俺だけの世界を作って異世界を侵略しよう!
隣のカキ
第1話 イキモノガカリ?冗談じゃねえ
「対戦モード。ランク指定は1で。」
【ランク1の相手と対戦モードに移行しました。
接続中…………。
対戦が受理されました。侵略ゲートの場所を指定して下さい。】
「侵略ゲートって?」
【侵略ゲートとは、相手の世界へ移動する為のゲートです。移動先は相手の生命体が住む所から数キロ程離れた場所がランダムで選ばれます。侵略ゲートを通ると、居場所が相手に知られますので注意して下さい。】
「成程ね。じゃあ、侵略ゲートの場所は魔王ダイの目の前で。」
【侵略ゲートを設定しました。】
魔王ダイは強かった。ゴブリンを瞬殺。人間を瞬殺。そして巨大な門から現れた五体のドラゴンの内一体を瞬殺。
だが残りのドラゴン達は大きく咆哮し、口から光線の様なものを広範囲にわたって吐き出す。ブレスという奴だろう。
轟音を上げ着弾地点が爆発。地面がめくれあがり、周囲には土煙が舞う。
ん? 俺が何をやってるかって?
さっき説明してたろ? 創造神だよ創造神。世界とか生き物とか創る神様ね。
え? それだけじゃ分かんない?
じゃあ、さっき起こった出来事をそのまんま説明するから。
……。
気が付くと、辺り一面には草原が広がっている。
「ここは、どこだ……?」
自分が何故こんな場所で眠っていたのかまるで分からない。
先程まで自分の部屋で眠っていたはずだが……。
立ち上がり周囲を見回すが、穏やかな風が吹くのみで人工物や人の気配が無い。
更に言えば生き物の気配も無い。
「コニチハ。」
背後からの唐突な挨拶。
俺は突然の事に驚き、身構えてしまう。
振り返ると、そこは20代程のスーツを着た温和な雰囲気を漂わせた男性が立っていた。
恐らく自分と同世代くらいだろうか。
そして男性が口を開く。
「コニチハ。」
再度の挨拶。
状況にそぐわない男性の態度に正直混乱している。俺は何故ここで眠っていて、ここは一体どこなのか。その他にも疑問が浮かび上がるが、取り乱しても何にもならない。
ここは、一旦深呼吸。
少しだけ冷静になることが出来たので、その男と話をしてみる事にした。
「こんにちは。」
先ず基本は挨拶から。
挨拶は社会人の基本だ。これが出来るかどうかで第一印象が随分違ってくる。
そして少しでも状況を把握する為、質問を始める。
「ここはどこですか?気が付いたらこの場所にいて、状況が全く分からないのですが……。」
と、男に問いを投げかける。
そうすると、男はまるで歓迎しているかのような態度で答える。
「イラシャイマセ。大五郎サン。ワタシがコナ場所にアナタをお呼びマシマシタ。アナタにオネガイがアルデス。」
この場所に呼ばれた……?
そんな事あるわけが無いと言いたいが、周りには何も無く突然このような場所に連れて来られている現状を考ればあり得ないと切って捨てる事は出来ない。
お願いと言うからには、当然何かしら俺にやって欲しい事があるのだろう。
何をやらされるのかは全く不明だが、知らない事には判断も出来ない。
ここは少しでも情報が欲しい。更に質問してみよう。
「そのお願いとは? 俺は帰れるんですか?」
「お願いトイウノハ……。」
男は周囲を見回しながら言う。
「アナタノ感性に従って、生物をウミダシ文化をムッチャ発展サセテ欲しいデス。ア、帰リダケレバスグ帰レマス。」
胡散臭い外人みたいな喋り方だな。所々日本語間違えてるし。
生物を生み出し文化を発展させる。当然自分にそんな力は一切無い。とういう事は
何かしらのサポートや力を授けるみたいなイベントがあるのだろうか。
そして重要な事だが、帰りたいなら帰してくれるわけだ。とりあえず帰れる事が分かりほっとする。
それならばもう少し詳しい話を聞いてみたい。
「俺に神の真似事をしろと言う事ですか? 普通の人間なのでそのような力はありませんが。」
「イイエ。神の真似事チガイマース!」
大仰に両手を開いて驚いた顔をする男。
リアクション芸人かよ……。
「言うナレバ、イキモノガカリ デース!」
「……は?」
イキモノガカリ? 生き物係?
学級の係かよ!
いやいや、生命創造をそんなノリで言われても正直困る。
「……ちなみに、貴方はどちら様ですか?」
冷静さを失いかけたが、なるべく普通に会話する。相手はこんな場所に俺を連れてきた張本人なのだ。どう考えても常識外の存在である事は間違いない。
ツッコミ所満載の人物に対し、冷静に返答出来た自分を褒めて欲しい。問題はツッコミ所が多すぎて冷静さを保つのが難しいことであるわけだが……。
「申しオクリマシタ。ワタクシ、コーユー者デス。」
名刺を差し出してくる。
なんだか普通のサラリーマンのようである。
まあ……。普通のサラリーマンはこんな場所に連れてきたり、胡散臭い外人みたいな喋り方はしないのだが。
なんだかなあ…と思いながら名刺を受け取る。
疑問点だらけではあるが、一先ず受け取った名刺に視線を落とすと名刺にはこう書かれていた。
(仮想世界システム ジ・アースプロジェクト
システム担当兼文化研究員 ジョーダン・ジャ・ネーヨ)
冗談みたいな名前だった。
自分でも顔が引き攣っているのが分かる…が名前に文句を言っても始まらない。
相手の機嫌を損ねるのも得策では無いので、名前の件については一旦頭の隅に追いやり更に質問を続ける。
「この仮想世界システムと言うのは?」
努めて冷静に振る舞う俺。
恐らく今が人生で最も冷静に振る舞おうとしているだろう事は間違いない。
「シミュレーション仮説は御存じデスカ?」
「聞いたことがあります。確か…我々が生きているこの世界は、高度な文明を持つ知的生命体が作り出したコンピューター上でシミュレートされたものではないか? と言う説の事ですよね。」
「ソノ通りデス。アナタはワタシにトッテ、そのシミュレーション世界の住人トイウ事です。ワレワレが開発シタ仮想世界システムにアナタは住ンデイマス。」
「そんな……まさか!?」
信じられない……が、そう考えれば人間一人をこんな場所に放り込むなど訳無いだろう。実際、こんな何もない場所に連れてこられている事だし。
「ソノマサカ、デス。アナタにトッテハ信じラリナイ話デショウガ、事実デス。」
「信じ難いですが、一旦その話が事実としてお話を伺いましょう。どうして俺を選んだんですか?」
「モチロン理由がアリマス。ワレワレの世界デハ現在、スシ、天ぷら、侍、忍者、家出神待ち少女、イロイロナ日本文化ガ流行シテイマス。」
ほうほう。
「仮想世界システムを日本人に使ッテモライ、文化を創造シテ欲シイノデスオナシャス。」
日本文化ってのは他から見ると、やはり独特なのだろうか?
あと、家出神待ち少女は文化ではない。
「それだと、俺個人を選んだ理由にはなってないのですが……。」
俺の発言に対して男は何を馬鹿な事を、と言わんばかりの顔をして告げた。
「アナタ家出少女ムッチャスキーの人デスヨネ? ソレガ理由デスヨ。」
「え?」
「エ?」
その瞬間、世界は凍り付いた。
「……。違いますけど?」
ムッチャスキーって何だよ。
「御前戸大五郎サンデスヨネ?」
「折戸大五郎ですけど。」
「……。」
「……。」
またも、空気が凍り付く。
「だああありゃっしゃあああぁぁー!!!」
「うおっ?!」
「人違いかよーー! めっちゃ時間かけて準備してきたのにいぃいぃいぃぃ!」
突然切れだすジョーダンさん。
先程までの雰囲気はなんだったのかと思うほど取り乱し奇声を発している。
「あの……。」
一旦落ち着いてもらおうと声を掛ける。正直怖い。
「エセ外人みたいなトークでウケまで狙ったのによおうおうおうおう!! 折戸大五郎だと? 俺とお前と、大五郎~♪ ってか?!」
彼はかなりエキセントリックにキレている。
「バッカヤロー!! ムッチャスキーって何だよ!! 意味わっかんねえんだよーおうおうお-う!!」
おぉう。
何だか知らんが人違いだったようだ。先程までの話し方はどうやらキャラ付けらしい。
あと、ムッチャスキーと言ったのはそっちだ。
ひとしきり暴れて落ち着いたのか、急に静かになったジョーダンさんは初回同様温和な雰囲気に戻っている。
そんなニコニコしても、もう誤魔化せねえよ。
「ところで、大五郎さんにお願いがあるのですが。」
「あ、はい。」
先程のブチギレシーンは完全に無かった事にするようだ。
いくら何でもそりゃ無理があるだろ。
「仮想世界システムを使って文化を創造して下さい。」
成程。どうしても先程の事は無かった事にしたいようだ。
またキレられても困るので乗っかっておこう。
仮想世界システムには正直興味がある。面白そうだから気の済むまでシステムを弄り倒してみたい。使いこなせれば人間が想像しうる全ての望みがそれだけで叶ってしまいそうだ。
金、女、地位、何だったら超能力みたいなものまでイケそうな気がする。そして、こんなチャンスなんてもう二度とないだろう。
となれば返事は決まっている。
「やります!」
ニコっと笑顔のジョーダンさん。やる、と返事をした途端ジョーダンさんめっちゃ良い笑顔。
いやいや、さっきのブチギレシーンは本当に何だったのか。
「ありがとうございます。では今日からあなたの役職はイキモノガカリです。改めましてよろしくお願いします、大五郎さん。」
ジョーダンさんが笑顔で握手を求める。
「こちらこそよろしくお願いします。」
俺はイキモノガカリで決定らしい。
その役職のネーミングセンスどうにかならんの?
「それではシステムについて説明していきます。」
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