王都センタール編

第62話 王都の冒険者ギルド

 リンカイ王国首都センタール。東西南北に10キロルはある城壁に囲まれている。それでも人が住む土地が足りず城壁の外にドンドン街が広がっていく。


 センタールから真っ直ぐ北に行けば北の中央都市コンゴに着く。東は東の中央都市アクロ、西は西の中央都市カッター、南は南の中央都市ボムズに至る。

 測量した人によればこれはキッチリ東西南北に真っ直ぐとの事。古代の人が意図してやったのかは今は分かっていない。


 このような地理的な環境のため、センタールはリンカイ王国の経済の中心である。富や美食が全国から集まり、芸術や学術の中心だ。


 王城は城壁で囲まれた部分のど真ん中に位置し、小高い丘の上に建てられている。


 城壁の西側は学術や芸術関係の建物が多い。

 王都魔法学校と王都魔法研究所もこの地域にある。

 南側の地域は商店関係の店が多い。

 東は住宅街になっている。

 北側は政治関係の建物が多く貴族もこの辺りに住む人が多い。王都の冒険者ギルドはここにある。


 僕たちは2月25日のお昼の少し前にセンタールに着いた。ボムズから来たため城壁の南門から街に入る。そのまま街を突っ切り冒険者ギルドの建物の前で降りた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 王都の冒険者ギルドだけあって立派な建物だ。白系統の煉瓦作りで3階と地下1階建てとのこと。中に入ると人で混雑していた。

 王都の冒険者ギルドは飲食店が中にあり、食事やお酒を提供している。ちょうどお昼ご飯の時間に当たってしまったようだ。


 受付に僕とミカの黄金製のギルドカードを見せ、ギルド長に面会を求める。現在、ギルド長は所用で外に出ており、半刻ほど後にもう一度来る事になった。ちょうど良いので冒険者ギルドの中でお昼ご飯を食べる事にしよう。


 空いている席があったためそこに座り店員から注文を取ろうとしたら、30歳くらいの女性の店員から眉を顰められる。

 なんだろうと思っているとその女性の店員が口を開いた。


「坊や、あんた田舎モンだろ。王都の冒険者ギルドに見学にでも来たのかい?」


「まぁ田舎モンと言えばそうだね。見学じゃないですよ。これでも冒険者登録していますから」


 店員は不機嫌そうな顔のまま会話を続ける。


「冒険者なら遠慮はしなくて良いね。良いか坊や。ここの席は白銀以上のギルドカード専用なんだよ。分かったらどきな!」


「そんなのどこにも書いてないですよ」


「書いて無くともここの流儀なんだよ。悪い事言わないから絡まれる前にどけたほうが身の為だよ」


 僕は1つため息をついた。


「こんな混んでいる時に空いてる席を使うことがそんなに悪いことなんですか? 非効率じゃないですか」


「うるさいガキだね。さっさと退ければ良いんだよ」


 しょうがないなぁと思い会話を続ける。


「確かに僕たちは白銀のギルドカードではありません」


「当たり前だろ!」


「だけど黄金なんですよ」


 そう言って僕とミカは自分達のギルドカードを見せる。周りでこちらを伺っていた人達がどよめいた。

 唖然としている女性店員に宣言する。


「僕は非効率なそちらの流儀には従うつもりはありません。先程あなたはこちらの流儀に従えと僕に言いました。その言葉をそのまま返しましょう。これから僕の流儀に従いなさい。わかりましたか? それではお腹が空いているので早く注文を取ってください」


 慌てて僕たちの注文を取る女性店員。

 王都って何だか嫌だなって思っていると外から大声で3人の男性がギルドに入ってきた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 その男性3人は真っ直ぐ僕らの席に向かってきた。


 先頭を歩いていた髭面の中年男性がニヤニヤしながら僕に話しかける。冒険者のようだ。


「なんでここにガキが座っているんだ。俺たちは疲れているんだ! 早くどけ!」


 酒臭い。酔っ払ってるのか?

 王都って本当にイヤだなぁ。


「何故、先に来た僕たちが席を譲らないといけないのですか。意味がわかりません。お断りします」


 髭面の男性がニヤついた顔を怒り顔で怒鳴る。


「うるせぇ! ガキは大人の言う事を聞いておけば良いんだ! うん? なんだお前綺麗な奴隷連れているじゃないか? この奴隷は俺が貰っといてやる! お前だけ早く消えろ!」


 僕たちの剣呑な雰囲気に周りの人達が席を立っていなくなる。先程の店員とのやり取りで僕達がBランク冒険者と理解しているからだろう。


 3人の男達は混雑していた周りの席の人が潮が引いていくようにいなくなったことに不思議な顔をしている。


「王都の冒険者ギルドはどうやら腐っているみたいですね。こんな冒険者ギルドなら一度壊しても良いかもしれませんね。もう我慢しなくて良いですよ。ミカ、お願いします」


 僕がそう言うとミカはおもむろに立ち上がり、男達の腹に拳をメリ込ませていった。

 3人共腹を押さえてうずくまる。


 僕は大きな声で冒険者ギルドの受付の職員を呼んだ。

 駆けつけてきた職員に僕は冷たい声で言った。


「この3人の男性はどうやら冒険者ギルドの害虫のようです。僕たちが身体に言い聞かせておきましたから、早く外に放り出してください。本当はこういう害虫駆除はあなた方の仕事ですよ」


 慌てて僕の提案通り蹲っている3人の男性を外に連れ出す。

 これが王都の1日目か。これから大変かな。

 少し待つと慌てた感じで先程の女性店員が注文の品を持ってきた。指先を見ると少し震えている。

 僕たちは気にせずお昼ご飯を食べた。

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