第1話 待望の異世界へ!

辺り一面が白色と言う異様な空間で、先程死んだはずの青年、新田新太は目を覚ました。


(僕は死んだはずじゃ……?いや、それよりもここは何処だろう?)


『大丈夫です。貴方は死にましたよ』


その時、穏やかな口調で全然穏やかではない事を話す声が聞こえた。


声がした方向に目をやると、そこにはいつの間にやら一人の女性が立っていたのだった。


容姿は端麗、裸エプロンのように袈裟だけを着こなすその装いは彼女の透明感のある肌を強調させ、その服の持つ本来の用途とは裏腹に艶めかしい雰囲気を醸し出す要因となってしまっている。それだけに髪型がパンチパーマである事が非常に残念だ。実に勿体無い。


「そ、そうなんですか……ところで、貴方は誰なんですか?何故今ここにいる僕が死んだとはっきり言えるのでしょう?」


新田は刺激の強い服装である彼女から若干目を逸らし、そう問いかける。


『私の名前はイム。神のようなものだと言っておきましょう。そしてここは私の作り出した空間、この場所に来る事が出来る時点で貴方が既に死んでいるのは確実なのですよ』


「は、はあ。そうなんですね」


確かに、雲海の中のように真っ白な空間など世界中どこを探しても見つけるのは不可能……かもしれない。しかもここに来る前、トラックに轢かれて致死量を遥かに超えそうな程の失血をしたのは自分が一番はっきりと覚えているのだ。新田は少し考えた後、多少無理矢理にでも自らを納得させる事にした。


『ではお喋りはここまでにして、貴方の死因を見ていきましょうか……あ〜、トラックに轢かれたんですね、ハイハイ。それでは今から言う事をよく聞いて下さいね。かくかくしかじか、ゲッフンゲッフン!』


死因を知った直後、明らかに「またか」とでも言いたげな表情へと変わったイムは新田がこれから生まれ変わる世界だと言う場所の説明を始めた。


魔法……?レベル……?スキル……?死因が可哀想だからチート並の能力にしてやる……?突然そんな話をされても全然意味が分からない。そんなライトノベルのような話が本当にあるのだろうか?


「あの……すみません。正直全然理解が……」


『トラックに轢かれた者は皆転生したがるのですよ、貴方もどうせそうなのでしょう?もうすぐ終わるから黙って聞いていなさい。』


「あの〜、お取り込み中すみませんイム様。もうすぐ次の者がここに……」


すると、また一人イムと似たような格好をした修行僧のような青年が突然姿を現した。そのせいで新田は反論する事が出来なかった。


『あら、またなの?それでは新田新太。貴方はもう行きなさい。あれだけ説明すれば大丈夫ですよね?』


「えぇ!?いやまだ……それに行けって言われてもどこから」


『言う事を聞かないのならば仕方ありませんね……



〝神技……アルティメットニョライストレート‼︎〟』



イムがそう言った途端、上から突如として現れた巨大な人の右拳。その重い重い一撃を受けた新田は空間を突き破り、瞬く間に姿を消した……断末魔の叫びを残して。


「ぎゃああああああぁぁぁぁ……‼︎」


「うわぁ、相変わらず荒っぽいですねイム様は……ところで、可哀想って言ってましたけどさっきの青年、死因は何だったんですか?」


『ああ、死因は轢死なんだけど、理由が可哀想……と言うか酷いのよ。何でも信号待ちをしていた彼の背後にいた二人組のうち一人がカー〇じいさんを〇ールおじさんと間違えたのを聞いて笑いを堪えて前屈みになったらバランスを崩して……運悪くそこを通ったトラックに轢かれたらしいわ』


「うっ……くっ……ギャハハハハハ!」






……こうして新田の第二の人生は、幕を開けた。

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