第2話
第二の人生が始まってから5年が経った。
私にも一応名前があるらしく、ララと呼ばれた。
ミコという名前はもう二度と使うことはないだろう。
ちなみに今世も女だ。
見た目は前と全然違うけれど。
髪はピンクで癖っ毛。
目はくりくりして綺麗な金色だ。
母は最近まで嫌そうに、そして時に私をぶちながら、それでも何とか私を育ててくれた母だけれど、1か月ほど前に家を出ていったきり戻ってこなくなった。
まぁいつかはこうなるだろうと予想はしていた。
さて、どうしたものか。とりあえず自分で歩いたり食べたりすることはできるようになったけれど、まだ何でもできるという訳でもない。
人生を終わらせたいと思ったけれど、そうすればまたあの人に転生させられるだけの気がするので迂闊に行動することも出来ない。
とりあえずいけるところまで生活してみよう。
ご飯は多少残っているから何とかなるはず…。
でも無くなったら買い出しに行かなければいけない。家の周りまでしか出たことないからどこにお店や町があるのかさえ分からない。
家の周りは木や草がうっそうと茂った場所で、周りには他の建物が全くない。
魔物はこのあたりに出るのかも分からない。
勇者の時だったらまだしも、力のない子供の今、魔物に出会ってしまえばもう終わりだ。
小型のスライムくらいならどうにかなるかもしれないけれど。
それにこんな年の子供が一人で買い物に行ったら何かと騒ぎになる。それは面倒くさい。人とはもう関わりたくないからそんなことには何が何でもなりたくない。
ここは慎重に行動しなければ。
まぁここでグズグズしていても何も始まらないし、とりあえずお金をもって街を探して歩いてみよう。
確か財布はここら辺からとっているのを見た気が…、あれ?
「ない…?」
な、ない?
「ない…???」
どこを探しても財布がなかった。それどころかお金になりそうな装飾品なども全て。
死後の世界に行った私はもうそう簡単には驚かないと思っていたのに、こんな簡単に驚くことになってしまうとは。
この世には驚きがいっぱいらしい。
さぁ、どうしたもんか。
一先ず少し遠くまで歩いてみようと思い立ち外へ出たけれど、特に何も見つからなかったしなんなら迷子になってしまった。
辺りも暗くなってきて、もう色々面倒になったのでその場に座り込む。
今日はここで野宿でいいか。魔物が出たらその時はその時だ。潔くやられようじゃないか。
若干イラつきながらドサッとその場へ腰を下ろすと、先程迄感じていなかった疲労感がいっきに押し寄せてきた。
その時だった。
前方の草むらの方角から何か悪い気配がかすかに感じられた。
良かった。察知能力は前世のまま顕在みたい。
これは意図的に気配を消しているようだ。
サッと臨戦態勢に入る。気配からして人間じゃない。魔物か。
潔くやられようとか思ったけれど、勿論ただでやられようとは思っていない。とりあえず戦えるところまで戦ってみよう。
目線は気配のする方向に向けながらも、何か武器になりそうなものが無いか手元を探る。
コツンと手に当たったのは、私の手にギリギリ収まるくらいの石。
こんなのじゃ相手が小型スライムでない限り毛ほどのダメージも与えられないと思うけれど、重要なのは武器より戦う意志。
先程より気配が近づいてきている。これはかなりレベルの高い類の魔物だ。
さあ、どこからでもかかってこい。
身構えたのと同時に相手が姿を現す。
そこには、男が立っていた。
いや、人型をした魔物が立っていた。長い黒髪を後ろで束ね、左目には眼帯がしてある。
普通の人なら人間と疑わないだろう見た目。
けれど、私は違う。
この気配はまごうことなき魔物のもの。
しかもハイレベルの。
こんな石ころじゃどうしたって勝てない。
けれど。
「とりゃぁぁぁぁぁ!!!」
私は叫びながら目の前の相手を殴りにかかる。
が。案の定歯が立たず、顔を大きな手で鷲頭噛まれた。
終わった。このまま握りつぶされて死ぬ。
でも最後まで頑張ったし、悔いはない。
そうして来る衝撃に備えるが、その衝撃は来なかった。
それどころか手を離された。
ただ離すのではなく、突き放すような放し方ではあったけれど。
「なんだクソガキ。邪魔だ。どけ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます