第10話 非情ッ。練習風景は全カット
『《クエスト》が発生しました。
《クエスト》 「レスキューに必要な体作り」 を開始します。
二週間続けて一日一回筋トレをしなさい。なお、メニューは
腹筋 100回・腕立て 100回・背筋 100回
腿上げ 30秒を5回 となっています。これらは、腿上げ以外は連続30回から回数がカウントされます。
なお、報酬は身体強化となります』
(また、唐突に始まったもんだ)
僕は、突然頭に響いてきた声に帰ろうとしていた足を止めた。
(というより、このクエストさっきの黒部さんとの会話を反映してるよな?)
まぁ、いいか。クエストが開始されたらやるしかねえんだからなぁ。
………………………ん?回数、おおくね?確かにね?普段から運動している人から見れば簡単なのかもしれないけど……僕、中学の頃帰宅部ぞ?
『すみません。これって、回数減らせませんか?』
『不可能ですね。これでも、色々と最低の基準にしてノルマをたてていますから』
絶望ッ!突きつけられた答えは『却下』ッ!現実は非情なりッ!………………………………………………
―――――――――――
練習を始めてから二週間。今日も今日とて、練習場に来て黒部さんから、ほぼ一日中指導を受け夕暮れになった練習場で休憩していた。
練習を始めた頃は何回も休憩を入れる必要があったけれども、クエストの筋トレの影響もあってか今では数時間に一回休憩を入れるだけで良くなってきている。
剣の腕の方も良くなってきているのがはっきり実感できるようになってきた。まぁ、こっちに関しては黒部さんの人を視るスキルを使った指導が的確で、そんな指導を受けていたら上達するのは当然っていうところがあるけれども…
「ふむ…。明君?」
僕が休憩していると、黒部さんが何やら考えながら声を掛けてきた。
「はい。何でしょうか?」
「君の剣の腕もだいぶ上がってきたと思うんだ。だからこそ、ダンジョンに行こうと思う。明日は
「ッ、はいっ!」
その日の帰り道は心なしか明るく夕日が街を照らしていた。
―――――――
家に帰ってきた明は日課となった筋トレを終えると、
『《クエスト》 「レスキューに必要な体作り」 が達成されました。
報酬の身体強化は体力を使うため、就寝中に行われます』
クエストを達成したことを告げる音声が頭の中に響いてきた。
(そういえば、今日が筋トレ始めて2週間か…。そんなこと忘れてたなぁ)
クエストから始めた、筋トレはいつの間にか明の趣味となっていた。
『保持者様、身体強化は体力を使うので今日は早く寝たほうがよろしいかと』
『わかった。そうするよ、え~と?そういえば、名前何て言うの?』
『はい。私には名前がありません。保持者様の好きなように読んでもらえればいいかと』
それを聞き、明はしばし黙った後、唐突に呟いた。
「フォロシィー」
『僕をフォローしてくれるシステムなんでしょ?それを略して、
「フォロシィー」ってどう?』
『いい名前だと思います。ありがとうございます。私の名前は今から「フォロシィー」となりました。これからは、「フォロシィー」とお呼びください、保持者様』
――――――――――
明が「フォロシィー」の推奨に従って、早めに寝むり意識が消え落ちた夜遅く。
『ザッ…ザザッ派生ザッ 「
――――――――――
…………………ピッピピピッ
「ん、ぐぅぅ」
次の日、明は目覚ましの音で目が覚める。ベットにはいつもと変わらぬ朝日がカーテンの隙間から差し込む。
「ん~、よいしょー」
明は背を伸ばして、ベットから起き上がる。
『保持者様、昨夜に身体強化を行い、成功いたしました。体を作り替えたわけではないので問題ないかと思われますが、念のため軽く体を動かし体の調子を確認することを推奨します』
「そうだな」
今日は、明にとって重要な一日。準備をどこまで念入りにしてもまだ足りないように感じてしまうほどには明も緊張している。
だが、それと同時に緊張以上の感情が胸の奥から滲み出て、大きく心臓を鳴らしている。
逸る気持ちを深呼吸で抑えつけ、父の言葉で家から送り出された彼が進む道は真っすぐ伸びている。
そうして明は、目的地に着く。明を見つけた黒部が手招きをして明を呼んでいる。
「今日はこの
それに、と黒部は言葉を続ける。
「ここを、攻略しろという訳ではないからな。ダンジョンコア周辺にはいくなよ。ボスっていう、一段強いモンスターがいるからな。それ以外の場所でモンスターを倒した証拠を持ってこい」
今日は、明の初ダンジョン探索である。
―――――――――――――
後書き
蛇穴という奈良県の地名が出てきましたが、別に舞台が奈良県という訳ではありません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます