第14話  昼休みは姉以外の人間と過ごしたい

 昼休みになると、学校中が一斉に騒がしくなる。


 ここから約一時間、誰もが自由になる時間である。


 弁当箱を広げて、お昼ご飯を食べたり、仮眠をとる生徒や友人と会話をしたり、スマホのアプリゲームをする生徒もいる。


 皆、それぞれ席を離れ、ほとんどの生徒がグループでお昼ご飯を食べている。


 敦也は、まだ、高校入学して、二日目、それに地元の学校から進学していないため、一緒にご飯を食べる生徒がいない。


 いないのはいいのだが、なぜか、自分の席を囲んで食べる生徒がいる。


「あっちゃん、お弁当、食べないのですか?」


 と、敦也の前には唯が座って弁当を広げている。


「別に緊張しなくてもいいんじゃないの? いつもの事なんだから……」


 敦也の左斜めに座って、もう、弁当を食べ始めている里菜。


「まぁ、そんなに落ち込まない。女子高校生と、昼休みに弁当を一緒に食べる事だけで、あっくんは、幸せ者」


 敦也も弁当を出している。出しているのだが、食べづらい。


 周りの目が気になる。


 だが、この三姉妹は、それを全然感じていない。


 これが、彼女とか、男子の友人や女子の友人などだったらいい。


 それだったら、普通に話をしながら楽しくお昼を楽しんでいるのだが、これは、ある意味、拷問だ。


 男同士で、お昼と共にしているクラスメイトが、羨ましい。


(大丈夫だ。部活に入れば、同じ部活のクラスメイトと食べる事が出来るのかもしれない。後は、同じ趣味を持つ人だったら尚更嬉しい。ここは我慢だ。我慢すればきっと……)


 自分の机には、普通の水筒と弁当がある。


 弁当箱を開けて、敦也もお昼ご飯を食べ始める。


 四人共、弁当の中身は同じであり、別に変ったところはない。


「ねぇ……。なんで、姉ちゃん達が、ここにいるわけ? 女子同士で食べろよ。女子同士で……」


 敦也は疑問を投げつけた。


「皆さんとは、しっかりと仲良くしていますよ。お弁当を誰と食べても文句はないと思いますが?」


 と、唯が、敦也の質問に回答する。


「いや、だけどさ……。俺だって、男子同士で食べたいんだけど……」


 敦也は卵焼きを一口で口の中に入れる。


「どうせ、まだ、友達出来ていないんでしょ? 一人で食べるよりも誰かと一緒に食べた方が楽しいじゃない」


 もっともな意見を述べる里菜。


(いや、それはそうだけどさ……。その友達作りを現在、邪魔しているのは誰? 姉ちゃん達だよね? マジで……)


 もう、心の奥底が涙の海で埋め尽くされている敦也にとって、姉達の存在は、邪魔でしかない。


 嫌いというわけではないが、せめて、学校くらいは自重して欲しい。


「私達は、私達の意志でいるから心配しない。それに友達は、少しずつ作ればいい。ここはアウェイ状態、地元出身じゃないんだから、今は、出来なくて当然。ほとんどのグループは、最初からできているもの」


 咲弥が、ウインナーをパクパクと食べながら言う。


 三人が言っていることは、まともな事だと思う。


 敦也は、心から願う。


 早く、同等な友人が欲しいと——

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