1-7
私が、駅前まで文房具を買いに出かけて戻る時、バス停のところで十和子さんが3人の男の子に囲まれているのを見てしまった。十和子さんは赤いミニのフレァースカートにチャラチャラした首飾りを下げて、濃いめのお化粧をして、相変わらずの恰好。
「いいから、カラオケ付き合えよー」
「嫌だって さっきから 言ってるじゃぁない ウチ 用事あるんだから・・」
と、聞こえてきた。男は、十和子さんの腕を掴んで、しつっこく誘っているようだ。その時、チラッと十和子さんは私のほうを見て、眼が合ってしまった。もしかして、助けてって言っているのー 私は、どうすればいいんだろうと、頭が真っ白になって、とっさに、傍に行って
「十和子先輩 あっちでみんなが待っているよ もう直ぐここに来るよ 孝雄さんとか男の人 何人かで」と、言ってしまった。
「なっ なんなんだ お前はー 気持ち悪ー 眼をむいて・・チリチリの頭で」
「おい 行こうぜー 男来るんだってよ このブス ゲン悪いよ」
と、男の子達は「チェッ なんなんだ あのギョロ眼見たかー 気持ち悪いよなー」とか言いながら、去っていった。今日は、髪の毛も留めてなくてバサバサしてたんだけど、あんな言い方 しなくても・・。
「ありがとうな サダコ 助かったよ 隣町のN高校の奴らでな しつこいんだよ 前からウチと付き合えって」
「そうなの 嫌なんだー」
「あぁ あいつら ヤルのが目的に決まってるんだ サダコ お茶しょ 暇?」
「あのー ウチ サダです でも、なんでサナじゃぁないのー?」
「うん 知ってるよ サナじゃぁなくて サダっていうの 職員室で先生の前でも、はっきりゆうてたもんなー あー ごめん サダコって 悪乗りしてしまった」
「べつに なんでも良いですけどー」
「サダ いっぺん ゆっくり話してみたかったんだよ いこー」
私は、連れられて近くのカフェに入っていった。
「あのさー 茜姉さんがなんで、サダのこと気に入っているかわかる?」
「あのー 気に入ってくださってるんですかー?」
「ウン あの子は純粋な眼でウチ等のことを見つめてくるって 根性座っているって だから・・」
「そんなことないですよ ウチは 訳わかんないことばかりだから・・」
「さっき だって 眼をそらさないで、ウチのこと見つめていたやん だから、眼が合ってな それに、逃げないで、機転きかせて、ウチを助けてくれた」
「そんなー あの時は 頭が真っ白になってしまって 何とかしなきゃぁって あのー ウチって そんなに 気持ち悪いですか?」
「ウーン いきなりだとね まぁ 気にすんなよー でも、茜姉さんはさすがだよ 見抜いているんだなー サダのこと」
「ウチはね ブスで眼がギョロっとしてて気持ち悪いって 話友達も居ないんです そしたら、久美が仲良くしてくれて ずるずるとー」
「ズルズルと 不良グループになったってか ウフッ あのさー ウチもそんなとこだよ 気張って見せてるけどさー あのなー サダだから話すけどなー ウチは処女だよ 男には手を出ささへんねん サダはみんなを見てるから、男にベタベタして、だらしないと思ってるんやろー」
「えぇ まぁー そのー」
「久美もな 中学卒業の時、カラオケに行って、みんなにやられそうになって、そん時、助けてくれたのが孝雄さんでな。でも、結局、やられてしまって、今じゃぁ、言うなりだよ。グループのみんなもそんな感じ。だけど、ウチは違う。振りしてるけど、男なんてやりたいばっかりのバカって思ってるから」
「十和子さん ・・・ 見た目と違う・・」
「だろー だからー なんで サダにこんな話してると思う? サダはバカじゃぁないし グループに入っても 男に振り回されるようなことをするなよって 言ってんだよ」
「ありがとう 十和子さん 忠告してくれて」
「あぁー 十和って 呼んでいいよ ウチもサダって呼ぶから」
「わかりました 十和姉さん」
「バカ だから 十和で良いってー それとな これは、絶対 秘密」
「ウン なんですか?」
「サダを信用して話すんだけど 茜姉さんのこと 健二さんの言いなりみたいだろー 本当は、あの男はウチに近づいてきてたんだ ウチが襲われそうになった時、茜姉さんが身代わりになってくれて、その代わり、仲間の女の子には手を出さないって、約束で・・以来、ずーと・・そりゃぁーウチより茜姉さんの方がいい女だものー 向こうにしたら、してやったりだよー だから、ウチは茜姉さんには頭が上がんない ウチが身を守ってるんも あの人のお陰なんよ それどころか、ああやって・・茜姉さんはグループの女の子の何人かを守ってたのよ でも、みんな 誰かに、やられてしまってるけど・・バカだよ」
「そーなんですかー・・ その話 ショック あの人が・・ だから・・ ウチ 十和姉さん 信じます」
「だからー 十和で良いってー」
私は、初めて、打ち解けられる友達が出来たような気になっていた。不良グループと言っても、ひとりひとりがなんかのきっかけでそうなってしまっただけで、悪い人なんか居ないんだと思っていた。なんかくすぶった中でも一筋の光が差し込んできたような感じだった。
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