第19話「定期円卓会議」
このホライズンで行われる自由参加な会議、『円卓会議』にいつものメンツが集まっていた。議題はギルドの住宅税を増税するという話が出ていることについてだ。むさい顔をしたファラデーは不満を隠せない様子で憤っている。ヴィルトは経理らしく財務処理が増えることにうんざりしているのを各層ともしない顔をしている。
しかし戦闘キャラ組のマクスウェルとフィールズ、メアリーはあまり興味が無いようだ。
「質問なのですが、増税されたらそれだけモンスターを狩って収入を増やせばいいのではないですか?」
メアリーの意見にマクスウェルは理論的に責め立てる。
「皆がそう考えたら狩り場が混雑するでしょう? やっぱりどこかにしわ寄せが来るのよ」
しかし俺の意見は少し違う。
「これはゲーム内通貨を現金で買えって圧力じゃないか? 運営が続けて行くには必要だって事だろ」
しかしマクスウェルは納得がいっていない様子で文句を言う。
「月額課金はなんなんだっていう話よ、ガチャやアイテム課金にしたいなら基本無料にしろって私は言いたいのよ」
その意見には一理ある。確かにサーバの維持管理に必要なお金が足りないなら素直に月額料金を上げて対処すべきであって、ガチャやアイテムに課金するのは金目当てで取りやすいところから取っていると言われてもしょうがないことだ。
「しかし運営に文句を言ってもしょうがないでしょう? だって今はライバルになるのはガチャ課金しているゲームばかりですよ? 向こうがえげつない集金システムを入れてるのにこっちが入れないと向こうに可処分所得が取られるばかりじゃない?」
フォーレはそう言ってP2Wのシステムをしょうがないものとして擁護する。それには一理あるのだが、理解できることと納得できることはまったく別問題だ。はっきり言えば感情の問題でありただ単に気に食わないというだけの話だ。それだけの感情問題なのだが、人間は感情の生き物であり、それを無視することは決して出来ない。たとえ福袋が在庫処分だと理論で分かっていても『お得かも』という感情に逆らえないようなものだ。
「まあ一理あるわね、そもそもガチャに頼りすぎなのよ。スマホのネトゲからVRになってもそればかりは変わりゃあしない。理屈じゃなく気に食わないって話よ」
俺が机をコンと叩いて本題に入る。
「さて、集まってもらったのはこのギルドの納品ノルマを増やすかどうかについてだ。もちろん増加分は今回の増税に充てることになる」
「まあギルマスの一任に任せるけどね。あなた結構甘いでしょう? 幽霊メンバーにまでノルマを充てても大して増えないわよ?」
「それでもアクティブメンバーだけでもそれなりに増やせると思う。問題はその金額にすると結構ノルマが増えることなんだが……」
メアリーがそこで挙手をした。
「そ……それはしょうがないと思います! 運営が増税するっていってるんだから私たちに選択肢は無いのではないですか」
それでもマクスウェルは気に食わないようだ。
「ロクにプレイしてない連中を助けてやるのは気に食わないのよね……私達ばかりががんばってないかしら?」
「でもマクスちゃん、恩恵を受けるのも私たちだけじゃないですか? 幽霊メンバーは増税しようがハウスに寄らない以上メリットもデメリットも無いんじゃないですか?」
フォーレのその意見にマクスウェルは口をつぐんだ。確かにギルドに名前だけ登録しているものは多いが、俺はそいつらを排除しようとは思わない。そいつらはギルドに恩恵をもたらさないが害ももたらさない、無害なら排除することはないというのが俺の主義だ。
「しょうがないわね……ノルマが五パーセント増ってところね……不可能ではないけれど厳しいところではあるわね。次の納税が辛くなるばかりよ」
「私も意義はないです。運営が潰れたらどうしようもないですし、しょうがないことなのだと思います」
「俺も気にくわねえがどうしようもないことだと思うぜ、運営が甘ったれてるのは確かだが厳しくして潰れたら元も子もないからな」
こうしてこの円卓は意見がひとまず一致した。そして後日納税を行ったのだが、その時に支払えないギルドが大量に増えて一ギルドあたりの納税金は増えたがハウジングしているギルドが減ったので結果的にマイナスしかなかった。そのため増税されたのはその一回きりで、即座に減税が行われ不興を買ったりしたのだった。
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