第16話
目覚まし時計が鳴る少し前に目が覚めた。
着替えて顔を洗う。
そうして早速朝食の準備に取り掛かった。
さて。今日もギルドに行こうか。早く稼いであの男と縁を切ってしまいたい。
でもテラの都合もあるから後から聞いて見なくちゃ。
はぁ。リラのおかげですぐに5ディア稼げたけれど、今度は自分で何とかしなければ。
私が引き起こしたことなのだから。
とりあえずリラには次は何もしないようにと声をかけておいた。
分かっているかは微妙だけれど。
連れて行かないという手もあるけれど、万が一私たちがいない間に外に勝手に出たりしたら怖いので念のために連れて行かなければいけない。
ため息をつきながら出来上がった朝食を並べていると、階段を誰かが降りてくる足音が聞こえた。
振り向けばそこにはリラが立っていた。
いつもなら私が呼びにいかない限り下に降りてくることはほとんどないのに。珍しい。
「おはよう、リラ。どうしたの?」
「今日は行く?」
「どこに?」
「討伐」
討伐!?もしかして昨日みたいなことするのかってこと?
うーん。テラに聞かないことには分からないし、それにギルドに行くとしてもどんな依頼をこなすかは分かんないし…。
「まだ分からないかな?」
「分かった。」
分からないと知ったリラはあっさりと返事をした。
何か行きたいところでもあったのだろうか。それとも昨日のスライムが実は怖かったとか?
「リラ、もし行くことになってもお留守番が良かったらそれでいいんだよ。」
「大丈夫」
「そ、そう。」
結局聞いてきた理由は分からずじまいか。
まあいっか。とりあえず朝ご飯をさっさと食べてしまおう。
そう思って自分の席に座れば、昨日から置きっぱなしにしていた椅子にリラも座った。
昨日のことを真似しているだけだろうか。それとも自分の意思で座ったのだろうか。
いつもなら直ぐ部屋に戻る筈なのに。
今日は驚くような行動ばかりするな、リラ。
そう思っていると、再び階段を降りる音が聞こえてきた。
テラだ。
「おはよう。」
「…はよ。」
「朝ご飯私も今から食べるところだけど…どうする?」
「…」
私の問いかけに黙ったままのテラにムッとしたけれど、そのすぐ直後にこちらまで歩いてきて椅子に座ったのをみて度肝を抜かれた。
今日は朝から二人に驚かされてばかりだ。
「…いただきます。」
「い、いただきます。」
無言で着席したと思ったらすぐに食べ始めた。
あんなに私と一緒に食べないようにしていたのに急にどうしたのだろう。
昨日の夜みたいによっぽどお腹がすいていたのだろうか。
それに、昨日も思ったけれど、テラがご飯を食べる前にちゃんと挨拶するのにも驚いた。
魔物にもそういう習慣があるのか。それとも人間の暮らしぶりをみていて自然に身について習慣なのか。
はてさて。
「今日は依頼受けるのか。」
「え、あぁ。テラさえ大丈夫なら行きたいなって思ってたんだけど。」
「ならさっさと食ってし支度しろ。」
「分かった。ありがとう。」
テラの謎について頭に思い浮かべていたら急に話しかけられて一瞬戸惑った。
まさかテラから聞いてくれるなんて。
でも良かった、今日も行けるみたいだ。
早く食べて支度しよう。
昨晩と同じように私たちが食べている姿を不思議そうに横で見ているリラに「今日もギルドについてきてくれる?」と声をかければすぐにうなずいてくれた。
とりあえずギルドや依頼が嫌なわけではなさそうでほっとする。
それにしても、もう3人でテーブルを囲む機会なんてないと思っていたのに、こんなに早く訪れるとは。
会話をしながら食べる朝食は新鮮で、いつもよりもご飯が美味しく感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます