」


「わかったらもう次からダンジョンの中で絶対に油断するなよ」


「は、はい! 油断しません!」


「ならさっさと倒して来い」


「分かりました!」


 イリスは魔法鞄から【絶対零度アブソリュート・ゼロ】の篭った魔道具を取り出す。


「ソラさん、もう結界を解除してもらって大丈夫です」


「しっかり準備できたか?」


「勿論です!」


 俺は結界を解除して部屋の隅へと移動する。


 すると俺の気配に怯えて出てこなかった溶岩魚が息を吹き返したかのようにイリス目掛けて攻撃してくるが、それは最悪な手だ。


「【絶対零度アブソリュート・ゼロ】ッッ!!」


 その瞬間部屋の全てが凍る。


 それはマグマも何もかも全てだ。


 因みに俺は結界を張って冷気が来ないようにしているが、結界は凍ってしまっている。


 自分で渡しておいてなんだが凄い威力だ。


「や、やりました! levelが上がりました!」


 そう喜ぶイリスを見て、なんかこう、うん、早く強くなれよと思った。


 その後に出てきたアイスグリズリーは、【獄炎】と言う火魔法で倒していた。


 取り敢えずこれで第2の試練は終わりだ。


 さて、次は誰にしようかな。


 俺は次に連れてくるメンバーを考え始めた。


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次回はシューマの登場です。

一体何をやらかすのやら。

お楽しみに?


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