第98話 女神は俺を陥れることが好きらしい
「リックさん、私のことを見てください。そうすれば全てがわかるはずです」
「えっ?」
見てくださいってどういうことだ? 現状俺はラフィーネさんに視線を向けているので見ているといえば見ているけど⋯⋯。
「ラフィーネ? どうしました? しばらく見ない間に痴女にジョブチェンジしたのですか?」
「ち、違います! アルテナ様がリックさんにそう伝えれば私の言っていることを理解してくれると⋯⋯」
もしかして鑑定のことを言っているのか? もしそうだとしたらそれだけでラフィーネさんはアルテナ様のことを知っている可能性が高くなる。
「さあ、何をみるかわかりませんけどどうぞ。けどエッチなことはやめて下さいね」
「リックさん、やめて下さいね」
「は、はい」
ルナさんは笑顔で話しかけてきたが、すごいプレッシャーをかけてきたのは気のせいだろうか?
と、とにかくラフィーネさん本人から許可を得ているし鑑定を使って視てみるか。
俺はラフィーネさんに向かって鑑定スキルを使用してみる。
名前:ラフィーネ
性別:女
種族:人間
レベル:55/150
称号:サラダーン州の代表者・好奇心旺盛・お転婆
力:82
素早さ:162
耐久力:121
魔力:2021
HP:232
MP:492
スキル:魔力強化B・簿記・料理・神託
魔法:神聖魔法クラス6
さすが元勇者パーティー、能力が比較的高めだ。称号の好奇心旺盛とお転婆が気になるがそれ以上にスキルの欄にある神託が引っかかる。
普通に考えると神のお告げを聞いたりすることができるということだけどまさかこのスキルでアルテナ様と交信することができるのか?
「どうですか?」
ラフィーネさんは自信満々な様子で俺に問いかけてくる。
今までの神託の実績から疑う余地などないのだろう。
「ラフィーネさんは神託⋯⋯というスキルを持っていますね。これでアルテナ様とお話をされたのかと」
俺の言葉にラフィーネさん、シオンさん、ハリスさんが驚きの表情を浮かべる。
「もしよろしければ何故私が神託のスキルを持っていることがわかったのか教えて頂いても?」
鑑定について知っているのはルナさんだけだ。それだけこのスキルは強力なものだし、他の人に知られたくないものでもある。でも俺はラフィーネさんなら伝えてもいいと思っていた。この国の権力者であり人間的にも好ましい人物で何よりアルテナ様と交信できるような人が今後後ろ楯になってくれれば心強い。そのためにもある程度の情報開示をするとともにどこまでアルテナ様から俺のことを聞いているのか確認しておきたいな。
「俺は鑑定というスキルを持っていて相手の能力を知ることができるんです」
「鑑定⋯⋯そのようなスキルがあるなんて驚きです」
「戦いの際にあればこの上なく便利ですな」
「アルテナ様とお話できる神託もすごいスキルだと思いますが人には言えませんね」
女神の代行者として祭り上げられそうな感じだが実際にそのような状況になっていないということは秘密なのだろう。
「さすが兄さんが認めるだけはありますね。ご理解が早くて助かります。それに私のスキルはいつでもどこでも使用できるものではありませんから」
「え~とそれはどういう⋯⋯」
「私が女神様からお告げを頂けるのは夢の中だけなんです」
お告げか⋯⋯もしかしてテッドと戦う前にラフィーネさんが言いかけたのはお告げのことだったのか。
「しかも内容を選んでみることは出来ないので不便ですよ。昨日なんて今日の夕御飯の内容でしたから」
「そ、それは何というか少し楽しみが減ってしまいますね」
ルナさんはお告げの内容に思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「夢でそんなものを見せられても困ってしまいますね」
「そうなの! 朝からお腹がすいて困っちゃうわ」
そういう問題か? それにしてもアルテナ様は何てものを夢で見せているんだ。
「リックさんの時も会って味方になってもらえ。自分のことを見てもらえば仲間になってもらえることしか言ってくれませんでした。それとルナさんやノノさんと一緒にいる所を見せられて⋯⋯」
何故かラフィーネさんは俺から視線を外し顔を赤くする。
何だかものすごく嫌な予感がするんだが気のせいだろうか。
「リックさんとルナさんが一緒のお布団で寝ていて⋯⋯ルナさんは朝方あられもない姿に⋯⋯」
「いや、それは⋯⋯」
「それにノノさんという小さい女の子の胸をリックさんが⋯⋯だから私も見られると聞いててっきりエッチなことをされるのかと」
マジであの女神は何てものを夢で見せているんだ!
よりによって俺の人間性が疑われるシーンを見せなくても。絶対わざとだろあの女神! 次会った時に痛い目をみせてやるからな!
だけど今の話を聞く限り俺が異世界転生者であることや創聖魔法を使えるまでは知らないようだ。さすがにこの2つに関してはまだ隠しておきたいから黙っていよう。
「そんなことしませんよ。それより俺の方こそサラダーン州の代表と親しくなれることはとても嬉しいです。こちらこそよろしくお願いします」
「まあ、それは良かったわ。ルナさんもよろしくお願いしますね」
「はい!」
こうして俺達とラフィーネさんとの邂逅は女神アルテナ様の神託もあり、良好? なものとなるのであった。
「それではこの後街への案内とラフィーネ様達の歓迎会を準備していますので」
「ありがとう。とても楽しみだわ」
そしてラフィーネさん一行は俺達の後に続いて北門からズーリエの街へ入るのであった。
しかし俺はそのうちの1人が街へ入ることを許さない。
「テッドさん、しれっと街に入ろうとしないで下さいね」
「ちっ! 覚えていたか」
「覚えてますよ。負けたらこの街にいる間奴隷になるって自分から口にしましたからね」
「くっ!」
そんなに悔しそうな顔をしても俺は許さない。けれど本当に奴隷の首輪をはめるわけにもいかないので俺はある提案をすることにした。
そして俺達はラフィーネさんを連れて街の観光に、テッドさんはある紙をぶら下げて北門の所に正座させられているのだった。
「なあにあれ? 本当にお願いごとを聞いてくれるのかしら」
北門を通る人々が皆、正座しているテッドさんへと視線を向けている。何故ならテッドさんがぶら下げている紙にはこう書かれているからだ。
【私はこの街をバカにした愚か者です。罰としてこの街の方々へ奉仕させて頂きますのでなんなりとご命令を下さい】
「くそっ! 何で俺がこんな目に!」
テッドは恨み節を言っているが、憲兵の1人に見張りを頼んでいるのでサボることは出来ず、ただズーリエの街の人々に対して献身的に働くしかないのであった。
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