再会

 ビュレットの背後。照明に照らされた影が盛り上がり、豪華だが時代遅れのドレスを纏った一体の人形がその陰から現れた。以前に現れた人形とは違い、等身大サイズの人形。


 酷く見覚えのある、ルーベスの二度と見たくなかった顔をした女だった。

その顔を見た瞬間、どす黒く燃えるような怒りが生じる。血を急激に沸騰させたかのような熱さが体中を駆け巡る。


「アデライン‼」

「ご機嫌ね、ルーベス。私と再会できて、そこまで感動に打ち震えてくれるなんて嬉しいわ。貴方に殺された母親として誇らしいわよ」


「俺も嬉しいよ。こんな機会を与えてくれて。なんせ二度殺してこその故人だからな!」

「せっかちね。人として嫌われるわよ。もう何度も嫌われてるから気にしないのかしら?そんな顔をしてるのだし」

「お前の性根が、俺の顔に受け継がれたんだろうさ」


 ルーベスは樽から剣を引き抜くと、アデラインに駆け寄り間を詰める。剣がまだ届かない距離の最中、アデラインの影が足元を這って伸びて来る。影の中から剣を手にした人形の腕が何本も生える。ルーベスに向けて剣を振りかざして襲う。

 ルーベスはとっさに後方へ飛び退いた。今いた場所を、影から生えた剣を持つ腕が襲い、床をデタラメに傷つける。

 暫くの間、ガチャガチャと動き続け、床だけでなく壁や棚などを見境なく切り裂く。


「ヴィクター、この体はお転婆がすぎないかしら?」

「これでも君の品性に合わせて作ったつもりだけどね」

「口の利き方には気を付けた方が良いわよ。口は災いの元って言うでしょ」

アデラインが影から一本の腕を生やした。刺さるか刺さらないかの瀬戸際でビュレットの身体に剣を突きつける。


 その隙を狙ってルーベスがアデラインの頭上に転移して、剣を振り下ろす。

アデラインは地面の影から生えた腕から二本の剣を受け取る。剣を交差するように頭上でかかげ、ルーベスが振り下ろした剣を防ぐ。

 地面に落下をはじめるルーベスの身体に向かって、影から腕が生えて剣を一斉に向けた。

 ルーベスは危険を察知して落下する前に転移する。元いた場所に転移し、アデラインから距離を取る。


 アデラインも後を追い転移をする。ルーベスの体を影の届く距離に間を詰める。ルーベスは地面の影から生えた腕が持つ剣を自身の剣で打ち払い、大きなテーブルの前に転移する。引き出しを開けてサブマシンガンを取り出し、影から生えた腕に向かって銃を連射する。

 

 弾丸が命中し、剣を握る人形の腕を破壊する。今度は狙いを変え、アデライン本体に銃を向けて撃つ。しかし、彼女に向けて撃った弾丸は、体に当たる前に赤黒い炎に包まれ燃え尽きる。

 

 ルーベスはアデラインの後方に転移しながらマシンガンを連射する。背後からの奇襲に数発の弾丸が彼女の体に命中した。弾丸を浴びながらもアデラインがルーベスに振り返る。 

 

 彼女が視線で捉えた弾丸が、再び赤黒い炎に包まれ燃え尽きる。それ以上、ダメージを与えられず、銃の弾倉が無くなり空打ちを始める。


「この方法ならいけるか──」

 

 弾倉を外し投げ捨てるルーベス。


「でも残念ね。せっかくの武器も弾切れじゃない──」

「これで終わりと、誰も言っていないがな」


 ルーベスは大時計へと向かって走り、振り子の後ろに手を回す。隠してある弾倉を取り出してサブマシンガンに装填。そしてアデラインに狙いを付けた。

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