異次元に閉じ込められた学校にて、スマホで得たスキル【飛躍】が凄すぎた
名無し
第1話
「――ごほっ、ごほぉっ……!?」
俺は気付けば、芝生の上に倒れていた。ここは、どこだ……?
全身に鈍い痛みが走る中、なんとか起き上がって周りを見渡す。どうやらここは学校の中庭のようだった。苦痛とともに懐かしさも覚えつつ、異様な事態に驚かされる。
というのも、俺は元殺し屋という身分で、心臓発作によって意識を失って倒れたんだ。だから今頃はあの世か病院にいるはずで、こんなところにいるのはどう考えてもおかしい。
しかも、だ。学生服を身に纏ってるし、体型的にも明らかに自分の体ではなかった。まさか、俺は学生に転生したっていうのか?
とりあえず自分が誰なのか確認しようとポケットの中を探ると、スマートフォンがあったので取り出して中身を覗くことに。
「なっ……」
スマホを持つ手が震える。17歳の高校生、3-Aの
そうだとして、なんでこの体の本来の持ち主は、こんなところで倒れてたんだ? 俺はもしやと思って見上げたら、校舎の三階部分で窓が開いている箇所があった。どうやらあそこから飛び降りたっぽいな。
推察するに、いじめか何かを苦にして自殺を図った可能性が高い。それで死なずとも意識を失い、心臓発作になった俺と魂が入れ替わった格好なんだろうか。
自分自身、遥か昔だがいじめを受けた経験があるだけに、もしそうなら許せないな。俺は痛む体を引き摺るようにして歩き、校舎の中へ入る。
木の枝や芝生がクッションになったのか、骨は折れてないのがわかるし大丈夫だってことで、一階の壁に貼られた校内マップを頼りに3-Aの教室まで向かった。よし、なんとか着いた。
「――ちょっと、浦間透!」
「…………」
「聞いてるの? あんたのことよ!」
「え、あ……」
教室に入って早々、いきなり女子生徒に怒鳴られたので一体何事かと思ったら、そうか。浦間透って俺のことか。どうしてフルネームで呼ぶのかは知らないが、なんか気が強そうな感じの子だ。
「とぼけても、その痣だらけの体を見ればわかるわ。どうせまたいじめられてたんでしょ。なんでやり返さないの?」
「えっ……」
「前にも言ったと思うけど、あたしね、あんたを見てイライラしてるの。やり返さないから一方的にやられるのよ。あいつらに注意したら、遊んでるだけだって反論されちゃうし……」
「……は、はあ……」
この体の本来の持ち主がいじめを苦に自殺したのはこれで確定した格好だが、転生したばっかりでそんなことを言われてもな。ただ、中身が違うことを他言するのは憚られるが。
「てか、あんた誰?」
「はあ? クラスのアイドル、
自分でアイドルなんて言っちゃうか。
「あたし、他力本願な人は大っ嫌い。だから、少しは勇気を出して。そしたら助けてあげるかもね。それじゃ」
「…………」
彼女は俺の返事を待たずに颯爽と自分の席へ戻ってしまった。変わった感じの子だが、心根は優しいのかもしれない。大体の連中はいじめられてるやつを見かけても傍観するだけだからな――
『――聞こえるか? 学校にいる生徒たちよ』
「「「「「っ!?」」」」」
なんだ、この脳内に直接響いてくるかのような声は。俺以外にも聞こえてるらしく、生徒たちが仰天した様子で周りを見渡していた。
『私は時空の番人だ。お前たちは運悪く時空の歪みに吸い込まれ、異世界と現実世界の狭間にいる』
おいおい……俄かには信じがたい話だが、転生したばかりなこともあって疑う余地はあまりなかった。試しにスマホで110番してみるが、ただちに圏外と表示される。
おまけに窓の外を見ると、太陽光は届いているみたいだが、遠くの景色が膜を張ったかのように薄らとぼやけているのがわかった。
ってことは、本当に異次元に閉じ込められて学校から脱出できなくなったっていうのか……。
『この狭間という場所は極めて不安定であり、一日に一度、歪みが大きくなるタイミングで次元が開き、強力なモンスターが侵入してくるだろう。だが、生き残る術は残されている』
「…………」
『お前たちの端末――スマートフォンやタブレットで異世界の素材、すなわちスキルや仲間、マップやレベル等を獲得できるようにした。ただし、次元が開くタイミングでしか受け取ることはできない。その間、およそ10秒ほどだ』
なるほど。つまり、一日に一回はモンスターが発生するが、同じようにスマホで異世界のものを入手できるってわけか。最初に何を獲得できるかによって、今後の展開が大きく変わりそうだな。
『それによって何を得られるかはわからないが、偏りが起きぬように種類は同じにしてある。次元が歪む時間はバラバラなため、その気配が来ればまた連絡する』
ざわめきの中、時空の番人の声はそこで途絶えることになった。
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