魔剣士が刀に出会ったら

第23話 魔剣士が強敵と対峙したら

　「よし、あとはこれで……」

　「カアアアア！！！！」

　ヴァルグニルの合成獣（キメラ）は一撃で沈められた味方に対し怒っているのか既に事切れている死体に向けて盛大な叫び声を上げた。

　「ふん、味方に対して情は無いのかよ」

　「カアアアア！！！！」

　「……やはり魔物は魔物か。そんなのどうでもよさそうだな」

　そして合成獣（キメラ）であるが故に、こいつは生物としての枠を外れている。感情とかそういうのはもうほとんどないんだろうな。

　それに、こいつはこのダンジョンの中では上位に位置しているという自覚を持っている。故に使えない仲間に怒っているんだろう。いや、仲間ではなく、奴隷か。

　その怒っているという表現も正確ではないんだろう。

　「ふぅ……」

　そんな思考も、今は邪魔だ。

　「はあっ！」

　「カアア、カアア！！」

　俺はすぐに終わらせるために奴の首を狙うも、突如出てきた竜巻によって阻まれる……がこれは想定済みだ。

　「真空斬！」

　今まで以上の速度で刀を振るう。そして竜巻を真っ二つ斬った。

　真空の刃は竜巻を斬った後そのまま奴の胴を傷つけようと進むも、それは奴の振るった爪によって弾かれてしまった。やはりヴァルグニルの爪も相当に硬いのだろう。ドラゴンと合体しているからもあるだろうが。

　そして、奴はそれに絶対の自信を置いているのだろう。

　「──取った」

　「ッ！？」

　だからこうも簡単に裏が取れてしまう。

　傲慢で油断している魔物ほど後ろを取りやすい。しかし、傲慢になってしまうほどの力を持っているが故に、俺が刀を振るっても即座に防がれてしまう。

　「……」

　「カアァァァ……！」

　鍔迫り合い。

　人が出せる力と魔物が出せる力には大きな差が生じる。だから普通は鍔迫り合いなんて出来る訳がないのだが……。

　「っ、はは……！」

　「カァッ！？」

　思わず笑みがこぼれてしまう。なんでか、俺は今、こんな化け物と力比べが出来ている。身体強化は使っていない。あれからずっと調子が悪いから、使えば逆に弱くなってしまうからだ。

　と言うか、この身体強化の調子の悪さは思えば衝動が起きたあの時からずっと起きていた気がする。

　衝動を抑えてからずっと身体強化を使うたびに違和感がぬぐえなかったのだ。

　「これからは身体強化なんて使わないでもいいかもな」

　「ガアアアア！！！」

　「おっと」

　更に力を込めてきたので俺はかかってきた力を受け流す形で刀を少しだけ傾ける。するとそれに引っかかっていた爪はスッと刃を滑り空を切った。

　俺はそのまま奴の腕を斬ろうとするも既に腕はそこにはなく、というか、奴がここから離れていた。

　「逃げるのか」

　「ッ！？」

　俺が挑発するように薄ら笑いを浮かべると、奴は分かりやすく顔を歪ませた。

　「ガアアアア！！！」

　そしていくつもの巨大な竜巻を発生させた。単調な動きだ。魔物だからかさっきまでもそうだったが、それがより強くなった感じだ。

　力でごり押ししようとしてくる。

　「脳筋的思考だなぁ……」

　数と勢いは凄まじいが、所詮それだけだ。動きは分かりやすいから簡単に避けられる。まぁ、避けることに専念しないといけないのだが。

　中々攻撃に転じることができないでいた。

　ならば……！

　「真空斬！」

　俺は避けつついたるところに真空斬を放つ。合成獣（キメラ）は俺がし始めたことに対し気が狂ったとでも思ったのか、俺がさっきしたように俺に向かって馬鹿にするような笑みを浮かべた。

　しかしその笑みはすぐに消えることになる。

　「ッ！？」

　真空斬が合成獣（キメラ）の頭上にあるダンジョンの天井に当たった瞬間、今まで無闇矢鱈に放っていた真空斬の跡に加え今放った真空斬によって丁度綺麗に天井の一部分が切り取られ、合成獣（キメラ）に堕ちた。

　「ガアアアア！？！？！？」

　慌てて合成獣（キメラ）がその場から離れようとするも、

　「暴圧斬！」

　「ガアア！？」

　斬撃の壁を作りその通路を阻んだ。そして奴が足踏みしている間にその岩の塊が頭上に迫る。

　「ガアア！！」

　ドゴォ！

　慌てて奴はその爪で岩の塊をなんとか破壊した。それと同時に爪が根元から折れた。これで奴の自慢の一つを崩すことができた。

　「ガアアァァ……」

　俺を睨むその顔は俺からしたら滑稽そのものだった。さっきまでさんざん余裕ぶっていたというのに、爪が破壊されるだけでこの様とは……なんだか今まで警戒して戦っていたのが馬鹿みたいだ。

　よし、このまま決着を──

　ブオン……！

　「……は？」

　その時、俺と対峙していた合成獣（キメラ）の姿が一瞬で消えた。

　なんでという疑問を抱く前にギリギリ見えた合成獣（キメラ）の飛んだ先の方を見て、その答えがあった。

　「ジュシュア……？」

　『ぐっ……やはりきついものがある、か……』

　《脆い》

　倒れるジュシュアがなんとか立ち上がろうとするが、うまく立ち上がることができないでいた。

　そして、その見たことのないジュシュアの姿に呆然としている俺の目の前に──

　《後はこの雑魚を処分するだけか》

　悪夢がやってきた。

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　遂に……遂に……ストックが切れました。

　デュエマと課題に追われているので明日以降は不定期更新となります！