第8話
約二時間、音沙汰もなく、ひたすらさっきの男性と一緒に撤去作業をしていた。
蓮は汗もかかずに淡々と片付けていた。
相変わらずの身のこなしだった。
男性も最初は怪訝な表情だったが、二時間も汗を流せば仲良くなっていて、少ないはずの物資からジュースを分けてくれた。
男性はなぜかお茶だった。見たことの無い銘柄で、茶葉の良い香りが春風に乗って鼻孔をくすぐる。
公平は、薪ストーブの鉄板を見つけて、それを自分の鞄へ拝借した。
蓮は、首を傾げるもまた作業に戻った。
汗は夏場のようにかく。ハンカチが汗を含んでもう吸わなくなった。
影が伸びる。
「なに呑気にジュースなんか飲んでるのよ」
瓦礫の少し山になってるコンクリートの塊の上に
驚いてジュースを少しこぼしてしまう。
「そんなに叫ばなくても」
「口答えする気? 偉くなったもんねあんた」
見ると、二人は作業していた公平と蓮より服が乱れ汚れていた。
「蓮さん、何か飲み物ありますか?」
蚊の鳴くような声で巽は膝から崩れた。
脱兎の如く駆けた蓮は、いつ貰ったのかもう一つジュースを飲ませてあげていた。
私もよ、気位の高い巴までも地面にお尻をつけて座り込んだ。
「何があったんです?」
「見つけたのよストーカーを」
その一言に緊張が走る。
しかし、霊体の女子高生ではなくストーカーを見つけたとはいったい。
「全壊してるエリアまで匂いを追ったわ。犯人のやつ、人が住んでない所に勝手に住み込んでいたみたい。多分、救援物資を盗んで食いつないでたのね。でもその子の匂いはあっても、霊体は見つけられなかった」
公平は「成仏したんでしょうか?」と尋ねた。
「いや、霊体になってまで拉致監禁された霊が勝手にあの世へ逝くとは思えないよ公平」と蓮が答えた。
「で、巴っち。逃したの?」
「クッ、仕方ないじゃない
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