第96話 フードを目深にかぶった怪しい人物
「あなたも気付きましたか、アリエッタ・ローゼンベルク」
ユリーナも俺をバックハグしたままで、アリエッタの言葉に同意する。
どうも俺の肩越しにアリエッタと同じ『何か』を見ているようだ。
(ユリーナは女の子にしてはスラリと背が高く、俺は男子にしては背が低いので、あまり身長差がない。あと首元で話されると、首とか耳がしっとしとした吐息でさわさわして、どうにもいけない気分になってしまうんだ! 狙ってやっているのか!?)
「妙って、どうかしたのか?」
2人の意図がさっぱりわからなかった俺は、やや困惑気味に問い返した。
強いて言うならアリエッタ・ルナ・ユリーナの3人に抱き着かれている上に、リューネ、キララ、クララを周りに
しかも全員が超が付く美少女だし。
けれどアリエッタとユリーナのシリアスな口調から察するに、どうもそういうことではなさそうだ。
「ユータ。パレードの反対側の観客の中。右斜め前方にいる灰色のローブの人を、気付かれないようにこっそり見てみて。こっそりよ。バレないようにね」
アリエッタに念押しするように言われた俺は、パレードを挟んで反対側の観客にさりげなく視線を向けた。
「えーと、反対側の右斜め前方の灰色のローブの人だよな? ……ああ、いるな。背は低めだし、フードを被って顔は見えないけど、細身だし女の人かな?」
そこにはローブのフードを目深にかぶった、女性と思しき人物がいた。
「あの人、変だと思わない?」
「うーん? そうだな……せっかくのお祭りなのに、フードを目深に被っているのはたしかに変かもな」
「あれじゃ、せっかくの仮装パレードもよく見えないよね?」
「変な人もいたもんだよなぁ。日差しが苦手なのかな? 肌が弱いとか? 今日は朝から天気がいいし」
女性だとしたら、単純に日焼けしたくないって線もあるか。
「ユウタ様、それだけではありませんわよ。あのローブの人物はさっきからずっとジッとしたまま、フードを目深にかぶって微動だにせずに静かにあそこに居続けておりますの」
さらにユリーナが別の視点からアリエッタの話を補足する。
「……普通、お祭りを見にきたら、あちこちキョロキョロするよな」
「まるで何かのタイミングを計っているみたいに見えますわね」
「なるほど、1つだけならまだしも2つも怪しいところがある、か。たしかにそれは妙だな」
「1つだけなら偶然も考えられるけど、偶然が2つ重なったらそれはもう必然と言うべきね」
「警戒しておいて損はないですわね」
「そういうこと。お祭りを邪魔しようとする不逞の
「あら、珍しく意見が合いましたわね、アリエッタ・ローゼンベルク。わたくしと同じ知見に立てたことを、褒めて差し上げますわ」
「ゲッ……」
「ちょっと、ゲッとはなんですか! ゲッとは! 失礼ですわね!」
「ごめんなさい、つい……」
「つい、なんですのよ?」
「つい本心が」
「――っ! わたくしを馬鹿にして! これだからローゼンベルクは!」
シリアスな話の最中に、またもや売り言葉に買い言葉で、低次元な言い合いを始めたアリエッタとユリーナを俺は慌てて仲裁する。
「ああもう、今はそれはいいだろ。ケンカするほど仲が良いのは分かったからさ」
「仲良くなんてないわよ」
「仲良くなんてありませんわ」
ビタでハモってんじゃん。
完全にユニゾンしてんじゃん。
マブダチレベルで仲良しこよしじゃん。
もはや心が通じ合ってんじゃん。
……言うと余計に話がこじれるから、言わないけど。
「で、どうする? もっと近づいて監視するか。ワンチャン、話しかけてみるとか」
「いいえ、下手に動くと怪しまれるわ。ここから見ているのがバレないように、今まで通りに振る舞いながら、こっそり監視しましょう。本当にただ偶然が重なっただけなのかもしれないし」
「わたくしもその意見に賛成ですわね。わたくしたちはただの観客。何の権限もありませんし、ここは警戒しつつの様子見することを提案しますわ。何もなければそれに越したことはありませんから」
「アタシもそれでいいと思うよ」
「私も異論はありません」
アリエッタとユリーナは様子見しつつ監視をすることを提案し、ルナやリューネも特に異論はないようだった。
と、そこで俺はソシャゲのとあるイベントを思い出した。
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