第4話 パーティーは突然に
「ごちそうさまでしたっ。ふぅ~食った食った~♪」
ご飯四杯と大盛りの野菜炒めを完食。
さすが、スポーツをしているだけのことはある。
「よく食べるなぁ……」
かと言う僕は、使った食器を片付けて部屋に戻ると、管理人さんがあのパンパンのエコバッグからポテトチップスの袋を取り出した。
テーブルの上にズラッと並べられた、お菓子の数々。
そして、なぜか冷蔵庫から、ジュースのペットボトルを持ってきた。
(いつの間に……)
そんなこんなでローテーブルの上には、まるで今からパーティーが始まる…――ん?
そういえば、食後にしては量が多いような……
「あの、これは?」
「えへへっ」
「ん?」
話を聞くと、どうやら新しい学生が来ると、その子の部屋で歓迎会ならぬ、ちょっとしたパーティーを開く決まりがあるらしい。
それで、今回は僕の部屋で行われるという。
「蘭ちゃん、二人から返事来た?」
「なーんにも」
スマホを見ながら首を横に振った。
「そっかー。じゃあ先に初めてよっか」
二人?
よくはわからないけど、どうやら参加できるメンバーだけですることになったようだ。
それから、全員がジュースの入ったコップを持ったところで、
「乾杯の音頭は私がするねっ」
「ヨッ!
いや、それはあまり褒め言葉ではないような気が……まあいいか。
「真ちゃん! アパート
「カンパ~イッ」
「……ふふっ。乾杯っ」
……。
…………。
………………。
それから、一時間が経った頃。
「ぐがぁ〜……Zzz」
美風先輩は、お腹を掻きながら眠っていた。
「気持ちよさそうですね」
「蘭ちゃん、いつも九時に寝ちゃうから」
「はっ、早いですね……」
ピンポーン。
「うん?」
「あっ、来た来たっ♪」
管理人さんが玄関に向かうと、扉を開ける音と共に聞き慣れない声が――
「ふわぁ〜……眠ぃぃぃ……」
「今日の主役はどこ〜〜〜っ?♪」
部屋に入ってきたのは……二人の金髪ギャルだった。
一人は髪を下ろしていて、もう一人はツインテール。
色違いのキャミソールとショートパンツという、なんともきわどい格好だった。
胸がこぼれそうな、なんとも危なっかしい。見ていてこっちがハラハラする。
「あっ、その子〜?」
「そうだよ~」
「ふぅ〜ん」
「す、鈴川真ですっ、昨日からここで――」
「きゃぁ〜可愛いぃぃぃ〜っ♡」
突然、ツインテールのお姉さんに急に抱きつかれた。
「……っ!!?」
頬を擦り付けてきて、全身を撫でられる。
「やっ、あの……っ」
「へぇ〜、可愛い反応するじゃ~ん♡」
「ほんとだなっ」
と言って、さっきあくびをしていた方のお姉さんが空いている方に座るなり、同じように撫でてきた。いや、撫で回してきた。
「あっ、あの……」
雰囲気は違うけど、顔立ちがよく似ている。
ということは、もしかして、
「双子さん……ですか?」
「ビンゴっ♪」
「よくわかったな」
……本当だった。
「あたしは姉の
「セクハラじゃないも~んっ。スキンシップだも~んっ」
スキンシップって……。
「あっ、わたしは妹の
そう言って、バッチリなウインクを決めた。
二人は二〇四号室の住人で、双子の姉妹。
今わかる情報はこれだけだ。
「えへへっ♪ 仲良くしようね~」
「は、はい……」
仲良く……できるのかな……?
そんなことより、さっきから髪が当たって、無性にくすぐったい。
「わぁ~ほっぺた柔らか~いっ♪ おもちみた~いっ」
ムニッ、ムニッ。
「…………っ」
「すっごい肌ツヤツヤだけど、なにかしてるの?」
「特にこれといったことは、なにも……」
「ええぇー? ホントにー?」
「ほんと、どんなケアしてんの?」
「し、
「それだけじゃないんでしょ~? ツンツン♪」
「そ、それだけですけど……あの、頬っぺたを突かないでもらえると……」
そろ~り…――――
「……っ!!?」
「おや~?」
梨花の手が、真の体をなぞりながら下の方に到達したところで、目の色が変わった。
「あっ、あの……んんっ」
「おぉ〜これはこれは……っ♡」
「どしたー? ……へぇー、そうだったのかっ」
その様子を見て、管理人さんが慌てて叫んだ。
「りっ、梨花ちゃん! 真くんが困って――」
「真……くん?」
すると、
「んん〜……っ! ……おっ……リカリナじゃん……」
寝ていた美風先輩が目を覚ました。
「あっ、ランラン起きたっ♪ おはようーっ♪」
「おはよ……ん? 今来たのか……?」
「ついさっき来たんだよー」
「ふーん……。てか、もう一時間経ってるじゃん……」
スマホで時刻を見てから起き上がると、
「ふわぁぁぁあああ~~~……」
長い
「ところで、さっき……真くんって……聞こえたんだけど……?」
……。
…………。
………………。
それから、真が男の子だということを香織が説明すると、
「可愛いから、オトコの娘でもなんでもいい〜♡」
また梨花がギュッと抱きしめた。
「可愛い……? 僕が……?」
「その反応が可愛いんだ」
と言って、梨奈がペラッと裾を捲ってきたのを真が慌てて押さえた。
「ふっ、そんなに照れなくてもいいだろ?」
「あ、あの……ううぅぅぅ……」
それから、穂波姉妹の気が済むまで付き合わされる、真なのだった。
「………………」
その様子を蘭はなにも言わず、ただただ見つめていたのだった。
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