第126話 アリエッタとの恋人としての会話

 事情聴取が終わり、すっかり夜も遅くなってから。


 俺はアリエッタの部屋でお話をしていた。


 両想いとなって初めてとなる『恋人としての会話』である。

 むふふ。

 ヤバい、にやけるのが止まらない。


「きょ、今日は大変だったわね」

「お、おう。なにせ最強の魔獣ドラゴンの討伐だからな」


「つ、強かったわね」

「お、おう。なにせ相手は最強の魔獣ドラゴンだからな」


「ぜ、全然攻撃が通らなくてびっくりしたわ」

「お、おう。なにせドラゴンは最強の魔獣だからな」


「じ、事情聴取も遅くまでかかっちゃったし、せっかくのブレイビア祭だったのに、やんなっちゃう」


「お、おう。なにせ最強の魔獣ドラゴン討伐だからな」


 お互いに分かりきった内容で、何の中身もない会話なんだけど、推しの子アリエッタではなく恋人アリエッタとの会話だと思うと、それだけで幸せな気分になってくるから不思議だ。


 今なら空も飛べちゃいそう!

 I can fly!


「っていうかさっきからユータ、同じ事ばっかり言ってない?」

「悪い、ちょっと緊張していて。上手く頭が回らないと言うか。空なら飛べそうなんだけど」


「ふふっ、風魔法を使うルナじゃないんから、ユータは空は飛べないでしょ」

「まぁな」


 そこで会話が止まってしまい、沈黙が場を支配する。

 しかしそれは決して嫌な沈黙ではなく、ドキドキとそわそわを伴ったこそばゆい沈黙だった。


 チラリと脇に視線を向けると、アリエッタのベッドが目に入る。


 今までは添い寝するだけだったが、恋人になった以上はその、『そういうこと』もしたり、されたり、しちゃったり、されちゃったりするのだろうか!?


 いやいやでもでも、まだ俺たちは学園生だしな。

『そういうこと』は少し早いかもしれない。

 子供は計画的に作らないと夫婦仲にも影響するって、昔ネットかなんかで見たことがあるし。


 などと俺が若干、邪なことを考えていると、コンコンと部屋の扉がノックされた。


「こんな遅い時間に誰だろ? もしかしてブレイビア騎士団の聴取官かな?」

「聞き忘れたことがあったのかもしれないわね。ちょっと出てくるわ。はーい。今、出まーす」


 アリエッタが共用ルームを抜けて部屋のドアを開けると、


「夜分に失礼しますわね、アリエッタ・ローゼンベルク」

 ユリーナの声が聞こえてきた。


 ユリーナ?

 こんな時間にどうしたんだろう?

 知らない仲でもないし、俺もちょっと顔を出してくるか。


「なにユリーナ。こんな時間になにか用?」


「用があるのは、あなたではなくユウタ様ですわアリエッタ・ローゼンベルク」


「俺?」

 俺が顔を出すとユリーナにっこりと極上の笑みを浮かべた。


「ええ。本日のジラント・ドラゴンとの激闘の祝勝会をしようと思いまして、こうしてお声がけに参ったと言うわけです」


「祝勝会なら、学園が後日やってくれるって言ってたじゃない」

「それとは別に、気のおける仲間との内々の会で、今日の激闘を振り返りつつ親睦を深めたいと思いまして」


「もう遅いし、別にそんなのしていらないわ。じゃあね、お休み」

 アリエッタはにべもなく断ったのだが、


「あら、どうしましょう? わたくしもうすっかりその気で、準備をしてきてしまいましたわ」


 その言葉とともにユリーナの後ろから大きな荷物を持ったキララとクララが現れた。


 特にキララは、それはもう大量の荷物を抱えて&背負っている。

 今から登山かキャンプにでも行くのかって感じだ。


「そのまま持って帰ればいいでしょ」

 しかしそれを見ても、アリエッタはツンツンつれない態度を崩さない。


 なんだかいつもよりイラつき度合いが大きい気がする。


 もしかして、2人きりで話していたのを邪魔されて怒ってるのかな?

 なーんて俺の想像は、あながち間違っていないかもしれない。


 さすがデレエッタ。

 可愛い奴だな、もう!


 そんなことを考えながら、俺はどうにも多すぎる荷物について、尋ねてみた。

 さすがに気になる。


「しかしすごい荷物だな。いったい何が入ってるんだ?」


「おにーさん……(´;ω;`)」

 すると大量の荷物を持ったキララが、なぜか涙目で俺を見た。

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