第27話 助けた亀に連れられて……
次はランク差300の相手と対戦してみよう。
以前ざっくりと予想した通りなら、現状の戦力でランク600までの相手なら戦える。つまり、俺がこれから戦おうとしているランク368の相手なら楽勝って事だ。
「ランク指定368と対戦。」
【ランク368の相手と対戦モードに移行しました。
接続中…………。
本当は怖い童話との対戦が受理されました。侵略ゲートの場所を指定して下さい。】
聞いたことあるな。童話ってのは元々怖い内容だったのを、怖くないよう子供向けに改変しているものがあるらしい。
「ゲートを魔王……」
ダイは魔神になったから魔神軍か。
「ゲートを魔神軍の前へ。」
そうしてゲートを超えた魔神軍プラス二匹のシロクマが目にしたのは、白い砂浜、青い海、照り付ける太陽。
海だった。
「海水浴にはもってこいだね!」
「良い景色だ。」
目の前の綺麗な海で、海水浴とかバーベキューしてみたい。
「ねえ。あれ何やってるんだろ?」
久満子ちゃんが指した方向へ映像を拡大する。
「子供たちに亀がいじめられてるな。」
子供達は性根が腐っているようで、ニヤニヤしながら蹴りを入れていた。
胸糞悪っ!
(可哀そうなジャンヌ。可哀そうな亀を助けてあげてくれ。)
(お任せ下さ…え? 私…可哀そ……)
(早くしないと亀がもっといじめられるぞ。)
(……はい。)
ジャンヌが涙目だ。どうしたんだ?
「こら! 亀をいじめてはいけません!」
子供たちは、なんだなんだとジャンヌに厳しい視線を向ける。
「この亀はよ。俺達が海で遊ぼうとしたら、危険な魔物がいるから入るなって言うんだぜ?」
亀めっちゃ良い奴じゃん!
「俺達に危険なんてある訳ねーじゃん? だから亀に分からせてやってんの。」
ニヤニヤとリーダーっぽい子供が言い放つ。
ムカつく面しやがって!
(ジャンヌ。取り敢えずゲンコツして砂浜に捨てておきなさい。)
ジャンヌは子供達に向かってツカツカと歩いていくと……
「お、大人が子供に暴力を奮うのか!?」
と言ってきやがった。
ジャンヌは指示通り子供達にゲンコツを落とし、気絶した子供達を砂浜に放り捨てた。
ちなみに暴力ではない。痛みを伴う教育だ。
「た、たすかったカメ。ありがとうなんだカメ。」
こいつ喋るぞ?!
しかも亀だからカメって付けとけば良いと思ってやがる。
「どういたしまして。」
「お礼がしたいからオイラの背中に乗って欲しいカメ。」
どっか連れて行ってくれるみたいだな。
魔神軍は亀の背中に乗り、シロクマ達はダイとジャンヌにおぶさっている。
重すぎて亀が移動出来なくない?
「オイラ、中型亀だから積載量3t以上6.5t未満ならへっちゃらなんだな。あ、カメ。」
中型車みたいな奴だな。あとカメって付けるの忘れかけてたよなコイツ?
「しっかり掴まってて欲しいカメ。」
そう言って海の中に潜り、ジェットスキーみたいな速度で進む。
サリリが魔法をかけてくれた為、呼吸は問題ないようだ。
魔法なかったら危なかったよな。何考えてんだ? この亀。
10分程で海底にそびえ立つ豪華なお城に到着すると、お城では亀を助けてくれてありがとうと歓迎され、宴会が開かれた。
これって竜宮城じゃないか?
みんな碌に娯楽のない生活を送ってきた為か、楽しんで飲み食いしていた。
今度何か買ってあげよう。
「そう言えばさっきの亀ってどこいったの?」
「言われてみれば見当たらないな。さっきの亀に映像を合わせろ。」
ディスプレイが先程の亀を映し出す。
亀は竜宮城に住んでいると思われる女性に詰め寄られていた。
滅茶苦茶美人なんだけどこの人……。
「お前、もう
廃亀? ってなんだ?
「オイラはまだ現役で走れるカメ。」
「お前法律知らないのかよ。もう
「で、でも……」
「議会で決定されただろ。安全面を考えて亀検は二年更新。亀検が通らなかったら廃亀ってな。」
廃車と車検みたいな感じか?
「オイラはちゃんとここまで人を乗せてきたカメ。」
「そう決まってるんだから諦めろ。」
「オイラが……オイラが連れてきた人たちは強いカメよ?」
「だから?」
「今謝るなら許してやるカメ。後から謝ってももう遅いんだカメ!」
この亀。今更遅い系の“ざまあ”をやる気か?
いやぁ……やるにしても、魔神軍は別に亀の味方って訳じゃないだろ。
ほんと何考えてんだコイツ? 勝手に他所の人を巻き込むんじゃねぇよ。
「後悔しても知らないカメよ?」
「うるせえ!」
亀は怒鳴られた。てかこの人……めっちゃ美人なのに口悪っ!?
すると、丁度通りかかった魔神軍が目撃してしまい事情を聞き始める。
亀は説明するが、魔神軍の理解は得られなかった。
「それは……この人は悪くないんじゃないですか? 可哀そうではありますが……。」
「俺もそう思う。可哀そうだとは思うけど……。」
「亀検切れてるのに乗ったりしたら危ないよね?」
亀はガックリ項垂れている。
「亀は古くなってくると自我を持ち、こうしてまだ俺は走れるんだと訴えてくるんです。」
竜宮城の女性が補足する。
「もう良いカメ……。」
そう言って亀は竜宮城を去ってしまった。
「時々こうやって古い亀がまだ大丈夫って言いに来るんです。昔、自我を持った古い亀が大暴れして世界が滅びかけた時があったんですよ。それから亀検、廃亀の法律が出来ました。」
なんて物騒な亀だ。
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