第189話 新たな称号
「ちょっと! 何でノノはリックの部屋にいるの!」
「ノノさん、男性は夜になるとオオカミさんになるから二人っきりになったらいけませんよ」
サーシャは俺を信じてくれると思っていたけど、ひどくない?
「ノノ、お兄ちゃんといつも一緒に寝てるんだよ」
「一緒に寝る!?」
「やはりリック様はロリコンだったのですか!」
俺はサーシャの言葉にドキッとしてしまう。
まさか俺の称号を見たわけじゃないよな! もしロリコンの称号を見られたら、俺はもう社会的に抹殺されるかもしれない。
「な、何を言ってるのかな。俺がロリコンなわけないじゃないか」
「そうですよね。良かったです。リック様が胸の小さな人を好きじゃなくて」
サーシャはチラリとエミリアの方に視線を送る。
「あんたいちいち含む言い方をして腹が立つわね。でも今はそれどころじゃないわ。どうなのリック!」
「だから俺はロリコンじゃないって! ノノちゃんは俺の妹だぞ」
「でもリックはノノは引き取ったのよね? 血の繋がりはないのよね? それなら一緒に寝るのはおかしくない?」
このままではサーシャとエミリアの手によって、不名誉な称号を与えられ兼ねない(既にロリコンの称号を持っているけど)。
仕方ない。信じてもらえるかわからないけど、ノノちゃんの悪夢について話すしかないか。
「実は理由があって⋯⋯」
俺はノノちゃんに視線を送る。
するとノノちゃんは頷いてくれたので、悪夢について口にする。
「少し前からノノちゃんが夢を見るんだ」
「夢⋯⋯ですか」
「夢なんて誰でも見るじゃない。私だって昨日はリックと⋯⋯な、何でもないわ」
「「「リックと?」」」
俺と何だ? まさか夢の中でも俺を奴隷にして、こき使ってたとか言うんじゃないだろうな。
「まさか夢だからといって、如何わしいことをしていた訳じゃないですよね?」
「そ、そんなことより夢がどうしたのよ!」
そうだな。今は俺が奴隷になった夢より、ノノちゃんの夢の方が重要だ。
「内容は覚えてないけどとても苦しい夢なの」
「可哀想に。ノノさんは辛い人生を送っていたから、悪夢を見るようになってしまったのですね」
「わかったわ。これからは私がノノと寝てあげる。これで解決ね」
「何が解決ですか。ここは私がノノさんと一緒に寝ることを提案します」
「それこそ解決しないわ。ノノが安心して寝れないじゃない」
またサーシャとエミリアが一触即発モードに突入してしまう。本当に毎度毎度勘弁して欲しいぞ。
「ううん。お兄ちゃんじゃないとダメなの。おじいちゃんもおばあちゃんもお母さんとも一緒に寝たけど悪夢は消えなくて。お兄ちゃんと手を繋いでいる時だけ、ノノは安心して眠れるの」
本当に何故このような現象が起きているかわからない。せめて鑑定で何か痕跡がわかれば、対処方法も見つけられると思うけど。
「何なのよそれ! 何でノノが夢で苦しまないといけないの」
「リック様、何とかできないでしょうか。その⋯⋯創聖魔法を使って⋯⋯」
「色々考えて見たけど解決策が思いつかなくて。とりあえず今はノノちゃんと一緒に寝ることで、悪夢を防いでいるんだ」
「でも何でリックだけ⋯⋯」
「確かに不思議ですね。他の方とリック様の違いを見つけることが出来れば、何か糸口がわかるかもしれません」
考えられるのはやはり俺がノノちゃんと同じ異世界転生者ということと、女神様の加護を受けているということか。
もし聖の属性を持つ俺が、ノノちゃんに夢を見せている闇の属性を打ち消しているとしたら⋯⋯
だが闇属性の攻撃をどうやって一日中防げばいいのかわからない。
創聖魔法のクラスがもっと高くなれば、出来ることも増えていくと思うが。
「ノノ、一つだけ気になることがあるんだ」
「何?」
もしかして何か対応策があるのか?
悪夢を見ているノノちゃんだからこそ、わかることがあるのかもしれない。
俺達三人はノノちゃんの言葉に耳を傾ける。
「ロリコンってなあに?」
ノノちゃんの言葉に俺達はずっこける。
悪夢の解決策とは全然関係なかったな。
「ロリコンはちっちゃな女の子が好きな男のことよ」
「歪んだ恋愛感情を持っている人です」
エミリアとサーシャの言葉に概ね間違いはないと思う。
そしてこの後ノノちゃんが、とんでもないことを言い出した。
「お兄ちゃんはロリコンじゃないの?」
「ち、違うよ。俺はロリコンじゃない」
俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない。間違っていないはずだ。
「そ、そうなの? お兄ちゃんはロリコン⋯⋯じゃないんだ」
「えっ? ノノちゃん?」
何故かノノちゃんは俺がロリコンじゃないと知って、泣き出してしまった。
「ノノどうしたの!?」
「ノノさん何かあったのですか!?」
エミリアとサーシャも突然のノノちゃんの涙に狼狽えている。
何があった? 俺のロリコン話が関係しているのか? もしかして何か攻撃を受けたのか? それとも悪夢の内容を思い出したのか?
とりあえず今はノノちゃんの悲しみを少しでも無くすために、俺はノノちゃんを抱きしめる。
「何か辛いことがあったの?」
俺は優しくノノちゃんに問いかける。
するとノノちゃんは目に涙を浮かべ、ポツリポツリと口にする。
「お兄ちゃん⋯⋯ロリコンじゃないから⋯⋯ノノのこと嫌いなの?」
「ん? それはどういう⋯⋯」
そういえばエミリアが、ロリコンはちっちゃな女の子が好きな男のことって言ってたな。
まさかそれを聞いて俺がノノちゃんのことを嫌いだと思ったのか!
「俺はノノちゃんのこと好きだよ」
「でもロリコンじゃないんでしょ? お兄ちゃんがノノみたいな小さな子は好きじゃないと思ったら悲しくて⋯⋯」
えっ? これって俺のせい?
もしかしてノノちゃんのことを好きだとわかってもらうためには、ロリコンだって認めなくちゃならないのか?
「リックどうなの? ロリコンなの?」
「ノノさんのことがお嫌いなんですか?」
エミリアとサーシャがノノちゃんを泣かせた原因が俺だとわかり、冷たい視線を送ってくる。
「お兄ちゃん本当にノノのこと好きなの?」
「リック」
「リック様」
二人からわかってるよな? 的な圧を感じる。
「お兄ちゃん⋯⋯」
ノノちゃんの涙が頬をつたい、上目遣いで俺を見てくる。
追い詰められた俺が言う言葉は一つしかなかった。
「お、俺は⋯⋯ロリコン⋯⋯です」
そしてこの時、新たな称号【ロリコン+】を手にした瞬間であったことを今の俺は知るよしもなかった。
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【読者の皆様へ】
昨日より新しく【異世界を裏から支配する~表舞台は信頼できる仲間に任せて俺は陰で暗躍する~】を投稿しております。内容はタイトル通りで、主人公がある方法でヒロインの力を解放できるものになっています。狙って追放~共々読んで頂けると幸いです。
フォロー、評価をもらえるとすごく嬉しいです。
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