第129話「いいことって、ぐ、具体的には……」「子供を作ったりとか?」
「いいことって、えっと……ここでか?」
「そ、ここで♪」
「ぐ、具体的には……」
「うーん、そうだね。子供を作ったりとか?」
「えっと、いや、あの、え!? こ、子供を作るって……」
ど、どどどどういうこと!?
いや意味は分かるんだけど、なんでルナはみんながいる状況でそんなことを言ってきたんだよ!?
つまりみんなに見られながら『そういうこと』をするってこと!?
ルナってそういうプレイが好きなのか?
でも俺にはもうアリエッタという大切なパートナーがいてだな――
「ふふっ、何を想像したのかなー?」
「それはその……」
「というわけで。人生ゲーム、しよっ?」
「…………は?」
俺はたっぷり5秒ほど固まってから、間抜けな声を返した。
「人生ゲームだよ人生ゲーム」
「……え?」
「あれ、ユータくんは人生ゲーム知らない? 家を買ったり、子供を作ったりするボードゲームなんだけど」
「いや、もちろん知っているけど……ああ、子供を作ったりってそういうこと……」
俺は色々と納得した。
「うん、そういうこと♪」
「……男の子の純情を
抱き着かれながら「いいことしよ?」とか「子供を作ったり」とか言われたら、普通そういう想像をするだろ!?
「あははー、勝手にえっちな想像したユウタ君が悪いんだよーだ」
ルナが小悪魔な笑みを浮かべながら、俺の頬をつついた。
その後はルナが持ってきた「姫騎士・人生ゲーム」を楽しんだ。
しかし人生ゲームは運要素が絡むものの、様々な選択肢があってかなり競技性のあるゲームである。
そのため、ここまでは割と仲良くコミュニケーションを取っていたアリエッタとユリーナが、ゲーム開始早々、激しくやり合い始めてしまった。
2人とも真剣な表情でルーレットを回し、追突(同じマス目に止まること=最もケンカの原因になりやすい要素)しただのされただのなんだの、4年に一度のオリンピックの決勝戦でもやってるのかよってくらいのガチバトルを繰り広げる。
しかしこのゲームにおいては、ユリーナの方が一枚上手のようだった。
「はい、またわたくしの勝ちですわねアリエッタ」
「ぐぬぬぬぬ! もう1回よ、もう1回!」
「残念ながら、何度やっても結果は同じですわよアリエッタ。あなたは資産運用というものがまったく分かっておりません。安全に資産を形成しながら、時に借金というリスクを負ってでもリターンを取る。そのリスク・リターンの判断がまったくといっていい程なっておりませんわ」
「誇り高きローゼンベルクが他人に借金なんてするわけないでしょ。バカにしないでよね」
「これはゲームだろ? ゲームで借金するくらい別にいいじゃないか」
思わず口を挟んだ俺だったが、アリエッタは興奮冷めやらぬといった様子で、おもちゃのお金や移動用の駒、各種イベントカードを初期状態に戻していく。
「良くないの! たとえゲームでも、ローゼンベルクは他人にお金を借りたりはしないの! たとえ落ちぶれても、他人にお金を借りるくらいなら潔く死を選ぶわ!」
「これ割と本気で言っているんだよなぁ……」
アリエッタ・ローゼンベルクとは一事が万事、そういう女の子である。
というかローゼンベルクという姫騎士家系が、そういう家系なんだよな。
アリエッタはそれを色濃く体現しているだけで。
「というわけでもう1回よ。ローゼンベルクの炎が清く正しく美しく、そして最強であることを証明してあげるわ!」
ローゼンベルクの炎が、人生ゲームになにか関係あるかなぁ……。
「構いませんわ。ローゼンベルクをこうも簡単に捻りつぶせるなんて、なかなかあることではありませんからね。さぁさぁ何度でもかかってきなさいな。返り討ちにして差し上げますわ」
ユリーナもノリノリだなぁ。
アリエッタを凹れることが、よっぽど嬉しいんだろうなぁ。
「くぅぅ、バカにしてバカにしてバカにして! 今に見てなさいよ!」
しかし絶対に借金をしないというセルフ縛りプレイをするアリエッタは、結局ユリーナに全戦全敗してしまい、キララと一緒になって悲しみのやけ食いを始めたのだった。
こうして祝勝会は楽しく盛り上がって、アリエッタとユリーナも仲良くなって(?)、幕を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます