第100話 キララってさ、ちょっとサイコパス感あるよな……

 さらにアリエッタとユリーナの向こうでは、キララが一人で無双していた。


「せいやー! キララライジングドラゴンアッパー!」


 巨大なトラ型の魔獣のボディのど真ん中を、某・有名格闘ゲームの某・昇〇拳のようなド派手なアッパーパンチで、キララは下から突き上げるように拳でぶん殴る。


 ドゴンというかゴスンというか、車が壁に衝突したようなもの凄い衝撃音がして、キララの背丈の3倍はあるであろう魔獣の巨体が、重力を無視してフワリと浮いた。


 キララはさらに、空中に浮いたトラ型魔獣の下に潜り込むと、


「いっくよー! キララン☆レボリューション!」


 一時的に「怒りの精霊フラストレ」とのコンタクトを深め、戦闘能力を向上させた状態から繰り出される、必殺のラッシュ攻撃を放つ!


「キラキラキラキラキラキラキラキラっ!」


 超高回転の左右のパンチの連打が、ガトリング砲の連射のごとくトラ型魔獣を何十発、何百発と突き上げる!


「キララン☆カカトオトシ!」


 そしてトドメとばかりに、1回転からの遠心力がバチクソに乗ったかかと落としがトラ型魔獣の脳天に直撃した。

 キララのかかとは勢いそのままに魔獣の頭部を半ばまで砕きながら、魔獣の首を身体から分断する──というか引きちぎる。


 ヒィィィィッ!?

 魔獣の首を、かかと落としで強引に引きちぎったぞ!?

 絵面がちょっとグロいよキララさん!(思わずさん付け)


 しかもキララ本人は終始ニッコニコの笑顔ときた。


 首をちょん切った後に

「いぇーい!(≧◇≦) キララの勝っちー!(≧▽≦)」

 とか言って超いい笑顔でピースしてるし。


 サイコパス感あってマジで絵面がヤバイんだが!


 そして改めて、キララの攻撃力はヤバすぎだと思った。

 しかも純粋物理攻撃のみで殴り殺すのが、明らかに他の姫騎士と戦い方が違い過ぎる。

 全部知ってたけども!!


 あとこの戦いを見て少し思ったんだけど、頭脳戦の側面もある姫騎士同士のデュエルよりも、破壊衝動に突き動かされて好き勝手暴れるだけで知能の低い魔獣と戦う方が、キララは圧倒的に強いな。

 本人のアホさがあまり問題にならないから、性能の高さを遺憾なく発揮できるのだ。


 そしてもう一人の頼れる仲間ルナはというと。

 やや攻撃力に欠けることもあってか、高速移動魔法エアリィ・ウイングで細かく空中機動をしながら、残るオオカミ型の魔獣3体にしつこくまとわりついていた。


 ウインド・バルカンでペシペシ小さなダメージを与えつつ、残る魔獣たちの意識が群衆や第3王女に向かないように、絶妙な距離感で上手く自分に引き付けながら時間を稼いでいる。


 かなり余裕はあるみたいだし、すぐにアリエッタやユリーナ、キララが援護に来るだろうから、魔獣の方はもう大丈夫だろう。


 リューネとクララも第3王女の近くで傷ついた護衛の姫騎士を治療しながらスタンバっているし、安心してみんなに任せておける。


 ここにいるのはそれだけの仲間たちだ。

 俺は俺のやるべきことをやらないとな。


「どうやらお前の召喚した魔獣は、俺の仲間が制圧してくれそうだぞ?」


 俺は闇落ち姫騎士と激しく切り結びながら、状況が完全に俺たち有利になっていることを誇示する。

 そうは言っても、まだ群衆の避難は終わっていないからな。

 上からの不意打ちをかわされたりと結構手ごわいし、諦めて投降してくれるに越したことはない。


「くっ、高位魔獣がこうも簡単にやられるとは、貴様ら何者だ……!」


「ブレイビア学園の1年さ。闇魔法を使う元ブレイビア・レッドの姫騎士さん」

「……私のことを知っているのか?」


「少しだけな。愚かにも姫騎士至上主義に傾倒し、性格に難もあってブレイビア騎士団を追放されたんだろ?」


 俺はソシャゲ知識を披露した。

 ソシャゲのアイツは、多分コイツで間違いない。

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