第81話 自己紹介と特注王都魔法学校指定カバン
入学式は特に滞りなく終了した。校長先生の話や来賓の方が挨拶をしていった。
新入生はこの後、自分のクラスまで行ってホームルームをして終了みたいだ。
真紅の髪色をした20代後半の女性が僕たち赤のAクラスの担任のようだ。その女性が先導して教室に向かう。
従者は隣の従者待機室にて待つ事になる。ミカはそちらに入っていった。この後、ミカは従者の注意点を職員から説明されるそうだ。
席は指定されていた。
Aクラスは21人の生徒である。机は横に5列で並んでいた。当然縦の机の数は1列だけ5個になる。その1番後ろの席は通称ボッチ席となる。
僕の指定されていた席はボッチ席だった。
窓際の1番後ろの席だね。後ろの席って実は人気があるよね。
僕の前の席はシズカだった。
ここでも成績順のようだ。僕の隣りと後ろには誰もいない。前にはシズカ。
これは誰の陰謀かと頭を抱えた。席に座ったシズカが後ろを向いて僕に微笑んだ。
皆んなが席に座った。1番後ろから見ると皆んな赤髪で目がチカチカする。ここにも誰かの陰謀があるのか?
教壇に先程僕達を先導した赤髪の女性が立った。生徒を見渡して通る声で話し始める。
「私はシベリー・ファイアードだ。今年1年間この赤のAクラスの担任になる。またこの王都魔法学校は毎年クラス変えがある。成績順となっている。今年はAクラスだが、気を抜くとすぐにBクラスに落ちるぞ。しっかりと勉強に励むように。今日はこの後自己紹介をしてもらう。それで今日は終了だ。それでは入試の成績順で始める。入り口の1番前のお前からだ」
いきなり指名された女の子は、焦って立ち上がり自己紹介を始めた。
知ってる顔は半数くらいかな。僕は貴族間での交流が殆どなかったからだね。皆んなは小さい時から顔見知りだろう。自己紹介の意味があるのかな?
皆んなの自己紹介をボケっとしながら聞いていた。
シズカの番になった。シズカは席を立ち上がる。
「シズカ・ファイアードです。ボムズ出身です。得意な魔法はファイアーランスです。身体を動かすのが得意なのでダンジョン探索をやってみたいと思っています。どうぞよろしくお願いします」
僕はダンジョン探索の言葉にピクっとなった。巻き込まれないようにしよう。
僕の番になったので立ち上がる。皆んなの視線を感じる。
「僕の名前はアキ・ファイアールです。皆様と同じボムズ出身です。得意な魔法はありません。僕は蒼炎の魔法しか使えないからです。好きな食べ物はケーキ。愛読書は【白狼伝説】です。毎日の日課はお風呂上がりにフルーツジュースを一気飲みする事です。どうぞよろしくお願いします」
クラスから少し笑い声が上がって僕の自己紹介は終わった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ホームルームが終わった。シズカに捕まる前に帰ろう。廊下に出ると従者の注意点の説明が終わっていたようでミカが既に待っていた。
ミカは僕に近寄って耳打ちしてきた。
「アキくんの自己紹介を聞いていましたよ。やや受けでしたね。すべるより良いですが爆笑が取れるように頑張ってくださいね」
「あんな場でやや受けするだけで大したもんだと思うんだけど」
そう僕は言ってミカと帰宅した。
帰宅後、ミカが「明日の時間割りに合わせて準備をしておきましょう」と言った。
僕が「そんなのあとからやるよ」と返したら、ミカは真面目な顔で「主人にしっかり注意する。帰宅後すぐに明日の用意をさせる。それが従者の役割りです」とにべもない。
大人しく自室で明日の用意を始めた。
王都魔法学校の授業は、毎日行われる魔法実技の授業と座学に分けられる。1、3、5回生が午前中に魔法実技、午後に座学となる。2、4、6回生はその逆となる。
日程は6日サイクルで回る。5日間登校して1日休み。このサイクル1つで1週間という。
ただ僕は生まれてからこの1週間のサイクルを意識したことがなかった。1人で気が向くままに過ごしていたので1週間のサイクルは必要としてなかった。
1週間は【無の日】、【青の日】、【緑の日】、【赤の日】、【黒の日】、【白の日】の6日である。曜日は古代からあるそうで、属性の色で曜日を決められたと言う説が1番有力な学説である。
ただ【無の日】はなんだか分かっていない。
【白の日】があるんだから白の属性があるのでは無いかと言われているが、実際に髪色が白の人はいない。
王都魔法学校、1回生の週の時間割りは次のとおりである。
【無の日】休み
【青の日】(魔法実技)(魔法体系概論)
【緑の日】(魔法実技)(魔法史)
【赤の日】(魔法実技)(リンカイ王国歴史)
【黒の日】(魔法実技)(呪文解析概論)
【白の日】(魔法実技)(魔法実践集)
明日は4月9日の【緑の日】。魔法実技と魔法史の授業だ。
魔法実技ではヴィア主任から、【魔法文言集】を全属性と【魔法体系概論】と【呪文解析概論】の教科書を持ってくるように言われている。
午後の座学で必要な【魔法史】の教科書。分厚い教科書が全部で7冊。これに筆記用具。
僕は明日の教材の量と重さを見てこれは凄いなと思った。
これだけの量を15歳の子供に手で提げるタイプのカバンで持ち歩かせるなら、それはもう虐待だ。
お昼は学校の食堂で食べる予定だからお弁当はいらない。でも相当な荷物になる。
僕は息を整える。そして
「パンパカパーン!!王都魔法学校指定カバン改造バージョン!!」
これは特注品だ。王都魔法学校には指定カバンがある。背負ったり肩にかけるタイプでは無く、手で持ち運ばないとダメなカバンである。
マジックバッグはダンジョンの宝箱から稀に出る魔道具である。
まさかマジックバッグの形が、そのまま王都魔法学校の指定カバンであるはずがない。
それでは学校でマジックバッグが使えないではないかとなるが、改造は簡単だった。
指定カバンの中にマジックバッグを入れれば良いのだ。指定カバンにちょうど良く入るマジックバッグを探すのが大変だった。
なんとか見つかったが、通常の価格より高めで買わされた。あとはカバン屋さんに頼んで指定カバンの中にマジックバッグを縫い付けてもらった。
調整に少し手間取ったみたいだが問題なく成功している。3,000万バルかかったが後悔はしていない。
容量は100立方メトルで以前アクロ冒険者ギルドでもらったマジックバッグと同じだった。
僕は嬉々として大量の教材を王都魔法学校指定カバン改造バージョンに入れた。
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