第113話 リックVSエグゼルド(1)
俺は闘技場へ向かうため皇帝陛下と宰相らしき人の後についていくと背後からエミリアが尾行してきているのが見えた。
エミリアは何で俺達の後をついてきているんだ?
エミリアは昔から突拍子もないことを言ったり行動したりするから考えが読めない。
とにかく今は決闘の邪魔さえしなければいい。
まあ皇帝陛下もいるからおかしな行動をすることはないとは思うけど⋯⋯。
そして皇帝陛下の後に続いて数分歩くと広々とした闘技場に到着する。その大きさは縦横50メートル四方はあり、闘技場の周囲には観客席まであった。
城の中にこんな広い闘技場を作るなんて皇帝陛下は本当に戦うことが好きだということが改めてわかるな。
「観客席は一部を除いて強力な結界が張られているから安心しろ。思う存分力をみせるがいい」
「わかりました」
思う存分戦いたいのはあなただろ? とツッコミたい所だがこの国の最高権力者にそんなこと言えるわけがない。
そして俺と皇帝陛下は観客席から闘技場へと降りるが、戦いがはじまる前にやることがある。
「クラス2
「それが噂の強化魔法か。だがそれは補助魔法ではないな」
「それはどうでしょうね。少なくともこれから対戦する相手に伝えることは出来ません」
「違いないな」
あっさりと補助魔法ではないことがばれたけどこれが女神からもらった創聖魔法だと気づくことはないと思う。正直な話手の内を知られたくなかったが皇帝陛下との決闘を創聖魔法なしで戦うことはできないため、あえてみせることでこちらに得体のしれない力があると警戒してくれればいい。
そして俺はさらにもう1つ、鑑定のスキルを皇帝陛下に使う。
玉座の間で初めて会った時にスキルを使おうと思ったが、もしその時に鑑定結果を見てしまったら皇帝陛下の能力の高さに恐れをなし、逃げ出してしまう可能性があったから、自分を背水の陣に追い込むため使用しなかった。
鑑定結果を視るのが怖い。
鑑定を使ってこんな気持ちになるのは始めてだ。
世間やサーシャから仕入れた情報、初めて会った時に感じたプレッシャーから間違いなく皇帝陛下はハインツのようにハリボテの強さではなく、本物の強者であることがわかる。
だけどこれから戦う皇帝陛下の情報を確認しないと勝てる可能性が低くなってしまうため、俺は意を決して鑑定結果を視る。
名前:エグゼルド・フォン・グランドダイン
性別:男
種族:人間
レベル:162/200
称号:グランドダイン帝国皇帝・元勇者・武王・剣王・勇猛果敢・不撓不屈・一騎当千・国士無双
力:2021
素早さ:1002
耐久力:1214
魔力:1211
HP:1632
MP:721
スキル:力強化A・スピード強化A・魔力強化C・剣技A・槍技A・弓技A・格闘技A・大剣A・双剣A・棒術A・投擲・起死回生・剛剣
魔法:精霊魔法6
こ、これは⋯⋯化物か!
称号はどこかの漫画で見たことがあるようなものばかりだし、スキルもほとんどAだ。さらにステータスも高く、俺が勝っているのは魔力くらいしかない。
しかも元勇者なのか。ハインツと親子2代で勇者なんて皇帝陛下の一族は優れた血統を持っているということがわかる。まあ息子の方は才能に胡座をかいたどうしょもない奴だけどな。
これからこの化物と戦わなくちゃならないなんて気が滅入ってしまう。まさかここまで能力が高いとは思わなかったけど皇帝陛下と戦う準備はしてきた。
だから後は戦って勝つだけだ。
俺は闘技場に降り立ち、エグゼルドと向き合う。
空にある太陽から光が降り注ぐ中、観客は宰相と思われる人物とエミリアしかいないため、こちらとしては大勢に力を見られなくてすむから助かるな。
「さあ始めよう」
エグゼルドが大剣を取り出し構えたため、俺も異空間からカゼナギの剣を取り出すと2メートルを越える大剣の切っ先がこちらに向けられる。
あの剣で斬られたら胴体など簡単に2つに分かれてしまいそうだ。
エグゼルドの力は常人とは比べ物にならないため、剣で受け止めるだけでも大変だということが容易に想像できる。
このことを予測していたわけじゃないけどドワクさんからカゼナギの剣をもらっておいて良かった。並みの剣なら受けた瞬間に折れて身体ごと真っ二つにされてしまう所だった。
「それでは僭越ながら私が開始の合図を出させて頂きます。リック殿は1人でよろしいのですか?」
宰相と思われる人が安全な観客席から声をかけてくる。
ん? 複数人で戦ってもいいってことか? だけど中途半端な実力の持ち主だとエグゼルドに一瞬でやられてしまうし、命をかけて戦ってくれる人などいないだろうな。
まあ一応エグゼルドと戦える人物を1人知っているけど⋯⋯。
「大丈夫です」
この戦いは絶対に負けられない。この決闘には俺の命だけではなく、
エグゼルドの強力な攻撃を受け続ける自信はないから、ここは先手必勝で一気に勝負をつけるため、俺は脚に力をいれて宰相の開始の合図を待つ。
それに
「それでは始めて下さい」
そして宰相と思われる人物の掛け声と共に俺はエグゼルドに向かって距離を詰めるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます