第85話 禁足地と呼ばれる理由②
俺たちはロック鳥を倒した後、すぐにその場を後にした。
本当は肉や素材が欲しかったのだが、今の俺たちにもたもたしている暇はない。
でも本当に欲しかったなぁ……ロック鳥の鉤爪……。
あの素材はめちゃくちゃ高く売れるし、武器にも防具にももってこいなんだけどなぁ。
俺が少し引きずっているとエレノアが立ち止まった。
俺も少し遅れて立ち止まり息を潜める。
「気付いたか?」
「はい。私たちよりも強いモンスターがこちらへと向かってきます」
やはりそうか……俺の気配感知にも俺たちよりも強いモンスターを感知していた。
本当にさっきやっと倒したばっかりなのに。
少しくらい休ませてくれたっていいだろうが。
俺は愚痴を心の中で言うが、言ったところで変わらないのは分かっている。
『はぁ……』と大きくため息を一つ。
それを合図に俺は目を閉じて心を落ち着かせて自然を感じ、神気の準備をする。
「エレノア、3分だけ持ち堪えられるか?」
今の俺では神気を実践で使えるレベルまで届いていない。
しかし今回の敵は神気を使わなければ勝てないだろう。
なので俺が発動するまでの間、エレノアに時間稼ぎをお願いしたと言うことだ。
「分かりました、3分ですね? しっかり耐えてみせます!」
「本当か!? ありがとう。……よし、それじゃあよろしく頼む」
俺はそのまま深い意識の底へと落ちていった。
☆☆☆
(エレノア)
ソラ様が目を瞑られて全く動かなくなりました。
どこかを触ったり、つねるなどしても文字通り何をしても反応がありません。
物凄い集中力です。
しかしあまりソラ様を見ていてはいけません。
私にはソラ様より命令が下っているのです。
『3分だけ持ち堪えられるか?』と。
なので私はすぐに承諾しました。
そして今私の感知にはどんどん近づいてくるモンスターを細かく捉えています。
私は《魔剣闇討ち》を構え、今回は隠密だけ発動させます。
狙いが時間稼ぎなので、透明化などで完全に気配が消えて仕舞えば、ソラ様が狙われる恐れがあるのであえてわかるようにしています。
まぁですが、完璧に捉えられるような事は中々ないと思いますが。
そんなことを考えていると、とうとうモンスターの姿が見えました。
白い体毛に覆われた大きな猛獣型のモンスターです。
しかし私はみたことがないので、どうやらこのモンスターは私の知識にはないようです。
「【鑑定】」
私は鑑定を発動してみます。
______________________
白虎
上位種族 四神
下位level:200(MAX)
上位level:35
______________________
エイク様よりはだいぶ弱いようですが、今の私では勝てなさそうです。
しかしここで諦めるわけには行きません。
それに始めから私よりも強いと分かっていたのでそこまで驚きもありません。
しかしこれは【透明化】も使った方が良さそうですね。
あとは魔剣の【気配希薄】があればなんとかなるでしょう。
私は音もなく飛び出し、【不意打ち】【急所倍増】を発動して相手の前足の足首を斬り付けます。
しかし思った以上に硬く、血が少ししか出ないくらいしか傷を負わすことができませんでした。
しかし私が倒すのではなく、あくまでも私に注意を向けるだけです。
なので私は一気に方向転換し、再び同じところを今度は【連撃の極意】も使って斬り付けます。
すると今度はしっかりと傷を負わすことができました。
その証拠に白虎が明らかに右の前足を気にして歩き方が不自然になっています。
次は奴の目です。
片目だけでも相当な痛手のはずです。
しかし流石格上。
私の気配に既に気付いているようです。
私が攻撃しようとしたら負傷した前足で横薙ぎしてきました。
私は咄嗟に空中で体を捻りギリギリ回避しますが、風圧で吹っ飛ばされてしまいました。
そのまま受け身も取れず木に直撃してしまいました。
体に物凄い衝撃が走りましたが、なんとか立ち上がります。
しかし100mくらいの木が倒れているのをみて、直撃しないでよかったと思いました。
私の傷は、裂傷に何本かの骨折、左手は感覚が麻痺しているため全く動きません。
なので右手だけで私は再び攻撃を仕掛けます。
まず白虎に5本の短剣を投げつけます。
これだけでもlevel:150ほどの相手ならば即死させられるほどの威力があるはずなのですが……。
さて、どうでるでしょうか。
「グルァアアアアア!!」
白虎が咆哮を繰り出しました。
それだけで物凄い風が巻き起こります。
その風で短剣ははたき落とされ、周りの木々が揺れ葉が落ちてきます。
しかしそれは悪手です。
私は沢山の落ちてくる木の葉を死角にし、一瞬で近づき、【投擲】を使い白虎の目を目掛けて超速で投げます。
すると白虎は防ぐことができず命中。
「グルァッ!?」
今まで感じたことがないほど痛かったのか、目を押さえて移動を停止。
チャンス!
その間に一気に仕掛けます!
「闇魔法【レイテスト】ッッ!!」
この魔法はソラ様が使う【フォース・スロウ】の上の最上級魔法です。
効果はより高く、大体本気の10分の1ほどの速度しか出なくなります。
しかしこれには制限があり、どれだけ長くても10秒しか効かないということ。
ですが、そんなこと関係ないのですよ!
私は体を半歩ずらします。
すると私の真横を最も信頼している人が物凄い速さで横切ります。
「よく頑張ったな、あとは任せろ」
最後に見たのは、それは綺麗な白銀のオーラを纏ったソラ様でした。
☆☆☆
俺は神気を全開にして、一気に奴に近づく。
しかし簡単には懐に入れてはくれない。
植物を操作するスキルを使って巧みに俺を攻撃してくる。
地面の様子を見ると、どうやらエレノアの時はこのスキルは使っていなかったようだ。
どうせ格下だと思って油断していたのだろう。
しかしそれが奴の最も分かりにくい弱点となる。
俺は植物で奴から姿が隠れた瞬間に【加速スキルを使って一気に懐に入り込む。
刀の柄を握り———
———抜刀。
「———奥義【白夜を切り裂く一閃】———」
俺は白虎の首に一閃を喰らわす。
———納刀。
ゴトッ。
俺が振り向くと既に白虎の体と首はお別れしていた。
俺はそれを確認すると急いでエレノアの元に駆け寄り、魔法の指輪からエリクサーを取り出して飲ませる。
すると一瞬で意識を取り戻した。
「———……ゴホッ、ゴホッ! ……あ、ありがとうございます……」
エレノアが『全快したので大丈夫です』と言いながらすぐに上体を起こし、
「……それでは進みましょう」
と言ってくるではないか。
流石にエリクサーを使ったとはいえ早すぎるので、
「大丈夫じゃないだろ?」
と言うとエレノアはケロッとしながら、
「いえ、大丈夫ですので進みましょう」
本当にあっさりと立ち上がった。
俺はその光景を見て首を傾げる。
……おかしいな。
いくらエリクサーと言ってもあれほどの怪我ならば数十分はかかるはず……。
ゲームではすぐだったが、この世界では怪我に応じてそれなりに時間がかかる事は調査済み。
まぁ早く治るのはいいことだから別に気にしないでいいか。
「わかった。それじゃあ進むか」
「はい!」
目的地を目指して俺たちは再び進む。
---------------------------
とうとう次回から種族進化です。
お楽しみに!
フォローや☆☆☆→★★★にしてくださると嬉しいです。
勿論★一個でも作者は喜びますのでよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます